1人で生きるということ
人は、自己のためだけに生きるのは困難で、結局は誰かのため何かのため生きるものだ。三島由紀夫であったか、その真意も文脈もわからないが、そのようなことを語っていたと思
う。
これは、エゴイズムに陥ってはならぬといった底の素朴な説教論ではあるまい。むしろエゴイズムでは決して克服し得ぬ死の虚無を乗り越えるための、宗教に代替する哲学の可能性を示唆しているように思われる。
人々が共同体の連帯と循環の中にのみあり、その束縛を目的としていた頃、己の死は単に己の死であるに過ぎなかったかもしれな