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女性の生きづらさはどこから来るの? 海外との比較は何も生まない


海外逃亡したい日本の女性

以前、ジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)で日本の評価がイマイチ…という話を取り上げた。

女性活用において日本政府を動かす根拠の一つ、となっているのがジェンダー・ギャップ指数(Gender Gap Index:GGI)のような海外からの目。

そして女性差別のコストが正しく認識されない一例が、海外に出て通名がリスクとなってしまう場合の話。国内にいる選択制夫婦別姓の反対者は当事者でなく、そのリスクを理解せず、反対しているように、だーじりんには見えている。

世の中の大半のケースは通名で問題ないかもしれないが、一部の人は本当に困るのだ。

こういう視点があったので、女性の生きづらさ×海外で物事を見てみようと思った。

海外に行ったら、この問題が解決するのか?

のような、日本を出ていくことを前提に動いている女性ってどんな方々で、どれぐらいいるのだろう、と単純に思ったのだ。


似たような思いを綴られていた記事はnoteにもあった。

タイトルの強烈さから、決意がひしひしと伝わってくる。

そして、女性の生きづらさは、一部の男性にも共感をいただけるようにもなっている。

最近「想像以上にすごく女性が割りを食ってるな」と感じさせられる

生きづらさ、についてある程度「私も」「私も」という空気は出来ているように思うのだ。

海外移住のハードルは高い。

しかし、実を言うと、”女性の生きづらさが主たる原因で既に移住した”という記事を、だーじりんはうまく見つけられなかった。
このままだと移住する、海外に逃亡したい。そんな思いは溢れている。

では、どれぐらい、移住が進んでいるのか?

よくわからなかったので調べてみた。

こういう時、日本にはe-Statという便利なサイトがあって、国勢調査の過去のデータを探したりできる。

今回は、人口推計の長期時系列データと年次データをみて、その一部を抜粋。ちょっとExcelに並べてみた。

例えば2019年に40歳だった人は、2009年には30歳だったはず…ということで、それぞれのタイミングで記載された年齢別人数を整理した。

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国勢調査は総人口のデータもあるが、今回は日本人のみのデータを見ている。
数字が年によって多少変動するのは、海外に住んでいる人が帰国する場合、出国する場合や国籍離脱・喪失やご不幸があった場合と考えられる。

表に並べた期間の中で、一番値が大きい年が、おそらく日本に住んでいる(あるいは出たり入っている)日本人の人口に一番近い値だと仮定してmaxとした。

このmax=日本に住んでいる(あるいは出たり入っている)日本人の人口に比べて、2019年にどれだけ日本国内にすむ日本人が減っていたか、を示すのが19/maxのところ。

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結論:別に若い女性が同世代の男性に比べて、取り立てて海外に流出してるってことはない。

30代前半の男性の約7%が海外住まいというのは、企業の駐在や留学と認識している。

このままだと移住する、海外に逃亡したい。そんな思いは溢れている。

でも、そんなに現実は簡単ではない
実際、海外住まいの方がそう綴られている。


実際にカナダに来てみて思ったこととして、確かに、「日本よりも海外で過ごすほうがいい人間」というのは存在するのだろうな、と思う。
(中略)
「もっと手に職と語学力と、それから自己肯定感と、それから外向性があればよかったのに」と思う。
(中略)
もっと努力しなさい、もっと頑張りなさい、あなたが価値のある人間であることを私たちに証明しなさい。
移民でいるということは、毎日が「証明」の繰り返しであるということだ。

まさに、そういうこと。

「努力して達成したことが社会的な地位の向上という形で承認される」という意味では、適した環境。
手に職と語学力と、それから自己肯定感と、それから外向性があって、社会的地位の椅子取り競争に参加している女性にとっては、色々と同調圧力と排斥圧力のかかる不利な日本という環境でプレイするより、海外行った方が有利だわ、ってことが起こりうる。

でもまだ、手に職と語学力と、自己肯定感と、外向性を兼ね備えていない人たちにとって、日本は選ばれる環境なのだ。

一部の人は本当に困っているが、大半の人はそこまで深刻ではないこの状況。国際的な指標で日本の女性平等の評価がイマイチ、だから何? というのが、多くの人の本音だろう。だから、政治は動かない


そして、地方自治体は存亡の危機である

この議論は、2014年の地方消滅 東京一極集中が招く人口急減(増田寛也編著)で指摘された話で、全国1,799の市区町村のうち、896自治体は消滅可能性があるといったセンセーショナルなものだった。

消滅可能はどのように判断したのかというと、今後30年の間に若年女性の数が半減する→子供の数が減る→いずれは人口が減りすぎて自治体消滅の可能性があるというもの。

日本の中から若い女性がいなくなるわけではないけれど、地方自治体から若い女性がいなくなることは、すでに現実として起きている。

そして、その原因の一つは、やっぱり女性の生きづらさ「努力して達成したことが社会的な地位の向上という形で承認される」という意味で環境が整備されていないことなのだ。

海外移住のハードルはまだ高い。まだ、願望どまりの人が多い。
でも、女性の生きづらさが人口流出を招くこともまた現実だ。


「そんなに日本が嫌なら出ていけ」のヤバさ

生きづらさ、についてある程度「私も」「私も」という空気は出来ている。ただ、一方で、国際的な指標で日本の女性平等の評価がイマイチ、だから何? というのが、本音だという人も多いと思う。

だから、生きづらさを感じている側も、国内で移住したり、海外に出てみたり、気の合う仲間を探したり、生きづらさを感じない環境を自分から探しに行くことも必要になってくる。
生きづらさを感じていない人たちと、折り合うことも大事。一部の生きづらさは本当は女性の生きづらさ、ではなく男女関係なく感じる生きづらさとして、一緒に解決していく方向にもっていくという戦略も必要だろう。

そういう、折り合いの線を探そうとする中で、「そんなに日本が嫌なら出ていけ」という言葉が引き寄せる人口減が、本当にヤバいと思っている。

「そんなにこの地域が嫌なら出ていけ」という態度が、若い女性の東京一極集中を生んでいる。「そんなに日本が嫌なら出ていけ」という言葉が言える人は、おそらく高をくくっている。実際、そんなに人が流出するわけがない、と。

今まではそれで、実際流出しなかった。でも、十数年後、その言葉を聞いて育った子供たちが、海外で高等教育を選択していたら、海外での就業のハードルも下がってくる。デジタルネイティブ世代という言葉があるが、こういうグローバルな動きが当たり前となる世代は、一体何ネイティブと呼ばれるのだろう。
その時までに自分が天寿を全うしている自信がないなら、「生きにくいのは分かったが、日本で頑張れ」とお茶を濁す方がよほど戦略的だ。少なくとも政府はそうやって女性活躍を掲げていて、少なくとも日本から海外には女性の流出はまだ、していない。

でも、海外留学する日本人は、女性の方が多いという事実はある。

「そんなに日本が嫌なら出ていけ」という言葉が言えてしまう、高を括った態度が何より、女性蔑視を露にして、物事を悪化させている。そういう風にだーじりんには見えている。


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