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~馬場の好敵手!名勝負の男たち~ vol.2

リングに叫び、拳を突き上げたあの日。今もこの胸に燃えさかる熱き炎のファイターたちをイラストとエッセイで綴るプロレス讃歌!


~馬場の好敵手!名勝負の男たち~ vol.2

全国のプロレスファンの皆様こんばんは。『週刊アイアンクロー』編集長のチャーシュー・タケです。お待たせしました! 今週は“鉄の爪”フリッツ・フォン・エリックです。

イラスト 志賀コージ

●最もシンプルで、最もドラマチックな殺人技! ~死ぬまで君を離さないぞ!~

獲物に絡みつくアナコンダのような、どこまでも不気味で、あくまでも冷徹で、いつまでも心に残る男。それがフリッツ・フォン・エリックでした。けたたましくわめいたり、必要以上のオーバーアクションとは無縁で、爬虫類のような眼でじわじわと襲いかかるそのスタイルは、日本のプロレスファンを震え上がらせました。彼の大きな背中に、インテリジェンスを兼ね備えた“孤高のヒットマン”の匂いを感じます。昭和のプロレス技の代名詞のひとつ「アイアンクロー」。リンゴを軽々と握りつぶす超人的握力をもって相手の顔面を鷲掴みする荒技です。昭和のプロレス小僧たちは、学校の休み時間ともなれば教室の後方でプロレスごっこに興じるのが常でした。エリックの表情を真似て、口をへの字にしながら、小さな手を目いっぱい広げて技をかけます。かたや、両手で必死にそれを阻止せんとするクラスメイト。あぁ、なんと平和な光景でしょう(笑)。さらには、この必殺技にはバリエーションがあり、顔面の他にも相手の腹部を掴んで絞り上げる「ストマッククロー」という技も恐れられました。まだまだ純真無垢だった当時の子供たちは、この「ストマッククロー」を長時間受け続けてしまうと、やがては内臓を根こそぎえぐり取られるのだと信じて疑いませんでした。だから、日本人レスラーがこの技の餌食になると、声を枯らして「逃げろ!逃げろ!」
の大騒ぎです。反側技でもないのに、これほどの恐怖心を抱かせる技もそうそう有りませんでした。まさにプロレス史に燦然と輝く「名必殺技」と言えるでしょう。だから、外人のオールタイムベストレスラーを選べと言われたら、迷わず言えます。“鉄の爪”フリッツ・フォン・エリックと。コスチュームは、黒のTシャツ、以上。技は、アイアンクロー、以上。
そうです、昭和のリングでは、その佇まいと、「必殺技」がひとつあれば、シリーズのエースとしてやっていけた時代でした。

◼️『プロレスダイアリー甦える鉄の爪』は毎週木曜日に更新します。

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