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「きみだったらどうしたらいいと思う?」 ~相談する、される関係性が生み出すコミュニケーションのチカラ

はじめまして。
TCS×Businessに所属しているTCS認定コーチの水野と申します。
私は、大阪の企業で企画等の仕事をしながら、休日等の空いた時間でコーチとしての活動、コーチングの普及活動を行っています。

コーチになったきっかけは、社内のコミュニケーションに悩んでいた20代にさかのぼります。

この記事では、「出来ません」が言えず、一人で抱えてしまいがちだった私が、「相談する」ことの大切さに気づいてから、職場の仲間とのコミュニケーションが少しずつ変わり、仕事がしやすくなった経験をお伝えしたいと思います。

中堅社員として働いていた20代のある日、勤務先の大手金融機関の合併が発表されました。ライバル会社同士の合併は、どの業界でも大変だと思うのですが、それぞれに全く違うシステムを使っていたため、同じ種類の保険ひとつでも、全く異なるシステム、異なる事務処理方法で、それらの統合など合併にいたるまでには、難しいことがたくさんありました。

また、スムーズに仕事が出来るようにとのことで、合併1年前から人材交流も始まりましたが、そこで見えたのは、外資系の会社と合併したのかと思うほどの「社風の違い」でした。「システムや事務処理の違い」以上に、「社風の違い」に苦しめられることとなりました。

1.「きみだったらどうしたらいいと思う?」意見を求められた新人時代

当時、私が勤務していたA社は、「社員はわんぱくがいい」という方針のおおらかな社長のもと、「やった方がいいことは、どんどん新人でも発言しよう」がモットー。

2年目社員の時に部長から会議室に呼ばれ、「社内のこういう状況、僕はもっと良くしていきたいけど、君だったら、どうしたらより良くなると思う?」と聞かれたことがあります。「僕には見えていないけれど、2年目のあなただから見えることがある。思ったまま聞かせて欲しい。」安心して話せる空気に、意気揚々と、拙い意見をお伝えした私ですが、真剣に聞いてくださった部長の表情、会議室の風景が今も鮮明に浮かびます。

「こんなにエライ人が私に相談してくれる」ことが、さらに会社が好きになり、頑張るエネルギーになりました。

2.合併後は「上司に意見や反論するのはNG」な社風を知る

会社合併を半年後に控えたある日、相手会社のB社の社員が、課長に「この方がいいのでは・・」と意見を伝えている私たちA社の社員の姿を見て、倒れそうになったそうです。上長に反論することは絶対NGのB社。その後、この「社風の違い」に悩まされることになることは、この時は知る由はありません。

クライアント様にもご迷惑をおかけしないよう、A社系の課、B社系の課に分かれてスタートしたのですが、私の配属された部署はB社系の課。ここから、私の人生で1番辛かったブルーな会社生活がスタートしました。

3.合併後知った「電話取りは女性の仕事」。今までの当たり前と違う違和感に戸惑う毎日

新会社生活がスタート。12名のチームのうち、同じA社出身者は4名。
完全なるB社系の課で、課長からトップ3名はB社系の社員ですし、クライアントもB社系。

まもなく、さまざまな違いにチーム全体が戸惑うこととなります。一番驚いたのは、社内の男性は電話を一切取らないこと。1日中鳴りやまない電話を肩で挟みながら、業務に追われ、定時が21時の感覚の毎日。同じA社出身の男性2名は、業務もやりつつ電話も取られていたので、女性陣からは「こんなにかっこいい男性は見たことがない」と喜んでいたけれど、そんな小さな違いすらも、「男性も協力的で嬉しい」という人と、「今まで女性社員がするものだった電話取りをなぜ男性がやるんだ」という人。

「今までの当たり前と違う」日々が、みんなの違和感になり、忙しさも手伝い、その違和感は日ごとにみんなの中で大きくなっていったのです。

4.前例を破って、上司に意見をしてみたけれど、同僚が相次いで退職する

連日の深夜残業により、緊急入院する社員が3か月で2名。お客様から頂いた契約の処理にも支障をきたすようになり、「手の空いてる男性が、電話対応など短時間でもフォローできませんか。オンラインが止まる20時までに処理が出来ないと、今月の数字が反映しません。お客様に証券をお届けするのも遅くなってしまいます。」と課長に直談判しました。上司に意見をしないB社出身の人はびっくりしていました。

しかし、時間的に余裕がある人ということで課長二人が電話当番にトライされたものの、電話応対をしてこなかった課長たちにとって、事務が煩雑な金融機関の電話応対はハードルが高く、1週間が終わる頃、「僕らは電話に出ても何もわからないし、やっても無理やわ。」あっけなく終了。

そんな日々に疲弊して半年で2名も同僚が退職。なかでも、バリキャリ派の先輩が志半ばで退職することになった時は、一緒に泣きました。

それでも、その頃は、まだ課長に「相談する」ことはなく、自分が何とか頑張らなければと思っていました。

5.懲りずに上司に意見をしてしまったことから亀裂が入る

ある日、入社1か月目の新人さんのミスが発覚し、課長が感情任せに怒ってるなと感じた私は、「後は私がフォローしますので彼女を叱るのはその程度にしていただけませんか」と間に入ったのですが、「これくらいチャチャっと出来るようになってくれないと、だめなんだよ。」と返ってきました。

日頃のコミュニケーションエラーがたまっていたこともあり、こともあろうか、私は、「課長もうちの電話応対が難しいとおっしゃっていましたし、これからっていう新人に、何もそこまで言わなくても。」と切り返してしまいました。

その後、みんなの前で恐ろしく叱られたのは言うまでもありません。「上長に反論はNGの会社」ということを、忘れていました。苦い思い出です。

6.「新人指導」を通じて、上司との関係性も修復へ

途中入社の新人さんには、覚えることが煩雑かつ多すぎて、ついていくのが非常に厳しい会社で、19時以降、他の部署の新人さんが「どうしたら、この会社で頑張れますか」と隠れて相談にくることも多かったのを思い出します。

しばらくは、ぎくしゃくした空気が続いた課長との仲ですが、私が、上司に反論することも厭わないほど力を注いでいた「新人指導の在り方」は意外と見ていてくれたようです。

必死で育てあげたこともあり、担当していた方は派遣社員から3か月で正社員登用へ。最終的には、「この支店を見ても、うちの課は君が新人指導、よくやってくれてる。」と言われました。

「自分たちのチームを早く軌道に乗せるためにも、せっかく入社してくれた新人さんのためにも、新人指導の時間は大切にしたい」という思いは、見ていてくれたのかもしれませんね。

新人の育成が進む中で、課長との会話も変わり始めたのかもしれません。「この課を良くしたい」という思いは伝わったかもしれませんが、最後まで「相談する」ことは上手にできなかった気がします。当時は、筆頭社員とはいえ、まだまだ見えていないことばかりでした。

7.「相談する」ことの大切さを知る

それから、何年もの月日がたち、コーチングに出逢った私が、一番衝撃を受けたことが、「相談すること」の大切さでした。「あなたを信頼していますよ」と最大限伝えられるメッセージになるということを、トラストコーチングを受けて、知ることとなります。

その時、蘇ったのが「上司や環境に不平ばかり心にためて、相談できなかった自分」。

当時の私は、「課長は、私たちがどんな思いでこの課を1日も早く正常モードにしていかねばならないと努力しているかわかっていない。」ただ、それだけでした。

課長なのに、なぜチーム全体を見られないのかとの怒りに燃えていた私には、課長に「相談する」という発想がひとつもありませんでした。

「課長は、部下の方を見ていない。支店長の方しか見ていないし、余裕がないし、相談してもダメな人。」だと決めつけて思いこんでいたので、同僚同士で話すことはあれど、同僚の誰もが課長に「相談」をしなかったのです。

新人時代に、部長に相談されて頑張れた私は、そこに隠された部長が伝えてくれている大きなメッセージに気づけていなかったなとも思いました。「君を信頼しているよ。」という大事なメッセージ。

課長を孤立させていたのは、わたしたちかもしれない。

現在は、以前に比べて、上司にも後輩にも「相談する」・「相談される」自分でいることが出来るようになったため、自分ひとりで抱えることも少なくなりました。

以前は距離が遠いと思っていたタイプの同僚も多かったですが、「相談できる」私になってからは、苦手なタイプの人は不思議と減っていたのです。

はじめに書いた「あなただったら、どうしたらいいと思う?」
そんなフラットな声かけが普段から出来るチームだったとしたら?

その当時、コーチングに出逢っていて、もっと違うコミュニケーションがとれる関係性を上司や同僚と築くことが出来ていたとしたら、大切な同僚が退職するのを涙で見送ることはなかったかもしれないし、もっと早く、課の体制を立て直せたと思っています。

「あなたは、どうしたらいいと思う?」大切な上司や同僚と、距離をグッと縮めてくれる魔法のひとつは「相談すること」。わたしが、トラストコーチングに出逢って知った大切にしていることのひとつです。

この記事を書いた人

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水野 夏(みずの なつ)

TCS認定コーチ、MCS認定マザーズティーチャー。
大学卒業後、金融機関での役員秘書や営業アシスタントを経験後、人材サービス会社においてキャリアアドバイザーに従事。キャリア形成の中で自己肯定感が低くなった求職者との面談の中で、対話の時間を大切にしたところ、好転していかれるのを感じたことが、後にコーチングと出逢うきっかけとなる。
現在は、会社員とコーチのパラレルキャリアの毎日で、より多くの方が、自分らしいキャリア形成、ライフスタイルを目指して、自走していけるようなサポートをコーチングを通して行っている。


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