誰かに憧れられるようにはなれないけれど

私はきっと誰かに憧れられるような人間にはなれない
可愛くもないし、可愛くなろうともしない
特技もない
空気も読めない
突然三島由紀夫とか平野啓一郎とか、観念的な話を始める
オクタヘドラルがどうだとか、結晶場分裂の話も勝手に始める
ハイペースで酒を飲んで深酒しては、そんな共有できる相手がいないことを話し出す
友人以外だと、大抵相手は困惑する

私は人と話すのがものすごくニガテだ

拙いものだけれど、いつも自分なりの論理を構成してから話そうとする
納得してからじゃないと話し出しにくい
でも、構成したものは話してれば直ぐに忘れる
だから、結果的にはなんにもならない
ただ、自分の中で話し始める許可が下りたという過去の記憶だけが、その目視しきれぬ残像だけが、私のよりどころとなる


私は都会の綺麗なオフィスで働くような人にはなれない
それを目指してもない
文系の大卒の就活をする人の多くは、それに憧れるのだろう
私も、一片もそれに対する憧れがないとは言わない

でも、きっとそれは私には合わない
私には「カッコいい」という言葉は似つかわしくない
私は誰の手にも届くところに居たい
多少のオタク気質を披露した結果として周囲が私と関係を持つのを躊躇うことはあるだろうけれど、誰にも身近な存在でありたい
簡単に目指すことができ、簡単に踏み越えられると思わせられる人でありたい
その先を見、そしてそれを信じられる子どもが育つための養分になりたい
それには綺麗なオフィスも高い給料も要らない
ほんの少しだけ、子どもが持つ価値基準の物差にった秀逸があればいい
料簡りょうけんを映した青年期の見開き壱ページの片側の下地になれれば、それは私にとって大変名誉なことなのであろう

私には信念がある
幼少より培われたその田吾作根性が主成分である信念の添え木は、おそらくは他人より幾分丈夫だという自負もある
充分にそれは乾燥させてこられたものだ
維管束の水分はすっかり失くなって、容易には腐敗せぬ材木である
私は私を見失わない
かと謂って、過去の愚鈍な己に特権を与えない
過去は過去だ
しかし私はそうは言わせぬほど、過去を鮮明なものにしたい
藁の家ではなく、サグラダファミリアの建造を志していたい
それには言葉の力が必要なんだ
何を読むかにしたる拘りはないが、読書は私の筋繊維を超回復させる


綺麗じゃなくていい
幾許いくばくかの憧れだけでいい
それこそ私の大いなる名誉だ
いつか教え子が華開いたときでも、いや、その過程においても、意識されぬほどの見えない大きな力を授けることができればな

なんて、そんなことをおもうそろそろ社会人なのでした



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