「チームで参加したから『共通言語』が生まれた」学びから実践へ、サイバーエージェントのTCA活用法
日本のクリエイターの強化、並びにあらゆるビジネスパーソンのクリエイティビティ向上を目的とした教育プログラム「THE CREATIVE ACADEMY」(通称:TCA)。
この講座では、導入を希望される企業さま向けに、法人コースを設定しています。これまで3度にわたって同様の講座を開いてきた中で、広告業界に限らず幅広い業種から、60社以上の企業さまにご参加いただきました。
今回は、過去3度全てにおいて本講座にご参加いただいている株式会社サイバーエージェントさまに、インタビューを実施。お話をうかがうのは、インターネット広告事業本部の武井さまと鳥羽さまのお二人です。
TCAへの参加を決めた理由や、参加した社員の声、社内で学びを活性化させるための工夫などを教えていただきました。聞き手は、GOの勝田です。
学びの機会提供は、“福利厚生”でもある
——いつもTCAにご参加いただきありがとうございます。改めて、お二人のご担当領域と、TCAとの関わり方について教えてください。
武井 私はインターネット広告事業本部という広告代理店部門で人事をしています。中でもクリエイティブチームの人事を主に担当していて、担当役員と共にTCAを含む研修プログラムの設定や参加者選定も行っています。
鳥羽 私は武井と同じチームの中で、外部のクリエイターの方々とのネットワークを作りながら、社内人材の育成やブランディングなどに取り組んでいます。社外クリエイターの講演を設定することもあり、その一環でTCAへの参加についても第1回(TCA 2020)から携わっています。
——TCAへの参加を決めていただいた背景には、どのような理由があったのでしょうか?
武井 まず圧倒的に講師陣が豪華だと思いました。最初に鳥羽がTCAの話を持ってきてくれたとき、担当役員も講師を知って即決していました。
鳥羽 第1回では、古川裕也さん(当時電通、現古川裕也事務所)から始まって、最後のシークレットゲストが嶋浩一郎さん(博報堂ケトル)でしたもんね。そんなレジェンドの方から第一線で活躍されている若手の方までいらっしゃるような、講師の幅広さも魅力的でした。
武井 弊社は広告クリエイティブから派生したビジネスとして、タレントさんのYouTubeチャンネルの運用など、コンテンツ制作にも取り組んでいるんです。ですから、広告クリエイティブに加えて、第1回の佐渡島庸平さん(株式会社コルク)の講義など、コンテンツ側のお話も聞けるという点も新しくていいなと思いました。
——TCAに参加する社員は、どのように決めているのですか?
武井 毎回選定の基準は少しずつ変えていますが、基本的には若手だけでなくベテランも含めて、仕事で成果を出しているメンバーに学習機会を提供したいと思っています。
その理由はふたつあって。まず、学びの機会を提供することは、「クリエイターを育成する」という会社側の目的に加えて、社員にとっての“福利厚生“でもあると考えているからです。
もうひとつは弊社の育成における課題感からです。うちのクリエイティブメンバーは制作する際、テクニカルな部分に走ってしまいやすい傾向があると感じています。新しいメディアなどには知見がありますが、クリエイターとして社会を見ていく力、企画を考える根本の力には課題がありました。
うちはまだ歴史の浅い会社ですから、そういう点を身につける上では、TCAのような「外部クリエイターの方々に学ぶ機会」を作っていくことが重要だと思っています。だから、社内で活躍している人にこそ参加してもらって、さらに力をつけてもらえればと考えているんです。
講義を実践へ導く「社内ゼミ形式」
——実は、法人参加を検討される際に「TCAに参加しても、実際に社員がちゃんと受講しているかが分からない」と懸念される企業さまが多いんです。サイバーエージェントさんでは、TCAに参加する社員が講義を視聴しているかどうか、何らかの管理はされていましたか?
武井 各プログラム終了後のヒアリングは行いましたが、講義期間中の細かい視聴管理はしていません。でも、第2回(TCA2021 1st)が終わった時点での肌感覚として、リアルタイムでの視聴が少ないなと思っていて。人事の中で「もっと視聴率を上げたいよね」と話し合い、第3回(TCA2021 2nd)からは選抜方法を変えてみることにしました。
それまでは、各クリエイティブチームから数人ずつ、参加してもらう形だったのですが、第3回では同じチーム内からまとめて参加者を選んだんです。そして、講義が終わった後には、普段近しい仕事をしているチームメンバーで「共有会」を実施してもらいました。
——なるほど。そのような形式にしたことで、参加する社員に変化はありましたか?
武井 そうですね。まず講義の後に共有会があることで、リアルタイムで視聴する人や、複数回溜め込むことなくアーカイブ映像を視聴する人が増えたと思います。
それから、共有会では「ここが勉強になった」という学びの共有だけにとどまらず、「学んだことを自分なりに工夫して、実際の案件に活かしてみた」と報告するメンバーが出てきました。これにはすごく驚きましたし、嬉しかったですね。
鳥羽 私も素直に驚きました。「クライアントには出さないかもしれないけど、講義で学んだ理論でコピーを考えてみました」とか、具体的なやりとりがありましたよね。それぐらい講義に向き合って、すぐに実践する姿勢には刺激を受けました。
武井 きっとチーム単位で参加していたのが大きいのだと思います。チームメンバーがみんな同じ話を聞いているので、いわば「共通言語がある」状態。だから、このキーワードで制作してみたってことがしっかり理解されるし、きちんと自分がやった工夫に対するリアクションが得られる。そのベースがあるから、学びを実践してみようとする意識が生まれたのではないでしょうか。
鳥羽 共有会の実施単位を小人数のグループにしたことや、各グループにリーダーがいたのも良かったと思います。共有会の日程も合わせやすいし、しっかりリーダーが仕切ってくれるから、ぐだぐだしてしまうこともなかった。
武井 言ってみれば、期間限定の“社内ゼミ”みたいな形ですよね。とはいえ、ガチガチの雰囲気でやっていたわけじゃなくて、たとえばランチを食べながらとか、ゆるく実施していたようですから、それも継続できた秘訣なんじゃないかと思います。
コミュニティの強化で学びを継続させる
——サイバーエージェントさんには、第1回から第3回まで参加をリピートしていただいています。これまで継続してご参加いただいているのは、どのような理由からでしょうか?
武井 一番は、TCAが社内のクリエイターに支持されているからですね。かなり“市民権”を得ていますよ。参加者に選ばれたときはみんなすごく嬉しそうですし、参加後は勉強になったという声ばかりです。中には「また参加させてください」って声もあったくらい。
同じメンバーを参加させることは出来ていませんが、社員のそういう声に応える意味でも、今後も参加させていただきたいと思っています。
——ありがとうございます! 今後のTCAへ向けて、何か改善を期待するポイントがあれば、ぜひ教えてください。
武井 期待するところで言うと、会社の枠を超えて、受講生同士のコミュニケーションがもっと強化されるといいなと思います。先ほどお話ししたように、社内の参加者間では学びを共有できる形が出来てきました。これが参加する受講生全体でもシェアできるようになれば、もっと学びが活性化するのではないかと思っています。
鳥羽 そうですね。これは弊社内での話になりますが、参加者が毎回変わっているので、過去プログラムの参加者も巻き込んで、継続的に学びを共有していくことが出来ればいいなと思っています。TCAの学びを最大限に活用できるスタイルを作るために、私たちも試行錯誤を続けていきたいですね。
(取材=GO・勝田彩子、文=水沢環、編集=ツドイ)
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