【Singer-002B】夢の続き〜あなたがいるから〜photo by シロクマ センセイ
写真を提供してくださったシロクマ センセイのリンクはこちらから
あたりまえと 思って生きてた あなたと 過ごす日々を
待つことしか 出来ない私は これから どうすればいいの
この物語は「【Singer-002A】続・言葉ひとつ心ひとつ」から続くお話。
あの日から僕はずっと、祈り続けていた。彼女を救えなかった罪を償うために。
そんなある日、全く知らない女性から、僕のPCにメールが届いた。誰だろう?とクリックして開けてみると、
「ひろぼさんへ はじめまして、Tといいます。突然のメール失礼致します。私はつい先日まで、自殺しようとしていました。自宅のマンションの屋上から、何度も飛び降りようと毎日考えていました。」
と書いてあった。僕は手が震えながら、メールの続きをスクロールした。
「実は私には十数年間、子供の頃から付き合ってきた、幼なじみの彼氏がいました。そして彼と”同じ夢”を叶えるために、上京してきました。東京へ出てきて、彼は更に、本格的に”夢”に近づくために単身渡米、その後、渡米先で不慮の事故で亡くなりました。」
僕の目はパソコンのモニターに釘付けになっている。
「彼の帰りを待つ私は、彼が事故で亡くなった事実を、彼のご両親から連絡を通じて知りました。彼が亡くなって、すでに一ヶ月後のことでした。私はショックで夜も眠れなくなり、彼と共に叶えようと頑張ってきた”夢”に対し、何もすることが出来なくなっていました。」
あれから ひと月がたつけど 何もかも手につかない
あなたの背中 押してた この両手 大空に高く広げた
「そんなとき、アルバイト先の先輩から、ひろぼさんのCDをプレゼントでいただき、その中に入っている曲で『そのままで』という曲を聴いて、自殺するのを思いとどまりました。」
「実は彼が事故で亡くなった日ぐらいに、私、変な”夢”を見たんです。まだ彼が亡くなったということを知らない時。今思えばあれは”虫の知らせ”だったのかもしれません。その”夢”の中で、
彼は私の前に立っていて、微笑みながら何か私に話しかけているんです。
でも声は私には届いていない。
何か二人の間にガラスの壁みたいなのがあって、彼の方に行けないんです。
彼に触れることも出来ず、私は悲しくなって泣き出してしまいました。
そしたら彼が凄く悲しそうな眼差しで私を見てるんです。
私、その彼の悲しい顔を見たくなくて、一生懸命に涙を拭って微笑み返しました。
そしたら、彼が、”うんうん”ってニッコリ頷いてまた話し始めました。
でもまた聞こえない。
なんて言ってるの?って、聞き返すうちに、彼が突然、後ろへ振り向いて、どんどん向こうの方へ、歩いて行ってしまうんです。
何度も何度も、彼の名前を呼ぶんだけど、彼は一度も振り返らない。
彼のこと必死で呼び止めようと、名前を叫んでいるうちに目が覚めました。」
夢の中で 微笑み合っていた あなたと 私 二人
ずっと傍に いたような気がした まどろむ 私 一人
「今思えば、彼は最後に何か伝えようと、”私のもとへ来てくれたんだ”と思います。『そのままで』を聴いた時に、やっと分かったんです。彼があの時に”何を”伝えようとしてたのか。それは…」
「”おまえのそばにいられなくてごめんな。でも俺の代わりに”夢”を叶えて欲しいんだ、俺の分までさ。だってあの”夢”は俺とおまえとの『二人の夢』だから”って伝えたかったんだと思います。」
叶えよう 二人の夢 笑おう 泣けないから
見上げた 空の雲が あなたに見えた
「だからもう一度、彼との”夢”を叶えるために頑張ってみようと思います。ひろぼさん、本当にありがとうございました。」
忘れない 二人の日々 終わらない 夢の続き
進もう あの日のように あなたがいるから
僕はぼーっとしてしまい、しばらく動けなかった。その時突然、沈黙を破るかのようにドアをノックする音がした。
誰だろうとドアを開けると、向かいに住んでいる、いつも陽気で、芸人志望のJ君だった。そんな彼が、いつになく神妙な顔をしながら、
「実はさ、昨日バイト先のTさんに、君のCDを渡したんだよ。彼女ここ一ヶ月ぐらい凄く悲しそうな顔しててさ。心配だったんだけど、どうにか励ましたくて何か出来ないかなと思って、それで突然ひらめいて、君のCDを渡したんだ。」
と僕に言った。
僕は彼を部屋へ向かい入れ、彼女から届いたメールをそのまま、彼に読んでもらった。すると彼は、
「おお!すげえ!やったー!元気になってくれて良かったー!まじありがとね!」
と、ただでさえ細い目を、より細くして、両手で僕と握手してアフリカのどこかの民族のようにジャンプしながら喜んでいた(さすがに「ジャンボ!」とは言っていなかったが)。
僕はこの状況と、早すぎる展開、それに彼の物凄いハイテンションについていけず、彼と握手しても彼のように、一緒にジャンプして喜ぶことは出来なかった。
彼が帰ってから、一人僕は考えていた、
「まさかあの”償いの祈り”がこんな風に叶うことになるなんて」
と。
”どうやら宇宙はそういうルールになっているらしい”
(まぁお約束ですからね〜ひゃっひゃっby祖野真々出山に住む広母仙人)
そして、単純に不思議だった。『そのままで』という曲は【Mother-007】でもお伝えしたとおり、Tさんのような女性に書いた曲ではない。なのに、彼女はその曲を聴いて、それを”大切な彼からの最後のメッセージ”として聴いたのだ。まるであのM君とN君のように。
僕は【Singer-002A】の「あの子」が僕とTさんを巡り会わせてくれたような気がした。だとするならば…その瞬間、僕はある衝動にかられた。
「あの時に”あの子”に出来なかった事をTさんにしてあげたい」
ここから後半の文章と「夢の続き」の歌詞があります
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