見出し画像

あまり語られていない戦争における日豪の関わりと僕たちが進むべき未来

 4月25日はアンザックデー(ANZAC Day)、オーストラリアやニュージーランド等の祝日。

 元々は、第一次世界大戦で勇敢に戦ったオーストラリア・ニュージーランド軍団(ANZAC)の兵士たちを追悼するものだったが、今ではその後の戦争も含めた、兵士、遺族、その他関係者の為の式典などが行われている。オーストラリアでは、アンザックデーが近づくと連日かなりのヘビーローテーションで戦争についてのテレビ番組が放送されている。どのチャンネルに変えても戦争の事しかやっていなくて、否が応でも戦争について考えざるを得ない。


 僕は中学を卒業してすぐにオーストラリアに留学をした。最初のアンザックデーは留学して数週間しか経っておらず、テレビで何を言っているか全く聞き取れなかったので、おそらく戦争記念日的なものだという認識でしかなかった。2年目のアンザックデーは、ある程度英語が聞き取れるようになっていたので、テレビから聞こえてくる日本軍がオーストラリアを攻撃したという言葉に耳を疑った。そんなことは学校では教わらなかったから。


 ホストマザーにその事を尋ねると、彼女は少し言いにくそうに、日本はオーストラリア本土に攻撃をした唯一の軍で、それによって多くのオーストラリア人が亡くなったと教えてくれた。僕はこの時に歴史というものは、それを語る国の立場によって変わるモノだと学んだ。


 僕が通っていたオーストラリアの高校では、毎月一度月曜日の午後はソーシャルサービスという社会貢献のための時間があり、僕はオーストラリア人の友達とペアになって一人暮らしのお年寄りの家を訪問して、掃除、芝刈り、食器洗い等、お年寄りの生活を助ける活動をしていた。

 ある日、オーストラリア人のおばあさんの家に行ってサービスを終えた帰り、おばあさんから「あなたは日本人かい?」と話しかけられた。


「はい、僕は日本人です」

「そう。大好きだった私の伯父さんは戦争で日本軍に殺されたの」


僕は何も言えずその場に立ち尽くした。


「あなたは何も悪くない。今日も一生懸命お手伝いしてくれて感謝しているわ。私は日本人のことも恨んじゃいない。悪いのは戦争だよ。でもね、これだけはあなたの子供や孫たちに伝えて欲しい。戦争は絶対にいけないことだと。あなたは世界中の人たちと手を取り合って仲良くしなければいけない」


 戦争の解釈は国によって違うし、実際に家族や知り合いが被害を受けたかどうか等、様々な要素で個人差がかなりあると思う。それについては何も言うつもりはない。ただ、どういう感情を持つにしろ、それは自分で責任を持って決めて欲しい。テレビやネットで得た一方向からの情報で簡単にある国や人を嫌わないで欲しい。嫌う前によく調べて学んで考えて、その上で自分の価値観のラインを引いて欲しい。


 このオーストラリア人のおばあさんと会ったのは25年前。おそらく彼女はもうこの世にはいない。でも彼女が僕に教えてくれた、日本人に伯父が殺されたからと言って日本を憎むのではなく戦争を憎むという考え方、『戦争は絶対にいけないこと、あなたは世界中の人たちと手を取り合って生きていかなければならない』というメッセージは僕の中で生きていて、僕はその思いを胸に世界中の人たちと交流を続けている。


 英語を勉強している人の多くはコミュニケーションツールとして英語を学んでいると思う。外国人と交流するという事は、その関係が深くなればなるほど、こういう話もする事になるのを知っておいて欲しい。そして日本人として恥ずかしくないように、最低限自分の国の事は知っておいて欲しいし、自分なりの戦争観を持っていて欲しい。


 世界中の人たちが手を取り合い、互いを尊重して仲良く平和に暮らせる日々が来ますように。

Thank you for reading^^ 気に入ってもらえたらSNS等でシェアしていただけると嬉しいです♬ これからも英語教育に限らず日本の子供達が楽しく日々過ごして世界に羽ばたける環境づくりに全力で取り組んでいきますので、応援よろしくお願いしますm(__)m