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手羽先Jazz研究ノート ~Blues for Philly Joe~

僕はビ・バップ好きのアルトサックス吹きなんですが、ジャズはセカンダリー・ドミナントまで理解したところで、あとはコピーを沢山して気に入ったフレーズを12キーで覚えまくれば出来る様になるだろうと思っていました。で、何十曲も耳コピしてフレーズの12キー練習も何十個もしたんだけど、なんかイマイチ上達できず、マイナーの曲や変則的なコード進行の曲、バラードやスローブルースもずっと苦手なままで、やがて生活に追われ練習が出来なくなって10年ぐらいなんもしてなかったんですよ。それが去年ぐらいから漸く週に4時間ぐらいは練習時間も捻出出来る様になりまたサックスを吹き始めたのですが、昔と同じやり方では意味がない、もうチョット真面目に理論も勉強しようと思った次第です。
そんな僕の備忘も兼ねた勉強成果を少しずつ書いていきたいと思います。まだまだ勉強中ですので瑕疵がありましたらお知らせ頂ければ幸いです。

さて、そんなののまず1回目はソニー・ロリンズのブルース「Blues for Philly Joe」でございます。

こちらは前になんかで紹介した気もしますが、1957年の大傑作アルバム「Newk’s Time」収録のFブルースで、ピアノはウィントン・ケリー。このアルバム、もう全曲文句なしの素晴らしさなんで皆さんホントおすすめです。

「Blues for Philly Joe」は一つのモチーフの変奏が軸になっていて、テーマも有るにはあるけど然程カッチリ決めずにこんな感じでオリャーな曲です。スゲー自由でハッピー。バップってコードに縛られてるとか言う人がいますが上手い人がやればメチャメチャ自由なんですよ。ホント素晴らしい。で、じゃあテキトーやってるのかっつうと全くそんな事はなく、頭からケツまで全て理にかなっていて、汎用性の有る美味しいフレーズも満載なんで、気に入った方は是非一曲マルっとコピーしてパクっちゃうと良いと思います。

今回ネタにしますのはこちらの8コーラス目になります。

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このコーラスの7小節目から始まる16分音符フレーズを分析しつつ、練習方法を考えてみたいと思います。

まずはこちらから。

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この2小節は大きく捉えればAm7-D7のII-Vフレーズと解釈出来るぽいです。そんな気がします。

さて、コレの1小節目から1拍ずつ。

え〜、まず1拍目の裏裏にかましてあるA♭は2拍目頭のAをターゲット・ノートにしたクロマチック・アプローチ(*1)におけるアプローチ・ノートですね。半音下からAに行ってます。

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2拍目A-C-D-EはコードF6における3-5-6-7ですね。ココはロリンズ的にはF7ではなくF6なんだってコトだと思われます。

3拍目はF6の1度のFに行きそうに見せかけてGに行ってますね。4拍目頭にかけてG-G♭-F-D-B♭-Gの6音でコレはGm7における1-1♭-7-5-3♭-1です。2つ目の音G♭は7thの音Fをターゲット・ノートにしたクロマチック・アプローチのアプローチ・ノートですね。半音上からFに行ってます。フレーズのコード感に影響しない経過音なので、ここのラインはGm7のルートから下降するアルペジオ(G-F-D-B♭-G)という事になります。2音目に経過音を入れた理由は「偶数番目の音よりサウンドに対する影響力の強い奇数番目の音にコードトーン(7thの音:F)を配置する為」と思われます。ビバップ・スケールの発想と同じですね。

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(*1)クロマチック・アプローチ
コレ、僕は最近まで全然解ってなくて、理解した途端に色んな謎が解けた結構重要概念なんで、ご存知無い方は是非お付き合いください。
先程、2カ所の部分でクロマチック・アプローチに言及しましたが、ご覧頂いた様にコレは目的の音(ターゲット・ノート:基本的にコードトーン)に半音下もしくは半音上から行くコトです。全音離れた所から半音を2つ重ねて行く事もあります(Gm7部分のG-G♭-F)。

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長3度インターバルを4音で行くのも良く見ますね。その場合大体のケースで下りのラインになると思います。多分。
ターゲット・ノートに向かう音をアプローチ・ノートと言います。
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4拍目後半の2音、E-Dは次小節のAm7のサウンドを先取りした感じですね。次小節頭にかけてE-D-Cとなって奇数番目の音がAm7の5-3♭です。

では2小節目に行きます。

1拍目の4音C-B-B♭-G♯ですが、2拍目頭のAに行くためのクロマチック・アプローチのローテーション(*2)になっています。

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2拍目A-C-G-Fの初めの2音A-CはAm7のコードトーン、後半の2音G-Fは3拍目頭のF♯に行く為のローテーションですね。

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(*2)ローテーション
上記のクロマチック・アプローチのバリエーションで2〜4音でターゲット・ノートを挟むパターンがあって、コレをローテーションと言うらしいです。2音で挟むパターンは下記4種類。

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2拍目のG-Fは上記4種類の2番目のパターンですね。低音側、高音側共ターゲット・ノートに対して半音のインターバルになってます。
アプローチ・ノートの低音側の音は常にターゲットの半音下ですが高音側ののターゲットに対するインターバルが半音か全音かは、ターゲットの一個上のダイアトニック・スケールの音(ターゲットがミだったらファの音)が半音上か全音上かで決まるコトが多い気がします(少なくともダイアトニック・スケール一個上の音が半音上なのに全音のインターバルのローテーションをする事は少ないと思われる)。
3〜4音からなるローテーションは下記になります。

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3音からなる4種類と4音の2種類です。1拍目のC-B-B♭-G♯は④のパターンですね。
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3拍目F♯-A-C-DはD7の3度からのアルペジオで3-5-7-1ですね。

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4拍目はDのコンディミぽいですね。E♭-D-C-Bで9♭-1-7-6♯ですが、1音目のE♭はルートの半音上というエグいサウンドで、こういうの♭9thと言います。ドミナント 7thコードで多用されます。後半の2音は次の音B♭へのクロマチック・アプローチになってますね。

以上前半2小節でした。では後半です。

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3小節目1拍目はB♭-D-E-F♯で、最初の2音はGm7の3♭-5ですが、最初の一音目(B♭)でGm7に行ってから2音目のDでまたD7に戻った感じになってますね。Gm7の3♭-5-6-7なんだけど7度がシャープして、2音目からD-E-F♯-A-F♯はD7の1-2-3-5-3になっている感じがします。Gm7に行ってからまたGm7に対するドミナント7th(D7)のサウンドを吹いているわけで、ディレイド・リゾルブってヤツと思われます。こういうふうにフレーズの中にその小節の前後の小節のサウンドを入れるの、ホント良くあります。

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2拍目はA-F♯-G-Aですが最初の2音はまだD7のサウンド(5-3)で3音目のGをターゲット・ノートにしたローテーションになっています。

2拍目後半から3拍目はG-A-B♭-C-D-F-AとなっていてD までは奇数番目の音G-B♭-DがGm7の1-3♭-5、3連符残りF-Aが7-9でココから完全にGm7(G-B♭-D-F-A)のサウンドになります。

4拍目ですが、もう次の小節のコードを先取りしてますね。4小節目2拍目に跨る11音でCのビバップ・スケール(*3)を吹いてます。奇数番目の音がC-B♭-G-E-C-B♭で完全にC7ですね。

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(*3)ビバップ・スケール
コレも僕、最近知ったんですが、気がつけばパーカーもスティットもマクリーンもめっちゃ多用してて、ホントもう、もっと早く教えてくれよ!

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要はドミナント7thコードで使いやすい様に改良した5度から始まるメジャースケール(マイナーはハーモニック・マイナースケール)です。奇数番目の音がドミナント7th(ココではG7)のコードトーンになります。ほとんどアルペジオの一種ですね。マイナーのはメジャーキーでも使えるぽい(マクリーンはやってる)。
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4小節目2拍目最後の音がF♯ですが3拍目最初の音Aとで2音目のGを挟むローテーションになっています。コレ面白くて、F♯を挟んでCのビバップ・スケールが続いている様にも見えますね。

3拍目後半のE♭-Fも4小節目頭のEをターゲットにするローテーションなんだけど、F♯とE♭を挟んでビバップ・スケールが4拍目頭まで続いているという解釈も出来ると思います、というかロリンズはそのつもりでやってるポイですね。

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4拍目E-G-B♭-DはC7の3度から始まるアルペジオで5小節目F7の5度、Cに繋いでます。

5小節目、最後ですが、1拍目から2拍目頭がC-E-F-B♭-Aなんですが、奇数番目の音がFのコードトーン5-1-3になってるコトに注目ですね。コレ、スティットとかも良くやるリックなんですが、クロマチック・アプローチの応用と思われます。ローテーションの説明でも言及しましたが、低音側からのアプローチは半音で(E→F)、高音側からのアプローチはダイアトニックで(D→C、B♭→A)、となってますね。Cメジャーでフルで書くと下記の様になると思います。

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美味しいリックなんで頂いちゃうと良いんではないでしょうか。

こんな感じでいかがでしょうか?先述しましたが、僕もまだ勉強始めたばかりなんで、間違いも有るかもしれませんので、その際はどうぞお知らせ頂ければ幸いです。

次回はこちらを踏まえて、上手いこといけばローテーションとビバップ・スケールの練習方法を検討したいと思います。挫折しなければ頑張りますんでよろしくお願いします。

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