『ART SHINSAIBASHI コンテンポラリーアートコレクション』《現代アートの人気作家たち》杉田陽平特集を拝見してきました
2023年6月15日(木)から20日(火)に大阪の心斎橋パルコで開催された『ART SHINSAIBASHI コンテンポラリーアートコレクション』に、《現代アートの人気作家たち》として、杉田陽平さんの作品が27点展示されていました。
会期中の土日、6月17日と18日にご本人が在廊されていて、17日(土)にはライブペインティングとトークのイベントが、18日(日)には小学生が対象のお絵かき教室のイベントが開催されました。
それぞれ事前に先着順で予約の受付があり、私は6月17日(土)のライブペインティングとトークのイベントに申し込み、東京から日帰りで拝見しに行ってきました。
会場について受付をすますと、席は決まっていなかったので、ぜひ制作の様子が近くで見たくて、前の方の席に座らせていただきました。
作品が飾られている杉ちゃんのブースに椅子が置かれて、そこがイベント会場となっていたので、ぐるっと飾られた作品を見せていただいていると時間になり、杉ちゃんが、バチェロレッテジャパンシーズン1の第一話で着られていたタキシードと同じ姿で登場されました。
バチェロレッテで着ていた衣装そのものではなく、最近新調されたそうです。
そしてその服装のまま、ライブペインティングを開始。
「タキシードを着て絵を描いているのは僕くらいですね」と杉ちゃんが言ってて面白かったです。
最初眼鏡をかけない状態で登場されたのですが、繊細な油絵の制作だったからか、眼鏡をやっぱりかけて描きたいということで、ギャラリーの方に持ってきてもらっていました。
待っている間に、昔の画家は木製のパレットで絵の具を拭いて使っていたけれど、今は紙パレットというのがあって、自分はこれを使っているんだよとか、ここで乾いた絵の具を剥がして作っている立体作品もあるんだという話もされていました。
杉ちゃんのファンになってから、何度か個展を見に行かせていただき、ライブペインティングを見せていただいたことがありますが、今まではアクリル絵の具のライブイブペインティングが多かった印象があります。
けれども、今回は油絵の制作の様子を見せてくれてとても新鮮でした。
油絵のライブペインティングは、アクリル絵の具のライブペンティングとまた一味違って、「魅せる」よりも「普段やっている積み重ね」を見せてくれたようで、感動。
杉ちゃんが今回の個展でいくつか描かれている水滴の作品の説明をしながら、ライブペインティングでもそういった作品を描いてくれました。
垂れた水滴は想像で描いているということ、そして、とても難易度が高いことをしていると言われていたのが印象的でした。
水滴が垂れたところのハイライトの部分は、上下が逆転して映るそうです。
例えば、上が空だったとしたら、下のハイライトの部分にはその空が映っていて、反対に、上がハイライトだとしたら、下にある地面が映っている、そういう法則、構造があるんです、と教えてくれました。
その話がとても興味深くて、ライブペインティングの後にもう少し深く聴きたくて質問したら、水滴について、さまざまな資料を元に研究されていて、「どうやらそのようだ」(つまり、さっき話してくれた法則のようだ)と思って描いていると話してくれたのです。
それを聴いて、開拓者じゃないけれど、難しいものを描いてみようと思って、ご自分で研究して挑戦する姿勢が素晴らしいなと思いました。
そして、実際に、見た人がハッと息を呑むような作品に昇華していることも本当にすごいなと感動しました。
ライブペインティングのときの話に戻りますが、この作品は「遠くで見て、一点描いてはまた下がって後ろで見て、の繰り返しをしている」と言ってて、すごい地道な作業なんだと知りました。
それからこんな話もしてくれました。
新しいことをするのって勇気がいるんだけど、どっかでチャレンジしていかないと名画は生まれていかない、三振してもいいから大振りしていかないと、と。
画家はほとんど一人で描いているから、そういう中で、個展にきたお客さんや買ってくれた人との会話などの過去の思い出が励みになってチャレンジができているんだとも話してくれました。
実際の制作は、悩みながらの地味な作業の連続で、ほんのちょっとの暗い部分とハイライトのグラデーションの部分を滑らかにするという作業はフェチっぽいのだけれど、のちに意外と効いてきて、いい緊張感になると言われていて、本当に繊細なことをコツコツとしているんだなと感じました。
無言でしばらく描き続いている時間があったのですが、その描いている姿はとても美しかったです。
それから、作品は、アトリエにこんな窓があったらいいなと思って描いたものということを言われてて、水滴の作品の制作した想いについても話してくれて、作品だけ見ても素敵なんだけれど、話を聴いて、もっとよく見たくなりました。
そのほかにも「問い」のような話がいくつもあって、そのいくつかの問いが作品に込められているのだと知り、作品の魅力が増しました。
その中のひとつについて、心に残った話のメモを載せておきます。
”自分のことは、自分の脳に愛着がありすぎて、わかりそうでわからない。
一生懸命だからこそわからなくなる。
自分のことや大切に思うことを知りたくて、見ようとすればするほど見えなくなる。
大事なものが消えていく、、、
例えば、山を描こうとしたら、木や土や葉っぱなどの具体的なものをたくさん描いても山にはならない。
山ってなんとなくこんな感じかなって、ぼんやり山を見ないと、山は描ききれない。
大事なことって見たければ見たいほどぼんやり見る努力が必要なんじゃないかなと思っている。
見つめるってどういうことだろうかということが主に言いたくて、描いた作品が、向こう側がぼやけているガラスに水滴のついた作品たち。
生きる上で、見えない壁がたくさんあるけれど、見えない壁の向こう側にあるものを想像していきたい”
イベントの後、少し杉ちゃんとお話しできる時間もあり、作品について質問させていただいたり、持参したカーセンサーEDGE7月号の表紙にサインをいただいたりして嬉しかったです。
そして、作品をゆっくり拝見できました。
一つひとつの作品がそれぞれ違った魅力があって素晴らしかったです。
それぞれの作品に魅力を感じて、どれとは決めかねるのですが、特に印象に残った作品を挙げるとすると、、
窓ガラスの作品はどれもいいなと思ったのですが、迷いながらこれが一番好きな気がします。
さまざまなアプローチで表現された作品の数々を見せてもらって、心と頭をたくさん動かしたなという感じがしました。
先日行われた、松戸スタートアップオフィスのビジネスセミナーで杉ちゃんが「心のマッサージをするのが画家」と言われていたことを思い出しました。
愛着のある描き方の作品を見せ続けてくれながら、水滴の作品やモノトーンの海、ソフトクリームのついた作品など、新しいことにチャレンジされた作品もあって、新たなときめきと可能性を感じてワクワクしました。
ライブペインティングのときに話してくれた話や、杉ちゃんの日頃の取り組みの姿勢から「怖くても新しいことに挑戦していく大切さ」を感じさせてもらい、「自分の可能性を信じて一歩踏み出す勇気」ももらえました。
大阪の心斎橋まで行って良かったです。
ありがとうございました。