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空地

短くてオチも無いお話。

Yさんの妹さんは現在夫婦2人でマンション住まいなのだが、仕事も収入も安定したのでこの際新居を構える決心をしたそうだ。

折角だから職場に近いトコロが良いと、その地区に住む知り合いにお願いして良さそうな土地を何件か紹介して貰っている。

紹介して貰った土地はいづれも好条件で、中には多少田舎で古いが立派なお屋敷と広い庭、更に裏の畑付きといったモノまであったという。

地権者も空き家や敷地の整備が大変だから早く処分したいと、知り合い価格である事を差っ引いてもかなりのお値打ち品となっているらしい。
因みに瑕疵物件ではない。
だからお値段を聞いた時は流石に私もびっくりした。

そんな訳で妹さん夫婦は多忙の合間を縫うように土地や物件を見廻っているのだが、偶に妹さん1人だけの時にはYさんが駆り出されて、何件かの内見をお手伝いする事になったという。

その中の一ヵ所へ行った時のお話。

その日は祭日だったので、Yさんはお子さん連れで妹さんと合流し、紹介された現場へと向かったそうだ。

そこは田んぼに囲まれた空き地で、現在は営業を止めた老舗の産廃業者の土地だという。
特に広くはないが、今風の家を一軒建てるには十分な広さの敷地に大小の石が積み上げられており、つまり石置き場になっていたのだ。
購入の際には当然撤去される事になっている。
舗装道路を1本挟んだ向かいにはプレハブの事務所が立っていたという。

空いている場所に駐車してYさん一行は車を降りた。
周囲をぐるっと確認しようと歩き出した途端、Yさんのお子さんが足を止めた。行こうと促すが首を振る。

「ボクはこれ以上近づけない」
「石の上に五体の揃ってない兵隊さんが沢山いる」
Yさんは妹さんと顔を見合わせ、程なくしてその場から立ち去ったという。

その集落の先には戦没者慰霊碑の在るお寺があるという。
そして何処から持ってきたのかも分からない大小の積み石と廃業した老舗の産廃業者。
キーワードはこれだけである。
結局因果関係は分からず仕舞いなのだが、何となく想像できなくもない。

勿論そこは早々にリストから外されたそうだ。

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