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【Singer-002A】続・言葉ひとつ心ひとつ〜続・そのままで〜※投げ銭方式


言葉ひとつで 全てをなくした 笑い合った仲間や 護るべき人を


 これは「【Sing-000】言葉ひとつ心ひとつ」の最初の歌いだしの一行である。

 「【Mother-004】言葉ひとつ心ひとつ〜耐えて、耐えて、敢えて、前へ〜」では、僕が言葉ひとつで失くした「笑い合った仲間」のエピソードについて書かせていただいた。

そして今から書くのは、後半の「護るべき人」つまり、

「僕が護ることが出来なかった人」についての話である。


 確か、大学2年か3年生の時、中学の同窓であるM君N君二人と、中学卒業以来初めて、地元で会うことになった。

 彼らと会う数カ月前に、中学校の同窓会が行われたが、僕は行かなかった。というより行くことが出来なかった。

 小学校からいじめられっ子だった僕は、対人恐怖症になっていた。さらに高校の時の経験で集団恐怖症にもなっていた。それでも中学校の同窓生と何故か、急に会いたくなり、数少ない友達だった彼らと会うことになったのである。

 会ってもらいたかった理由は、自分の歌を聴いてもらいたかったからで、サプライズ好きな僕は、歌を歌うようになっているなんて、思ってもいない彼らを驚かしてやろうと、当時出来たてほやほやだった、「日陰のタネ」「そのままで」の歌詞カードを持って行き、車の中の後部座席から、彼らに歌を聴いてもらった。

「日陰のタネ」を歌い終わった後、

「凄いじゃん!いつから歌うようになったの??」

とM君。

物静かなN君もニヤニヤしながら、

「すげえな」

と呟いている。


僕は「でへへっ」と、サプライズ作戦の成功を感じながらほくそ笑んだ。

 ところが、調子に乗って「そのままで」を歌った後、

「・・・・・・・・」

何故か、二人とも黙ってしまったのである。

僕はしまったと思った。

”どこが間違っていたんだろうか”

僕が恐怖を感じ始めた次の瞬間、

「これ、あの子に聴かせてあげたかったな」

とM君がぽつり。

「そだな」

とN君がぽつり。

「あの子」とは中学生の時に、僕が大好きだった女の子のことである。ちなみに彼らは、僕がその子のことを大好きだったことは知らない。

僕はなぁ〜んだ、と少し得意げになり、

「そう言えばさ、あの子って最近元気してるの?」

と、さり気なく彼らに質問した。

そのあと、M君から告げられたのは、思ってもみなかった衝撃の事実だった。

「あの子…この前、自殺したんだよ」

「えっ」

僕は言葉を失い、そして一瞬固まってしまったのだった。


返事をするのがやっとの僕に、M君は彼女のいきさつを話してくれた。

「この前ほら、同窓会あったじゃん、あん時、彼女来ててさ…」


彼の話の内容は、

彼女は、この前の僕が行くことが出来なかった同窓会に参加していて、その時には、すでに心を病んでおり、久々会った旧友たちに苦しい、死にたい、と漏らしていた。だが、その時はみんな彼女に対し、どう接していいのか分からなかったようだ。

そして同窓会からひと月後、彼女は大学の授業中突然、窓から飛び降り、生命を絶った。

ということだった。

その後、僕は動揺を隠したまま、二人と久々の会話を楽しみながら過ごし、再会を約束して別れた。


 自宅に帰り、しばらく考えていた。あの時、僕は何故あんなにも、うろたえてしまったのだろう。もうその頃には僕には他の彼女が出来ており、あの子が突然この世からいなくなってしまったことに対して、自分でも不思議なほど悲しみを感じることが出来なかった。

”自分はそんなに冷たい人間になってしまったのだろうか”

いや違う、悲しみ以上に、ショックだったのだ。

「おまえの歌が彼女を救えたかもしれない」

という彼らの言葉に。

 彼らは、あの時、あの子に対して何もすることが出来ず、その事を彼らなりに引きずっていたのだろう。自分を責めてもいたのかもしれない。もちろん、彼らは僕を傷つけようとして言ったわけでもないし、罪や責任をなすりつけようとして言ったわけでもない。

あの時、何気なく僕の歌を聴いていた二人。

そして彼らがどうにもならず、しまい込んでしまった自責の念や、”あの子の死”についての思い、彼らのそういった感情を「そのままで」という歌が、溢れ出させてしまったのかもしれない。


 そもそも、僕があの子を好きになったきっかけは…

中学三年生のある日、あの子は二人の男子たちにからかわれていた。その男子たちから、

「なぁ〜おまえもそう思うだろ?」

と僕は突然、話を振られた。

とっさにあの子を庇いたかったのか、

「そんなことないとおもうよ」

と、僕はつい言ってしまったのだ。男子たちは面白くない顔をしたが、あの子の顔が突然明るくなり、微笑みながら僕を見ていたのを覚えている。

 その日から、あの子は良く僕に話しかけてくるようになり、掃除の時も、机を運んでいる時に、隣に並んで競争をしかけてくれたりした。そんな些細なやりとりが本当はとても嬉しかったのに…

 あの頃、自分に自信のなかった僕は、生まれて初めて感じる恥ずかしさと、周囲から、またいじめの標的になるのではという不安で、あの子を無視するようになっていった。

 ある時から、あの子は僕に声をかけなくなった。当然だろう、無視し続けたのだから。僕はなんとなく、ほっとした。これで良いのだと思おうとしてたのかもしれない。でもそうではなかった、隣のクラスの男の子に告白され、付き合いだしたのだった。

 僕は言いようのない感情を、どこにぶつけていいのかも分からず、只々、自分の胸にしまい込むことしか出来なかった。

”あの時、僕に少しの勇気があれば告白出来たのに”

僕に残ったのは、ただ”後悔”だけだった。


だが、そのことから、

”どうせ後悔するのなら、勇気を出して、伝えて後悔したほうがましだ”

という生き方を教えてもらった。

その経験が、C子に恐れずに告白を出来るまでの自分に変えていったのだ。


それなのに、またあの時と同じような気持ちに、打ちのめされることになるなんて。

”あの時、僕にもう少しの勇気があれば、同窓会に参加し、あの子に再会し、そのあと歌を彼女に聴いてもらえていたら、もしかしたら…”

また後悔するんだ。

これからもこうやって、引きずっていくんだ。

嫌だ。

嫌なんだよ…もうそういうの…

いやだああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!

「俺は、そんな後悔をしたくて歌い始めたんじゃねえんだよ!」

深い”後悔”は、激しい”怒り”に変わる。


沢山の冷たさ 沢山の後悔

そんなものが あなたを ひどく責めても

夢を消さないで たとえどんなに辛くても

闇に逃げないで たとえどんなに見え過ぎても

いつも素敵な人で みんなあなたを想ってるから

いつもそのままで 僕はあなたの味方だから


ふと「そのままで」の歌詞が頭に流れた。そして、気づいた、

”たとえ救える歌を創れたとしても、その歌を歌う俺に”勇気”がなければ、たった一人の人でさえ、救うことなんて出来るはずないじゃねえか”

と。

僕に一番足りないもの、それは”勇気”だ。

僕は深く”決意”した。

「もうあんな後悔は繰り返さない」

と。

その日から僕は、いつもあの子のことを祈るとき、

こう祈らずにはいられない。

「僕の歌を聴いて生命が救われる人に会わせてください」

と。

それが、”今を生きる僕”にとっての精一杯の償いだから。


そして…


まさか…


その祈りが、わずか数カ月後に叶うことにとになろうとは…つづく

今回また二度目の投げ銭方式にしてみます。

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