ゴールデン街

今日も飲み会が終わり、
1人家路を辿る。

新宿駅に降り立ってから、
過ぎ去った丸ノ内線の終電をあと一歩で見送り、
歩みだけで家路をなぞる。

区役所前を通り過ぎたあたりから、
徐々に体重が左足へかたむき、
誘われるように、あの鳥居にも見える、
ネオンの囁くゲートを潜る。

行きつけの小料理屋は閉まっていて、
ふらふらと路地を迷う。

時に欧米人が話しかけて来て、
ノーチャージがどーのと喚く。

ふざけんじゃねぇ。
一杯だけで3時間も居座るくせに。

マダムは眉間にしわを寄せ、
マスターは困り気で頭を掻いてる。

ここはゴールデン街。
静かに憩う場所。
嗚呼、ここはゴールデン街。
過去から学ぶ場所。

また1人、ポツリと、扉が開いて、
所在なさげに、店内を覗き込む。

マダムはニコリと、
微笑んで手を招き、
「いつぶりかしらね」と
いじらしく問いかける。

隣では弁護士が、
過去の判例をのたまわってる。
誰を救えたか知らねぇが、声だけは昂ぶってる。

僕は僕とて、ひとまわり年上の
先輩から、「子供と飲む酒は美味いぞ」と訓示をいただき、
手に握った2000円を手渡し、
颯爽と家路を辿る。

ここはゴールデン街。
誰もが赦された場所。
嗚呼、ゴールデン街。
明日を教えてくれる場所。

子供の寝顔を見て、
20年後にでも、
一緒に飲んでくれたら幸せかもな
そんなことを考えながら、
床に着く。



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