立夏の恋模様2_時雨

次の日の午後。言い合いがまとまらず結局男子が執事姿で女子がメイド姿で接客することになった。シフト制で男女が平等に入るようにし、料理はできる人がやる形で何とかきれいに(と言えるのかわからないが)まとまった。
そのあとは作る料理を考えるグループ、衣装を作るグループなどに分かれてそれぞれ話し合い、準備期間があっという間に過ぎ去った。
「ついに明日学際だね…」
「ここまでなんだかんだ言ってあっという間だったねぇ…」
「あとは本番を全力で楽しむだけね!」
室内の装飾、メニュー表や看板。必要な食材をそろえ準備万端である。ここまでくるのにいろいろあったものの、やはり達成感というものはある。
「よし、明日に備えてもう帰るか!」
「そうだね~」
こうして最終チェックを終えた生徒は教室の鍵を閉めて学校を出た。



「いらっしゃいませ~!喫茶店やってます~!」
「休憩がてら寄っていきませんか~?」
「メイドと執事が出迎えてくれますよ~」
学際当日。生徒はもちろん他校の生徒や生徒の親御さんも来ていて学内は人でわんさか賑わっている。
「し、重くん……やっぱかっこいい…」
「っ!?そ、そんなこと言ったら優希だって…」
「~~~~~っ」
「けっ、リア充め。滅べばいいの」
喫茶店として借りている調理室内では、接客をする人、料理する人、そしてリア充に分かれていた。だがまあこのリア充のイチャつく光景は見慣れているので大半の人はスルーである。
「〇番テーブルにオムライス持ってって~!」
「そこ!イチャついてる暇あったら接客して!」
「ぅえっ!?い、イチャついてなんか…」
優希は顔を赤くして否定し、重は頬を少し赤らめてまんざらでもない顔で斜め上を見ている。
「あの~…席空いてますか?」
優希たちがクラスの代表の子と話していると一人、中学生くらいの女の子がドア付近にいた重に声をかけた。
「ん、空いてま――ってちなつ!?」
「えへへ~来ちゃった」
ガバッと重に抱き着くちなつと呼ばれた謎の少女に室内がざわつく。
「お、お前…隠し子か……!?」
「まさかもう優希ちゃんと……!?」
「な、なわけないだろっ!姪っ子だよ!」
重の言葉にざわついていた室内も落ち着きを取り戻した。そのまま重は姪っ子をあいている席に案内し、人もそこまで多くないということで付きっきりでちなつの世話をすることになった。
「…でね、みっちゃんがこの間~」
「はいオムライスお待たせ~」
「サンキュ」
重は奥の席でずっとちなつと話をしていると料理班がオムライスを持ってきてくれた。卵の上にはケチャップで猫のイラストが描かれている。二人分のスプーンとオレンジジュースも一緒に持ってきてくれて、ゆっくり~と言い残して戻っていった。
「………」
「あ~あ、優希、ヤキモチ焼いてるよ」
「し、仕方ないだろっ!?」
「ん?お姉ちゃんはシゲくんのこと好きなの?」
「なっ!ち、違うわよ!そんな、すき、なんて……」
あ~はいはい、とあきれた感じでクラスメイトは接客へと戻っていった。その間もちなつは頭にはてなを浮かべており、重と優希は終始赤面して気まずい空気が流れていた。



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