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精とは何か?

 東洋医学は身体の中に、精・気・血・津液という生理物質があるという考え方があります。

 精は生命力や生殖と関係する非常に重要な物質になります。

1.精とは

 精は生命力の根本の物質になります。生命力は生まれ、成長することにも強く関係するので、「生殖・成長」の根本です。

 身体の中には、気や血があり、精神や機能と関わる神というものがあるので、精は気・血・神との関わりが密接になり、臓腑や組織など身体の滋養にも関わります。

 滋養に関わるので、陰陽の考え方では、精は陰液(陰分)に分類されます。

2.精の分類

①先天の精

 先天の精は、両親から受け継いだものになります。人が生まれるのは、両親の精が合わさり、新しい生命の先天の精となります。腎に蓄えられ、成長や発育のもとになります。

②後天の精(水穀の精)

 後天の精は、飲食物(水穀:すいこく)を食べて消化・吸収することで得られるもので、脾胃によって後天的に生成されます。水穀から生成されるので、水穀の精とも言われます。

 後天の精は気・血に化生されたり、全身にも送られますが、先天の精である腎を補うものになります。

③腎精

 先天の精と後天の精が合わさったものです。先天の精が後天の精によって補われて充実すると、原気のもととなり、天癸(てんき)が生じます。

※天癸:生殖機能の成熟を促す物質で、現代医学の第二次性徴とも言える。

例えると両親から受け継いだ先天の精は種、後天の精は水や栄養で、後天の精があることで先天の精は腎精として充実していきます。先天の精が不足しているというのは生命力の種が少ない状態になります。

④臓腑の精

 臓腑の精は、各臓腑が機能していくための基本物質と言えるもので、後天の精が各臓腑に分配されていくことで、臓腑の精となります。

⑤生殖の精

 生殖の精は、腎精と大きな関係があり、先天の精が後天の精に補われることで、力を発揮することができます。男女の生殖の精が合わさることで新たな生命が誕生できます。

 精は誕生するという生命の成り立ちだけではなく、成長や発育という意味も入ってくるので、生殖の精や臓腑の精という名前もついていきます。

3.精の働き

 精は先天の精、後天の精という役割だけではなく他との関係性も考えていかないといけないので、生殖や成長だけではなく、より細かい内容もあります。

 東洋医学では、身体の中に気血津液や神などが存在しているので、精は気や血の生成に関わることで、気や血にも生命力が分けられていきます。精神と関わりやすい神の栄養にも関わっていきます。

4.精の病理

 精は生殖や生命力と関係していくものなので、不足をする「虚」は生じますが、滞りや余分な状態の「実」は生じません。

①精が不足する原因

 精が不足する原因は、元が少ない、補充されない、利用され過ぎてしまった状態になります。利用されすぎてしまった場合は、いろいろなパターンがあります。

 元が少ないのは、両親から受け継いだものが少ないということになります。

 補充されないというのは、栄養の摂取不足なので、食事が悪い状態や消化吸収に問題がある状態を考えていくことができます。

 利用され過ぎてしまったというのは、多産で生殖の精を多く使った場合、病気によって生命力を多く使った場合、嘔吐や下痢などで体内にある物質を大量に出してしまった場合、体内に熱がこもってしまったことで身体を潤し冷やす陰液である精が使われ過ぎてしまった場合があります。

5.精虚の症状

発育不良、不妊、耳鳴、難聴、健忘、早老、虚弱体質、易感冒(風邪をひきやすい)、経閉(無月経)、陽萎(ぼっきしょうがい)、性欲減退、腰膝酸軟(足腰のだるさ)、眩暈、頭髪の脱毛、虚労(倦怠感や無力感)

精虚の症状は先天の精が不足した症状、身体の滋養不足で生じる症状、生殖の滋養が低下した症状、気血への栄養不足から生じる症状などに分類することができます


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