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そばかす

「恋愛をしたことがない、そういう感情もない。 だけど楽しく生きていける―」 それが私だと思っていた。

私・蘇畑佳純(そばた・かすみ)、30歳。
チェリストになる夢を諦めて実家にもどってはや数年。 コールセンターで働きながら単調な毎日を過ごしている。
妹は結婚して妊娠中。 救急救命士の父は鬱気味で休職中。 バツ3の祖母は思ったことをなんでも口にして妹と口喧嘩が絶えない。 そして母は、私に恋人がいないことを嘆き、勝手にお見合いをセッティングする。
私は恋愛したいと言う気持ちが湧かない。 だからって寂しくないし、ひとりでも十分幸せだ。 でも、周りはそれを信じてくれない。
恋する気持ちは知らないけど、ひとりぼっちじゃない。 大変なこともあるけれど、きっと、ずっと、大丈夫。
進め、自分。

 こういう話を聞くと、「草食男子ってよく聞くけど、俺は絶食男子だな」というようなことを言っていた人を思い出す。全く恋愛に興味がないらしい。性欲も湧かないらしい。
 まあ、半分気持ちはわかる。ぼくには性欲はあるが、だからと言ってなくても困らない。人それぞれに様々な基準があるのだろう。
 映画でも恋愛や結婚に興味がないと言っていた人が、好きになったと気持ちが変わる。そういうこともあるだろう。し、そういうことがない人もいるだろう。
 でもそういった様々な人がいるということが分からない人もいる。
 分かった気になっているだけの人もいる。そしてそれは自分かもしれない。
 異性が好きじゃない。ということは同性が好き。なのか? そう決めつけるものでもない。

 一人でいることは全然苦痛じゃないけれど、それを理解してくれないことが苦痛だったりする。分からないのなら放っておいてくれたらいいのに、理解するフリをして自分の価値を押し付ける。そういうのが一番苦しい。
 何も言わない、何も言えないのも苦しい。

 何かを発しないと何も伝わらない。何も届かない。
 何かを発して、一人でも分かってくれる人がいると嬉しいものだ。自分だけじゃないと安心できる。
 映画でも最後、北村匠海がいいところを持っていったなぁ、という感じ。

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