ほわちょこ創作の裏側vol.1―見上げる魚と目が合うか?編―

劇団ホワイトチョコが好き。二人芝居
『見上げる魚と目が合うか?』
鷹野百江×廣瀬響乃 特別インタビュー

聞き手:小野諭佳梨/撮影:内田匠哉
構成:後藤久美子/構成補助:今津佑介

◆なぜこの作品を選んだのかーー

廣瀬:この作品は、東日本大震災の翌年2012年に書かれて、第18回劇作家協会新人戯曲賞を受賞した作品です。ちょうどその年にこの台本を読んで、それ以来ずっとやってみたいと思っていて。今回その思いが、ようやく実現した~!って感じです。

今年は台風15号による千葉県の被害、また台風19号においては私たち山梨県民も被害を受けて、災害について色々な感情を強く味わいました。近年はSNSが発達して、ニュースよりSNSの情報の方が早い。災害時、命を守るひとつの手段にもなるけれど、その早さに比例するように超高速で「風化」もしていっているという印象があります。この作品は2012年に書かれた作品だけれど、すごくタイムリーな題材を扱っていると思います。私は今これをやりたい。だからこの作品を選びました。

◆山梨の文化の発信地
文化のるつぼ へちまの魅力とはーー

廣瀬:この台本を読んだ時、一番最初にへちまさんが思い浮かびました。作品の舞台となるのはファッションデザイナーがアトリエとして借りているマンションビル、シェアオフィス。

よく観に来ていただいている方にはわかると思うんですが、ほわちょこはその場所を生かした劇場選びをしているので、へちまさんはそのイメージにぴったりだと思いました。4階は実際シェアオフィスだし。劇団Instagramにも写真を載せましたが、雰囲気がとても素敵だというのもここを選んだ一番の理由です。

◆演出と出演を兼ねる廣瀬響乃
その創作の裏側とはーー


廣瀬:まあまあ皆さんには伝わっているかと思っておりますが(笑)演じながらの演出は客観的に舞台が見えていないので、その部分はやっぱり苦労しますよね。演出助手の小野諭佳梨さんやメンバー皆に支えられながら演出しています。あとビデオカメラ。

小野:文明の利器を駆使しつつ、だね(笑)

◆演出の醍醐味とはーー


廣瀬:自分もプレイヤーなのでどう役を作っていって、どう言葉を発していくのか、気持ちが分かるので、その人が役を作っていく上で大事にしていることを汲み取った上でディスカッションしながら作り上げていくのがすごく楽しいです。

◆読み合わせから立ち稽古まで。
稽古の過程で大切にしていることはーー


廣瀬:舞台に立つ側の場合は、ひとつひとつの言葉に注目して「どうしてこんなことを言うんだろう」「どうしてこんなことをやるんだろう」ということを大切に考えるようにしているけど、演出する側の場合は、全体がどういうことを伝えたいのか、このシーンはどういう意図があるのか、と、大きく切り取って考えることを大切にしています。

後は、どういう風に見えているのか、お客様に不親切なところがあっちゃいけないという意識で演出をさせてもらってます。

◆音楽が舞台のスパイスに。
選曲へのこだわりとはーー


廣瀬:私たちは20~30代のメンバーで構成された劇団なので、これからいくぞ!というJロックの人たちとコラボしたくて。

『遭難、』では“夜の本気ダンス”さん、『不帰の初恋、海老名SA』ではLUCKEY TAPESさんの楽曲を使用させていただきました。今回は、ほにゃららさんを使わせて頂こうと思っています。

小野:そこはまだ秘密なのね(笑)

廣瀬:そう秘密です。お楽しみに。今回のほにゃららさんは、歌謡曲とか昔の音楽が好きみたいですよ~。

小野:昭和な感じ?

廣瀬:そう!昭和な雰囲気も感じられるメロディーラインです。勢いのあるアーティストの楽曲の力を借りて、ポップに演出したいです。

◆これまでもほわちょこの作品に数多く出演する鷹野百江。今回の役柄をどう受け止めているかーー

鷹野:いつもは自己チューな女とか、気の強い女とか、「お前ほんとに何なんだよ!」っていう怖い女性の役が多いんですが、今回は真逆っていうほどではないけど、マイナス思考でちょっと天然なところがある役柄なので、自分としては新鮮な、やったことがないタイプの役柄かなと思います。

廣瀬:鷹野さんはほわちょこ以外にも山梨県内の色々な公演に出演しているけど、ほわちょこでは新しいももちゃんを見たいんです。今回の配役はそんな意図もあります。


◆今回演じる“妙子”への思いとはーー


鷹野:役作りでは、周りにいる変な人たちの変なところをチョイスするようにしています。「あ、これ妙子さん(今回の作品の役名)だな、もらいっ」ていうのを日常生活で探しています。あとテレビに出ている人からも、妙子っぽいところを見つけます。全部だとその人になっちゃうから、ちょっとずつちょっとずつ、いろいろな要素を混ぜ合わせる感じです。

小野:今回稽古を見ていて、鷹野さんは不思議と無理してやってる感はなくて、しっくりきている感じがする。何でだろう?

鷹野:妙子さんみたいに、自分自身が本当は物事をマイナスに考えることが多くて。例えば、学生時代テストがある時は、「自分はできない」っていう思いが強いから、のめりこむようにして勉強してたのね。よく「全然勉強してないよ」って言ってたのに自分よりいい点数取ってんじゃん!っていう子いるじゃない?自分はそういうタイプだった。例え結果が出ても、本当に自分はできない、足りてないと思ってた。

小野:じゃあベースの部分で、役柄と似てるところがあるんだね。

鷹野:ちょっとあるんだと思う。
ニュースとかみた後、次に自分に同じ悪いことが起こったらどうしようって思ってしまうから。明日運転やだなとか。

◆本番に向けての意気込み
『かすり傷をつけるようにまわりくどく

(宣材撮影時のオフショット 鴨とともに)

廣瀬:この作品は、ほわちょこではあまりやらないようなものかもしれません。バッドエンドでもハッピーエンドでもないですからね。

鷹野:もやもや感?

小野:はっきり白黒ってわけじゃなくて、「それは観てくれた人の受け取り方で」っていう観客に委ねる部分が結構多いよね。私たちがこれまで上演してきた作品の場合「こうですよね」、「ああですよね」って主張するものが多かったけど。

廣瀬:そうだね。
この作品のなかでは、はっきりと分からないような出来事や感情が沢山描かれています。例えば、自分の暮らす場所ではなくどこかで災害が起きたとき「自分は傍観者だ」っていう気持ちが生まれることだったり。災害とその後の生活で生まれる色々な感情や出来事を、生々しく突き刺すのではなく、かすり傷をつけるみたいにまわりくどく、お伝えできたらと思います。

まあでもやっぱり、単純に楽しんでほしいです!会話のやりとり自体が面白く笑える部分もあるし、台詞(ことば)自体が美しいのでそこも見どころです。

台本を文字で読んだだけではわからない部分、舞台に立ち上げなければ伝わらないものを、お客様に感じてもらえるように頑張ります。今だから今日だからやりたい、見て頂きたい作品です。少しでも気になったらぜひ劇場に足を運んでください!

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