手羽先驟雨

ジャズが好き。アルトサックス練習中。

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最近の記事

ニューオリンズでジャズが生まれる前のはなし

 エイハブはアッシュ・リンクスの生まれ故郷ケープコッド沖にあるナンタケット島から、捕鯨船ピークォド号を駆って白鯨を追い、ホーン岬周りで西へと向かう。アメリカの捕鯨船が日本近海で捕鯨を始めたのは1820年頃だからエイハブがやって来たのもその頃だろう。  当時日本は徳川幕政末期。明治維新まで半世紀を切っている。まだ鎖国時代であるにもかかわらず、遥か異国からやってきた捕鯨船員は既に日本の漁師達と海上で頻繁に交流をしていた。アメリカ人の目的は補給だが、漁師達が水や食糧と引き換えに得た

    • 「I Remember You」のCharlie ParkerとJackie Mcleanのソロ分析をやってみた

      j例によってGoogleドライブを漁っていたら2年前に書いたコレが出てきた。なんかとても恥ずかしい記事だ。寝不足の時にハイテンションで書いてるので意味不明にオカシイとこが多々ある。しかも説明も所々間違ってるし。初心者がちょっと解ると、途端に万能感全開でアホな事を断言しまくったりするアレっす。この頃はまだマイナー・ビバップ・スケールを知らなかったし、パッシング・ディミニッシュも知らなかった… どのツラ下げてマクリーンにマウント取ってるのだろうか等、恥ずかしすぎるけどコレもその記

      • ロシアによるウクライナ侵攻に付いて今年の初夏ぐらいに考えた事

        例によってGoogleドライブを漁っていたら今年の5月ぐらいに書いたエッセイが出てきたんで、せっかくなんで宜しくお願いします。この間に情勢も膠着し、ロシアの行き詰まりを示す報道も増え、カルトに手を出した元首相が無惨に怨恨殺人に遭うなど色々ありましたが、当時考えていた記録として。  本稿を書き始めた当初は「コロナ禍での幸福感」というお題で、流行りのメタバースをテーマにしようと思い、某アプリをスマホに入れたり(※1)、関係する記事や書籍(※2)を読んだりしてネタを温めていた。し

        • あんま有名じゃないけどカッコいい曲について

          あんま有名じゃないけどカッコ良い曲を選んでみました。写真はグリフィン以外は作曲者です。僕の好きなバップナンバーですんでよろしくお願いします。 ・「Time To Smile」by Freddie Redd from “The Music From The Connection” マクリーン出演のミュージカル・ナンバーです。レッドの曲はカゲが有ってダークな切ない感じが多いんですが、この曲は明るい良い曲です。収録はこれサントラ・アルバムですね。麻薬中毒のジャズ・ミュージシャ

        ニューオリンズでジャズが生まれる前のはなし

          音色が印象的なジャズプレイヤーについて

          この度はジャズプレイヤーの音色について書けというお題をある方から頂きまして、実は普段それ程意識していない所なのですが、頑張って書いてみたいと思います。 ・ジャッキー・マクリーン 『What’s New』from “Swing, Swang, Swingin'” レフト・アローンみたいな暗〜いバラードが大嫌いで、マクリーンを聴いている時はいつもスキップするんだけど、メッセンジャーズ時代の『A Midnight Session with the Jazz Messenger

          音色が印象的なジャズプレイヤーについて

          ジャズの引き出しについて〜ジョン・ボードとエディー・ウィリアムスの引き出し〜レアホーンズ・テナー編〜

           前回の記事でポニー・ポインデクスターやジョン・ラポルタの様な、イマイチ知名度は低いけど素晴らしい演奏を残しているアルトサックス・プレイヤーを何人か紹介したので、今回はテナー系を中心にいくつか紹介しようと思います。レア・テナーの引出しってことで。  『Sonny Stitt at the D. J. Lounge』(1961年録音)は、シカゴでのライブ録音で、恐らく巡業中のスティットが地元ミュージシャンと繰り広げたセッションを記録したものと思われる。(スティットにはこの手の

          ジャズの引き出しについて〜ジョン・ボードとエディー・ウィリアムスの引き出し〜レアホーンズ・テナー編〜

          コロナ禍中に読んだジャズ関連本

          コロナ禍中に読んだジャズ関連本をいくつか紹介します。元々は1年ぐらい前に書いてほったらかしにしてた文章なんだけど、今日、Googleドライブを漁ってたら出て来たので、コッチに載せることにしました。あんま読み直して無いんで古かったり変なとこもあるかも。ヒドイのあったら修正します。 先ずは子どもが学校に行けず、休日は僕も自宅待機に付き合って引きこもってた頃、練習出来る様になるまでに気分を盛り上げておこうと思い、暫く持ち歩いていたジミー・ヒースの自叙伝から。 〇『Iw Walk

          コロナ禍中に読んだジャズ関連本

          ジャズの引き出しについて〜スモール・ビッグバンドの引出し〜

           実はビッグバンドは2回ほど参加したことがあって、二子玉川と調布の市民ビッグバンドなんだけど、両方とも数か月で行かなくなってしまった。なんか、バンド内のあの独特の空気感が苦手というか、そもそも協調性無いんで。だからビッグバンドにはなんかコンプレックスがあるんだよな。聴く方はというと、やっぱそれほど熱心でもなくて、カウント・ベイシーのロックンロールなやつとか好きなんですが、まったく詳しくありませぬ。そんな中、普段聴いている見知ったメンツが組んでいるチョッとスモールなアンサンブル

          ジャズの引き出しについて〜スモール・ビッグバンドの引出し〜

          ジャズの引き出しについて〜ソニー・スティットの引き出し〜

           20歳でジャズを始めたばかりのころ、今は都内を中心にプロ活動をされているピアノの友人にジャズのテープを何本かお借りした。それがソニー・スティットの『Tune-Up!』と『12!』だった。今でもよく聴くアルバムである。スティットはとにかく多作すぎてバンドメンバーも無名アーティストの場合が多い。時にまるで「そこら辺の誰か」を使った風である。パーソネルを調べても「Unknown」とか書かれている物すらある。おそらくスティットも「メンツなんか適当で良いんだよ。俺の演ることなんていつ

          ジャズの引き出しについて〜ソニー・スティットの引き出し〜

          書評『11の国のアメリカ史 分断と相克の400年 上・下』

          書評『11の国のアメリカ史 分断と相克の400年 上・下』コリン・ウッダード(著) / 肥後本芳男・金井光太郎・野口久美子・田宮晴彦(訳) コレから日本は政治的にも経済的にも技術的にも文化的にも二流以下の国になり、国際的な発言力どころか存在感も無い国になって行く訳だが、人口の激減に伴う経済規模の急激な縮小を避けるためには、移民政策を進める他にはない事がわかっているにもかかわらず、せっかく来日してくれた外国人労働者家族にろくな教育機会を与えず、難民すら受け入れずに追い出し

          書評『11の国のアメリカ史 分断と相克の400年 上・下』

          手羽先Jazz研究ノート ~Blues for Philly Joe~

          僕はビ・バップ好きのアルトサックス吹きなんですが、ジャズはセカンダリー・ドミナントまで理解したところで、あとはコピーを沢山して気に入ったフレーズを12キーで覚えまくれば出来る様になるだろうと思っていました。で、何十曲も耳コピしてフレーズの12キー練習も何十個もしたんだけど、なんかイマイチ上達できず、マイナーの曲や変則的なコード進行の曲、バラードやスローブルースもずっと苦手なままで、やがて生活に追われ練習が出来なくなって10年ぐらいなんもしてなかったんですよ。それが去年ぐらいか

          手羽先Jazz研究ノート ~Blues for Philly Joe~

          手羽先的Best Track ~All Blues~

          貴方がもし1940年代のアメリカの街に住んでいて、初めて自分の楽器を買ってもらったとしたらどうするだろう?まず音が出るように練習をするだろう。音が出るようになったら?楽器を持っている友達で集まって何か曲をやってみようとするだろう。生れて初めてのセッションで一番最初に演奏される曲は何だろう?もちろんそれはブルースだ。しかも飛び切りスローでシンプルなヤツである。そこにはジャズの大切な秘密が隠されている。そしてそのセッションで演奏されたブルースは貴方が死ぬまで演奏され続けられるだろ

          手羽先的Best Track ~All Blues~

          ジャズ進化論試論 ~マイルスのカツラと最後の恐竜としての鳥について~

          ジャズの進化とはマイルスのカツラである、或いは、1930-40年代にレスター・ヤングのスタイルがあまりにもカッコよく、当時の若手ミュージシャンに圧倒的な支持を得ていたわけだが、各地で独自にレスターを研究していた若手ミュージシャンが同時多発的に、後年「ビ・バップ」と呼ばれるようになったスタイルを育んでいったのではないか?というか絶対そう。という様な事を以前書いた。 まあカツラの話はともかく、しばしばチャーリー・パーカーを「ビ・バップの創始者」とする様な物言いを見かけるが、本当に

          ジャズ進化論試論 ~マイルスのカツラと最後の恐竜としての鳥について~

          手羽先的Best Track ~The Bop Soprano~

          ソプラノサックス、軽くていいですよね。昔よく吹いてたけど結構難しいです。ジャズでソプラノというとウェイン・ショーターやコルトレーンの印象が強くて、なんかオドロオドロしかったり、変に攻撃的だったりするイメージが有るかもしれませんが、吹く人が吹けばもちろんハッピーで楽しいいつものジャズになります。 曲名:Seven Come Eleven 出典アルバム:『Lionel Hampton With Dexter Gordon』 by Dexter Gordon デクスターが嘗ての

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          ジャズの引出しについて 番外編~バードとプレスの共演ライブについて~

          チャーリー・パーカーのアルバムに、ヴァーヴのプロデューサー、ノーマン・グランツが主催していた、いわゆる「J.A.T.Pコンサート」の1946年の録音からパーカーがフューチャーされた音源をまとめたものがある。録音前提のライブだったので音質も良く、当時のオールスターセッションなのでメンツも良い。ライブならではのハプニングもあり、とても楽しいアルバムだ。4曲目「Oh, Lady Be Good」でパーカーがソロを取った後、何故ベースソロが延々と続くのか、何故ベースソロの途中でいきな

          ジャズの引出しについて 番外編~バードとプレスの共演ライブについて~

          書評『人口で語る世界史』

          『人口で語る世界史』 ポール・モーランド(著) / 渡会圭子(訳) コレから日本は政治的にも経済的にも技術的にも文化的にも二流以下の国になり、国際的な発言力どころか存在感も無い国になって行く訳だが、まあ僕らが、日本会議の会合に毎年素敵なビデオメッセージを送っているような人物が総理大臣である事をベストの選択と思っていた様な状況では致し方ない事だ。 未来の年表とかいう本を読んでも、著者は移民など受け入れずに誇り高くシュリンクしようとしか書けない訳で、もう僕らは、変化しない為には

          書評『人口で語る世界史』