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燕三条のサステナブル経営と文化資本

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新潟県燕三条地域の産地型産業クラスターに関する魅力や文化を伝える記事です。
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記事一覧

【#13】まとめ(後編)-燕三条における文化資本の存在

「燕三条のサステナブル経営と文化資本」では、私たちTeam想が2021年10月~22年3月に社会人経営大学院の卒業研究で取り組んだ論文内容をベースに再編集し、今まで#1~#12にかけてnoteにて記事化してきました。 そして今回#13は、いよいよ最終回です。 前記事の#12では燕三条の産業クラスターとしての成功要因とそれを支える6つの資本の存在についてを伝えてきましたが、 今回の#13では、「6つ資本」の枠組みでは説明できない「文化資本」の存在について迫っていきたいと思いま

【#12】まとめ(前編)-燕三条の成功要因と、それを支える6つの資本の存在

「燕三条のサステナブル経営と文化資本」では、私たちTeam想が2021年10月~22年3月に社会人経営大学院の卒業研究で取り組んだ論文内容をベースに再編集し、今まで#1~#11にかけてnoteにて記事化してきました。 そして今回#12では、その総括の前編として、燕三条が地域産業クラスターとして成功をおさめた要因はなんだったのか、そして、その礎として、どのような「6つ資本」が存在しているのかをまとめていきたいと思います。 燕三条の地域産業クラスターの成功要因は?過去の記事に

【#11】D:燕三条の職人のサステナビリティとは

今回は、産業クラスターのフレームワークの最後かつコアのパーツである「職人」についてフォーカスを当てていきたいと思います。 検証フレームワークで職人が中心にあるのは、燕三条はものづくりの街であることから、職人無くしては成り立たない産業クラスターだからです。産業のコアとなる職人の存在。この地に職人が生まれ、定着していくためにはどのような仕組みになっているのかを紐解いていきたいと思います。 技術継承のための燕三条全体としての職人採用と育成の取り組みもともと30年前の新潟県は大学

【#10】C:燕三条の地域ブランド

さて、前回は燕三条の産業クラスターのBtoBビジネス・BtoCビジネスの分類と、両者に影響を及ぼす地域の取り組みを紹介いたしました。 今回は燕三条において育まれている地域としてのブランドについて、その成立ちと、ブランドをめぐる地域としての改革の経緯について掘り下げていきたいと思います。 ↓前回記事はこちら 燕三条ブランドとは?燕三条ブランドの立ち上げ前は? 今では一般的にかなり定着した「燕三条」という名称の地域ブランドですが、実は歴史はそんなに古くはなく、平成20年(2

【#9】B:BtoBとBtoC-両者をつなげる燕三条の取り組みとは

前回までの記事では燕三条の地域エコシステムについての深堀を行ってきました。 今回の記事では、燕三条という金属加工産業の中にはBtoB(対企業向けビジネス)とBtoC(対一般消費者向けビジネス)が共存しています。その共存関係に影響を及ぼす燕三条の取り組みについてスポットライトを当ててみたいと思います。 BtoBとBtoCの分類について燕三条の全体の工業出荷額は約4,000億円であり、内訳としてはBtoBビジネスが約3,000億円、BtoCビジネスが約1,000億円という構成に

【#8】A:地域エコシステム-産学官連携や地域住民・移住者・観光客との関係性

前回記事#7では、燕三条の同業者連携のあり方について掘り下げていきましたが、今回はその同業者連携を支える社会関係資本について言及したいと思います。 ↓前回記事はコチラ 産学官連携に基づく情報交流・支援プラットフォーム燕三条には非常に多くの情報交流・支援プラットフォーム組織が存在します。どの組織も産学官の密接な連携に基づき運営が成り立っており、先に述べた同業者間連携を円滑に実施する上で人々や技術をつなげるプラットフォームとしての役割を果たしており、地域の社会関係資本を醸成し

【#7】A:地域エコシステム-燕三条の同業者間連携の変遷

新年あけましておめでとうございます。 2023年も皆様にとって良い年となることを、心から願っております。 本年もぜひ記事を楽しんでいただきますよう、よろしくお願いいたします。 さて少々間が空いてしまいましたが、前回記事#6では、 燕三条の地域の先天的要因から導き出された産業クラスターの成功要因の仮説 その仮説が現代においても成り立っているかどうかを検証する 独自のフレームワーク を論じてきました。 今回の記事では、検証フレームワークの一角をなす「地域エコシステム」に

【#6】燕三条の産業クラスターの成功要因の仮説と、検証フレームワークについて

前回までの記事では、燕三条の地域が持つ先天的要素(気候・地形・食・水運・洪水/治水・祭・統治史)が、燕三条の人々に気質にどのような影響を及ぼしたのか、その関係性を明らかにしてきました。 今回の記事では、その人々の気質が、今までの燕三条の産地型産業クラスターの成功要因とどのように結びついているのか、そして、それが現代そして未来においても持続的に適用できるのかを検証していきたいと思います。 燕三条の成功要因は何か?仮説①:忍耐強く危機を乗り越え、外からの学びを積極的に取り入れ

【#5】燕三条の気質・関係性

さて前回記事【#4】では、燕三条地域に元来より備わる気候・地形や それに伴う恩恵・災い、そして人々の営みの歴史など、燕三条地域のいわゆる「先天的要素」を丁寧に紐解いてきました。 今回はその先天的要素が、現代の燕三条の人々の「気質」や、燕市・三条市の「関係性」にどのような影響を及ぼしたかについて、迫っていきたいと思います。 先天的要素が現代の燕市・三条市の「気質」にもたらした影響について①燕市 急峻な山を下ってきた信濃川が越後平野にぶつかり、さらに河川流域が進行方向右側に

【#4】燕三条地域における先天的要素の紐解き(気候・地形・食・歴史など)

さて、燕三条は世界有数の金属加工産業集積地で、産地型産業クラスターとして持続的発展を果たしている地域であることは、前回までの記事で述べてきました。 前回記事はコチラ↓↓ 近代において世界的な金属加工産業クラスターとして注目されるようになった燕三条地域ですが、今回はこの燕三条という地域がどのような風土や気候に育まれ、どのような恩恵、災い、営み、歴史を経て現代に至るのか、その「先天的要素」を紐解いていきたいと思います。 産地型産業クラスターにおける先天的要素の紐解きの必要性さ

【#3】産地型産業クラスターとしての燕三条

前回の記事では、中小企業のサステナブル経営の難しさについてマクロな視点で論じてみました。今回はその続きで、「じゃあ中小企業のサステナブル経営を考えるにはどうしたらいいの!?」という問いに対する答えとして、燕三条地域に代表される「産地型産業クラスター」に着目していきたいと思います。 前回記事はコチラ↓ 産業クラスターとは?燕三条の金属加工産業を中心とした地域産業は、「産業クラスター」の一つとして定義されています。 「産業クラスター」とは、米国の経営学者マイケル・E・ポーター

【#2】中小企業のサステナブル経営の難しさ

日本の産業は中小企業が中心?今回はまず、マクロな視点で日本の産業を俯瞰することから始めてみたいと思います。 日本には、トヨタ自動車、パナソニック、ソニーなど、世界的にも有名なものづくりメーカーが多数存在しています。これらの企業が生み出す製品やサービスは世界中で販売され、多くの売上と利益、そして雇用を生んでいます。それでは日本の産業はこういった大企業が中心となって動いているのでしょうか? まず中小企業とは何か?大企業と中小企業の境界線は?その定義について確認してみましょう。実

【#1】ものづくりの町 燕三条とは

燕三条ってどんなところ? 「燕三条」という地域の名を聞いたことがあるでしょうか? もしかしたら、金属加工部品の調達に携わる方々や、地域工芸品に造詣が深い方々であれば一度は名前を聞いたことがあるかもしれません。 「燕三条」とは新潟県中越地方、いわゆる新潟県のほぼ中心の「県央地方」に存在する、金属加工産業の一大集積地のことを指します。 洋食器や刃物などの一般消費者向けの金属加工商品メーカーや、産業用途の金属部品メーカーなど、実に4000社を超える優れた技術を持つ中小企業が集まる