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今の自分にできること

部屋で探し物をしていたら買ったっきり忘れていたダルマが沢山出てきた話を家族としていたら、子供たちから「ところでダルマって何?」という「今さらなんだよ😱」という質問がきた。

そこで達磨大師の話をしてやったのだが、続けてちょっとからかい半分で「もし正解したら特別定額給付金の1人10万円を全部あげる❗」と子供たちに問題を出しました。

「昔の話なんだけど、あるお坊さんが『達磨大師が遥々インドから中国までやってきたのにはどんな真意があるのでしょうか?』と趙州というお坊さんに聞いたんだよね。さあ、趙州というお坊さんは何て答えたのでしょう?」

中2の息子は10万円をゲットすべく真剣に考えておりました。中1の娘は珍しくガツガツを抑え「あわよくば…」と黙りこんで考えておりました。

「言っておくけどお父ちゃんが出すような問題だから普通の答えじゃないよ。2回まで答えてよし。」

二人ともそれぞれ2つの解答をしましたがもちろんハズレ。「お父ちゃん、正解は?」

「趙州和尚は『庭先にある柏の樹だ。』って答えた😁」

二人「はっ?なんじゃそれ😓趙州って人はバカなんじゃないの?」

お父さんのくだらない冗談に付き合わされたと呆れた息子は苦笑いで自分のやることを始めたが、娘は不思議そうな顔をして「お父ちゃん、それってどういう意味なの?」と聞いてくる。

このお話はちょっと仏教や禅に興味がある方はご存じの「庭前柏樹」と呼ばれる禅の公案の一つです。禅語に関する本には必ず登場し、そこにはそれらしい解説が書かれていますが、私なりの解答を娘に話してやりました。

「趙州和尚は昔の人だからお父ちゃんは直接話はできないし、どんな人でどんな考え方をする人かは分からないから、趙州和尚が本当に言いたかったことは分からないんだけど、きっと『そんなことはどうでもいい』って言いたかったんじゃないかな。達磨大師が何で中国まで来たかは多分趙州和尚も分からないだろうからそもそも答えがない質問なんだよね。そんな答えがない質問を一生懸命考えている時間があったら『自分の目の前にあることに集中しろ』って言いたかったんじゃないかな。だから、質問されて一番最初に目に入った庭の柏の木って答えたんだと思うよ。○○ちゃん(ウチの娘の名前)に言っておきたいんだけど、そもそも答えが1個しかない質問って学校のテストだけ、それも数学のテストくらいだと思うんだよ、お父ちゃんは。例えば歴史の問題なんかお父ちゃんが習ったときと今では答えが違うものが沢山ある。答えがいつくもある問題や答えが沢山ありすぎて答えがないような質問は、時間をかけて難しく考えるよりも、自分が今わかっていること、今できることで答えを出して行動するのが大切なんだよって趙州和尚は言いたかったんだと思うよ。」

娘には難解な説明かなぁ…と思っていたら、一言「ふ~ん、分かった…お父ちゃんは素敵な考え方をするのね。」

すると横で聞いていた息子は「お父ちゃんはどこでその話を聞いたの?」と前のめりになってきた。「お父ちゃんの本棚に仏教の本が置いてあるところがあるじゃん(息子は時々木彫りをするために私の仏像の本を拝借していくから知っている)。あそこにいっぱい置いてある。」「ふ~ん、今度読んでもいい?」「どーぞ、ご自由に。」

翌朝、息子と二人寝床でゴロゴロしていたとき「あっ、そうだ。昨日話していた禅の公案の本、読んでみるか?」と本を持ち出す。意訳がついているがそれでもまだ難しい言い回しが多いので、私が分かりやすく読んでやる。

「やっぱワケわかんないんだけど…趙州はやっぱりバカかね?」と息子😆

「バカか天才かの問題じゃない。この話で何が言いたいのかを一生懸命考えるんじゃなくて、この話を聞いてお前さんが今どう感じたかが大事なんだ。多分何年か後に見ればまた違う感じ方になるよ。」「うん、確かに。しかし、この南泉と趙州の師弟コンビは普通じゃないね。」

そして、道元禅師の著書『典座教訓』に登場する、禅師が若かりし頃に中国に渡り景徳寺で修行をしていたときの典座とのやりとりの話を聞くと「へぇ~…あの道元もそんな時期があったんだねえ。」と変に感銘を受けていたのであった…

私(道元禅師)が、寧波の天童山景徳寺で修行をしていた当時、寧波府出身の用さんが典座(食事係)を勤めていた。(中略)仏殿の前で用さんがキノコを干しているのを見かけた。その姿は手に杖を持ち、笠も被っていない。日は灼熱のように照り返し、敷き詰めた瓦は焼けんばかりに熱い。(中略)私は思わず傍らに近づいて、

「あなたのお年は?」と尋ねた。老僧は、

「68歳だ」と答えた。

「どうして若い寺男にさせないのですか?」

「彼らは私ではない。」

「なるほど、おっしゃる通りです。でも、なにもこんなカンカン照りの中でこんな苦しいことをしなくても?」

「物事にはタイミングがある。この時間を外して、いつ干せばいいのかね?」

用さんのこの一言を聞いて私は黙るしかなかった。


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