シャレたもんだけ観やがって。-ペンダントの景色

寒い風なんか関係ねえと言ったように、

錆びついた匂いと共に、

鼻の中に古びたくだらねえ跡がゆっくりと残り、消えていく。

お前の観た未来がこんなに崩れ切ったガラクタの中にあるとしたら、

なんとあっさりしたもんだっただろうか。

空に映るオムレツの様な半月のような雲が、

過去の会話を掘り起こす。

「先輩っ!!わたし、遺跡とか宝石とかロマンがみえるモノがすきなんです。だから、仕事が終わったらわたしと、旅に、出ませんか??」

そう言っていた蒼い眼のヤツは、

二時間後の戦闘で静かに眠る事になったわけだ。

壁にしていたデコボコの岩に、

身を預ける様にして眠っていたヤツは、

胸ポケットに中くらいのロケットペンダントを入れていた。

ロケットの表側の外観は狼の横顔、裏側には綺麗な中髪の女性の横顔。

このロケットペンダントは、市販されているモノではない。

表側の外観は、この世界にまつわる銀神狼、フェンリルを形にしたモノ。

これはよく売られているものではあるが、

裏側に女性の表情が彫金されているモノなど、見たこともなかった。

カチリという音を響かせて、ペンダントのフタが開く。

アクアマリンのような濃い水の色に揺らめきながら、そびえたつ白い塔。

ああ、もしかしてここは。

お前の生まれ故郷というわけか。

後輩に親はなく、孤児院で成長して、

赤ん坊のころから傍にあったというロケットを、

お守りのように持っていたと。

後輩と寝食を共にする前、

同僚から聞いた話は、

今になって俺の中に響いたような気がした。


生ぬるい風が俺を通り過ぎて先へ進む。


神が地上からいなくなって相当数の年月が経った。

それでも今を生きている俺たちにでさえ、

神の血脈は受け継がれていて、

俺に戦神の血が流れているように。

後輩にはフェンリルの血が流れていたのかもしれない。

後輩の身体から生の熱量が去って行ったのを確認した後、

俺は埋葬をしようと一番見晴らしのいい場所探して、

頑丈な岩が詰み上がった丘のようになっている場所に静かに置いた後、

いくつか語り掛けて後輩の方を向いた時、後輩の姿は其処にはなかった。


カラカラに乾いた大地と風の下にあったのは、

大事にしていたあのロケットペンダントだけだったんだ。

俺の任務は、荒廃した世界でも人が暮らせる場所をみつけて、

敵に対して有効な手段で対処をすること。

そして、仲間を守ること。

なら、何処かにいった後輩を探す事も、

俺の任務なのは間違いない。


そうして俺は、一人寂しく人探しの旅に出た。











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