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米国5月新築住宅販売件数

5月の米国新築住宅販売件数は11%近くも急増しましたが、これは減少傾向にある一連の住宅販売件数の短期的な上昇に過ぎないかもしれません。
住宅ローンの借入コストの高騰と一般的な値ごろ感の欠如から、今後数ヶ月の間に取引件数は急激に減少し、供給が増加するため、住宅価格の伸びは急激に鈍化し、一部の地域では下落する可能性もあります。

米国で販売された新築一戸建て住宅

5月の新築住宅販売件数は予想を大きく上回り、前月比10.7%増、年率換算ベースで69.6万件に急増し、4月分も62.9万件に上方修正されました。先週のフォーキャストで説明したとおり、アップサイドサプライズを事前に想定していました。
新築住宅販売件数の予想を大幅に上回ったのは、今月初めに報告された一戸建て住宅の完成件数が増加したことに依り、新築住宅の在庫の大部分は建設中の住宅で、長引くサプライチェーンの問題を反映しています。
住宅がいつ完成するかわからなければ、住宅ローンを確保することも難しいため、完成までの時間が不透明なことが住宅販売の重荷になっていました。サプライチェーンが改善され、建築業者が買い手のいる住宅をある程度柔軟に完成させられるようになったため、一戸建て住宅の完成と新築住宅販売の関係が緊密になりつつあります。

5月の新築住宅販売件数が驚くほど好調であったことは、今年の新築住宅販売の最後のピークになるのではないかと想定されます。
この販売急増は、住宅ローン金利がさらに上昇する前に固定化しようとする住宅購入者の駆け込み需要を反映したものと思われます。このような需要の結果、販売が前倒しされた模様です。
住宅メーカーの報告によると、その後、販売は大幅に鈍化し、6月のNAHB/ウェルズ・ファーゴ住宅市場指数では、購入希望者のトラフィックが48に低下し、2020年6月以来初めて重要な50ブレークイーブンのレベルを下回ったことになります。
これは、6月に購入希望者の問合せ数が増加するよりも減少するビルダーの方が多かったことを意味し、しかも、この調査は6月上旬を対象としており、ここ数週間で問合せはさらに大幅に減速している模様です。

NAHB/ウェルズ・ファーゴ住宅市場指数
新築住宅販売件数と購入希望者問い合わせ

さらに、ミシガン大学の消費者センチメント調査では、「今は家を買うのに良い時期だ」と感じている消費者の割合が過去最低であることが指摘されています。
これらの要因から、今年の新築住宅販売戸数は約12%減少すると見ており、その場合、年間の新築住宅販売戸数は約68万戸となる見込みです。

住宅購入マインドと新築住宅販売件数

5月の新築住宅販売件数の増加は、南部と西部に集中しました。
南部では12.8%増の41万3千戸ペース、西部では39.3%増の20万2千戸ペースとなった一方で、北東部では51.1%減、中西部では18.3%減となりました。
南部と西部は、この月の全米住宅販売数の88.1%を占めており、このうち、テキサス、フロリダ、アリゾナなど南東部や山西部が好調です。これらの地域の購入者の多くは、カリフォルニアや北東部から最近やってきた人たちで、彼らは高い値段で持家を売り、かなりの購買力を持ってこれらの市場にたどり着いています。このような価格競争は今後も続くと予想されますが、雇用の増加が鈍化するにつれ、その勢いは弱まるでしょう。

北東部と中西部での新築住宅販売の落ち込みは、これらの市場で住宅販売に時間がかかっていることを示す他のデータとも一致しています。また、購入希望価格の引き下げを行う住宅所有者の割合が急増しているとの事例も報告されています。
値下げは人口流出が激しい地域に限ったことではなく、フェニックス、オースチン、ラスベガスなど、かつて最もホットな市場であった地域でも大きな勢いの変化が起きているようです。
住宅建設業者も値下げに踏み切っており、歴史的に営業利益率が高く、最近の木材価格の下落もあって、多くの住宅建設業者が値下げに踏み切れる状況にあります。

新築住宅販売価格

年内にはさらに値引きが進むと思われます。
現在の販売ペースでは、販売可能な新築住宅の供給は7.7ヶ月となっており、この数字は前月より若干減少していますが、新築住宅の在庫は増加傾向にあります。

新築分譲住宅の在庫状況

5月末の新築住宅販売可能戸数は前月比1.6%増の44万4,000戸となりました。その増加の大部分は未着工の住宅で、6.5%増の11万5千戸となり、完成済み住宅在庫は5.7%増の3万7千戸で、これはまだ歴史的に低い数字です。建設中の住宅在庫は5月にやや減少し、0.7%減の29万2,000戸となりました。

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