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【技術史】電子で刻む正確なクオーツ腕時計

1969年のクリスマス、世界で初めてクォーツ腕時計「クォーツアストロン35SQ」がセイコーから発売されました。それまで正確さを競っていた機械式の時計づくりの世界では、1日の狂いが数秒以上もありましたが、電池で動かす水晶(クォーツ)振動子を利用することにより1ヶ月で5秒以内の精度を保証できるようになりました。
 
水晶(クォーツ)振動子は正確な時を刻むための心臓部ともいえる「発振機構」を担う部品です。1927年にはアメリカのウォーレン・A・マリソンらが水晶振動子を利用したクォーツ時計を開発しました。電子回路は真空管を用いていたため、大型ロッカーほどの大きさで消費電力も100W以上の大きな物でした。
 
戦後、セイコーは電子時計の開発に積極的に取り組んでいました。世界初の重量3kg、消費電力1mWのポータブルクォーツ時計を開発し、1964年の東京オリンピックで競技用公式時計として採用されました。しかし腕に装着するには、さらに数10分の1に小型軽量化し100分の1の消費電力で動かし、衝撃にも強くする必要がありました。
 


それを実現した技術の1つが、セイコーが独自開発した音叉型水晶振動子です。衝撃にも耐えられるよう真空のケースに収納し、小型電池で電圧をかけると1秒間に8192回振動します。この振動を時間に置き換えるのです。

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