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祖母

生きていく上で少々のパンクさが必要だと以前noteに記したことがあるのですが、過剰なパンクさというのは人付き合いを喪失させてしまいます。おれの周囲で最もパンクなのは父方の祖母なのですが、己のパンクさゆえ彼女は親戚のほとんど全員から縁を切られています。ここで言うパンクというのは独善性や無配慮と捉えてください。

70を超え夫である祖父を先に亡くし独り身となった祖母ですが、衰えることなくカラオケ、大正琴、卓球など様々なことに挑戦しているようです。2011年には音楽番組を見てUVERworldの"クオリア"という楽曲を聴いて「この曲ええなあ」とテープに録音し毎日のように聴いていました。当時中学生だったおれは祖母のこのエピソードを方々に話してあらゆる人からややウケを取ったのを覚えています。また頻繁に海外へ旅行しており、甘すぎるチョコレートをお土産に持ってきてくれます。一度オーストラリアへ同伴したことがあるのですが、その際パンクな祖母は全く英語を話すことなく全ての案内をおれに押し付けていました。旅費を負担してくれていたため笑顔でおう任せろと奔走したのですが、後半は気疲れで祖母に腹が立ちました。

このように感性が若く衰えを感じさせない元気な祖母ですが、とにかく人を思いやる気持ちが著しく欠如しています。祖父の葬式では涙一つ見せず、仏壇に手を合わせているところは見たことがありません。また、母方の祖母が亡くなった時、法事では気遣いを見せたかと思えば葬式を欠席し、母方の親戚をひどく動揺させました。このこともあって母は祖母のことを嫌っており親戚の集まりには欠席するようになりました。2人以上の人間がいれば関係が悪くなることもありますが、これほど非が一方に集中しているのも珍しいものです。また最近知ったのですが祖母は大分の実家にも縁を切られているようで、唯一連絡を取るのが弟である伯父のみらしいのです。因果のはっきりする孤独もあるのだなあと思わされます。

ここまで祖母の悪口を書いてきたわけですが、おれは祖母と一緒に暮らしていないので彼女を毛嫌いし縁を切っているわけでありません。そういう人もいるよなあと半分面白いと思って傍観しています。こうはなりたくないけれど、思うがままに振る舞うことができるのはある意味ですごい。

その血を引く父はその独善性と無配慮を遺伝しており、おそらく僕もまた受け継いでいるのでしょうが、あなたが僕の中の祖母の影に気付いたならばすぐに教えてください。

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