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パワーのある問いとは?〜成長につながる問いかけコーチング#34〜

自分の発する問いを相手よりも考える

あなたは普段どんな問いを考えていますか?コーチングの世界ではよく「良い答えは、良い問いから」と言われます。私もコーチングをするとき、基本的に何か答えを与えるというよりは、向き合う相手に良い問いを投げかけるのが役割だと思っています。そして、問いを投げかける際に意識しているのは「どんな問いを投げるか」ではなく「その問い自体に力があるか」「相手に考えさせるパワーのある問いになっているか」ということです。

実際これは結果を測れるものではないので、私の問いが本当に相手に響いているか刺さっているかはわかりません。しかし、私が問いを投げかけたとき、その相手がハッとしたような瞬間を観察できれば、その問いは力のある良い問いだったと思うようにしています。もちろん、テクニカルに良い問いを発することも大事ですが、私が長年コーチや、コーチのコーチという立場を経験してきて思うのは、その問いをいかに自分自身にも問うてきたかが大事だということ。その蓄積が、相手に対してもパワーのある問いになる要因なのではないかと考えています。

例えば、よくスポーツの指導者相手にワークショップやセミナーなどを行いますが、一通り練習をした後「ところで、今やっていた練習のゴールは何ですか?」と問うんですね。おそらく練習をやる前にはゴールを持ってのぞんでいるはずなんですが、一旦終わった後に改めて聞いてみると、そのゴールを見失っているケースが意外とよくあります。人間は集中すると目の前のことに心を奪われがちです。練習をしていれば、選手の動きやボールの状況ばかりに目がいき、そもそも自分がやろうとしていた練習が本来のゴールに向かっていないことに気づかないまま、時間が過ぎていることが実際に起こります。これは一流の指導者であっても、よく起こることです。やっている最中はなかなか気付けませんが、この事実に気づくかどうかが重要です。

コーチのコーチというのは、練習後のレビューが重要な役割の一つです。レビューの際には「もう一度同じことをやるとしたらどうしますか?」という問いを投げかけることがあります。そうすると相手は「こうすればよかった。次やるならこうしよう。」とか「そういえば、そもそも掲げていたゴールはこれだったんだ。」と思い出します。私は練習のレビューをするとき、私が発する問いについて、相手以上に考えている自信があります。それを自分自身のルールとしています。なので、相手よりその答えを知っているというより、相手よりもその問いに向き合っている時間や回数は圧倒的に多いはずです。そして、これこそが「問いの力」になっているのではないかと思います。

同じ問いをするにしても、その問いについて考えてきた時間の蓄積が、問うタイミングや問い方に影響します。相手に寄り添い、相手が一番深く考えるであろう問いのタイミング、これはおそらくこれまでに蓄積された自分の経験から生み出されるものです。例えば、「そもそもゴールってなんでしたっけね?」と軽く聞くよりも、相手に寄り添う気持ちを持ちながら、答えを一緒に探しましょう、共に解決しましょうという姿勢で問うことが、相手に大きな力を与えるのではないかと思います。

スポーツだけでなく、ビジネスの場でもエグゼクティブの方へのコーチングなど行いますが、そこでも基本は同じです。答えを出すというよりは、相手がなかなか即答できないような問いを一緒に考える。寄り添って、共に解決しようとするスタンスで問いを投げることによって、相手が今まで踏み出せなかった一歩を踏み出すために、背中を押すことができるのだと思います。

今日は問いのスキルではなく、問いそのものが持つ力を高めるためには、という観点でお話ししました。あなたが今日発する問いは、どんな力を持っているでしょうか?自分自身や大切な人に、ぜひ力のある問いを投げかけてみてください。

※ 本記事は、中竹竜二Voicyチャンネル『成長につながる問いかけコーチング』より、内容を再編集し、記事化したものです。

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