瞳に太陽を宿して Sun In Our Eyes/MØ
冷え込んで空気が澄んでいくとどうしても夏が恋しくなるので、海辺の日差しの香りの強いお気に入りの曲を和訳してみました。かなり意訳です。
Sun In Our Eyes / MØ
日差しで頭皮が焼けていくのを感じる
今、ベッドから漂うのは夏の匂い
砂浜に足跡を付けて歩いたあの夏には、私たち
お酒を盗んで飲んで、これからの話をしてたよね
あなたが何マイルも先、はるか遠くに見える気がすることがあるの
だけどあなたが去っていくことはわかってる
それでも私は再びあなたの手中に戻る理由と方法を探してしまう
あなたは私をふらつかせる、だめにする、だから
私の名前をどうか忘れ去って
そしてずっと高いところまでただあの波に乗って行こう
瞳に太陽を宿したままで
そう、空から落っこちるまでただあの雲に乗って行こう
もうあの夜を思って泣かない
あの夜を思って
あの夜を思って
そしてずっと高いところまでただあの波に乗って行こう
瞳に太陽を宿したままで
あなたの優しさには気を付けろってみんなに言われてた
だから用心してた だけど結局はその優しさのために好きになったの
恋は盲目なんていうけど
そう、それなら一生盲目でいるつもり
そしてずっと高いところまでただあの波に乗って行こう
瞳に太陽を宿したままで
そう、空から落っこちるまでただあの雲に乗って行こう
もうあの夜を思って泣かない
あの夜を思って
あの夜を思って
そしてずっと高いところまでただあの波に乗って行こう
瞳に太陽を宿したままで
夏!!!夏~~~!!!!!
まず最初に現在と過去の夏の対比から始まるのがいいですよね。
一人で日差しの降り注ぐ窓際のベッドに寝転がりながら二人でいた過去の夏を思い出してる感じ。ここで出てくるお酒(liquor)はワインやビールなどの醸造酒(alcohol)ではなくウイスキーなどの蒸留酒を指す言葉らしい。度数の高いお酒で、クラっときてた夏。これからの計画を立てていたと過去形で知らされると、断絶された未来に思いが寄せられて切なくなる。
かつて一緒にいた人とはもう会えない(会わない)状況だと思って、はるか先にあなたの顔が見えうるみたいなcanのニュアンスで取りました。このあたりで感じたのが、“あなた”の支配的な立場、あるいは“私”の被支配的な願望。あなたの腕の中に戻りたいではなく、あなたの手に戻りたい。それが正当化される理由を犬みたいに探している。I'm a dog searching forは慣用表現だったりするのかな。私の名前を忘れてと願うのも名前による支配のイメージ(千と千尋の神隠しみたいな)があるからか、支配からの脱却を望んでいるように思える。
そしてサビですが、ここで気になったのが主語がweなこと。ここまで登場していたのは二人だけど、ここでのweには“あなた”は含まれていないと思いました。きっとここで“私”と日常を凌駕するのは、同じく誰か・何かから解放されようとする人たちで、私たち自身。太陽は他の誰でもなく私たち自身の目に宿らせるのだとエンパワメントされている気持ちになる。
しかしこの後、このまま盲目でいいなんて真逆に思えることを歌うから分からなくなりました。これは反対されながらも好きになったあの時の気持ちなのか、それとも独立したいと思っていても時々はこんな気持ちになっちゃうよねってことなのか。
とにかくこの曲から感じるのは独立と再生のイメージ。顔を上げて光を見ようとするとき私たちの各人の目には必ず太陽は宿っていて、それは誰にも阻害されないこと。一つの景色・匂い・音から連なって思い出されていく様々に一度区切りをつけて沖へと漕ぎ出すその時は一人でも、その目に太陽があることは似た境遇にいる全くの他人との共通点で、そのことによって他人同士お互いに慰められることがある。一人で生きていく夏の力強さと知らないだれかとの緩やかな連帯を感じられる、大好きな歌でした。MVもすごくいいので見てください!いずれ来る遠い夏を思って、おやすみなさい!
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