「TCAには思考の“型”が詰まっている」エプソン販売株式会社が受講を続ける理由

日本のクリエイターの強化、並びにあらゆるビジネスパーソンのクリエイティビティ向上を目的とした教育プログラム「THE CREATIVE ACADEMY 2022 1st」(通称:TCA)
 
この講座では、参加を希望される企業さま向けに、法人コースを設定しています。これまで3期にわたって講義を開いてきた中で、広告業はもちろん、それ以外にも幅広い業種から、60社以上の企業さまにご参加いただきました。
 
今回は、過去3期全てのプログラムにご参加いただいているエプソン販売株式会社さま(*)に、インタビューを実施。お話を伺うのは、人事部の鹿島さまと労働組合執行委員の小西さまのお二人です。広告代理店ではない同社がTCAへ参加する理由や、日頃の業務を行う上で参考になったことなどを語っていただきました。聞き手は、GOの勝田です。

*……エプソン販売(株)とエプソン販売労働組合の2枠でご参加

メーカーの未来にも必要不可欠な“クリエイティビティ“

——いつもTCAにご参加いただきありがとうございます。TCA開始当初から参加を継続いただいていますが、情報機器メーカーの国内販売・マーケティングを担うエプソン販売さんが、クリエイター育成を目的としたTCAを受講されていることを不思議に感じる方も少なくないのではないかと思います。改めて、御社がTCAへの参加を決めた理由を教えてください。
 
鹿島 一番の理由は、社員のクリエイティビティを養い、弊社の持つ価値を最大限に高めていきたいと思っているからです。

鹿島梨紗。人事部。2017年度に入社し、千葉エリアにて民間企業や自治体をメインユーザーとした法人営業を4年間担当。その後人事部へ異動し、組織カルチャーチームの一員としてエプソン販売のカルチャー変革に向けた活動に取り組んでいる

弊社の売り上げの主軸は、ご存知の通りプリンターに関する事業です。しかしながら、近年はペーパーレス化の動きもあり、プリンターをただ売るだけではなく、新たな付加価値を生み出すこと、またこれまで培ってきた技術やノウハウを活かした新しいサービスを開発して社会課題を解決することを目指しています。 

そのために必要なのは、社会課題や顧客価値を発見する力、そしてそれを自社や共創パートナーとともに解決しようと挑戦する力です。これは、TCAで言及されているクリエイティビティに通ずるものだと思っています。
 
加えて、社外の研修に参加することで、会社の中に向いている社員の内向的な風土を外に向けさせたいという狙いもあります。TCAに登壇される講師の方々は各業界の最前線で活躍されている方ばかりですから、講義を聴くことでクリエイティブにおける思考法だけでなく、仕事に対する姿勢なども学んでもらいたいと思っています。
 
——TCAに参加する社員は、どのように選抜されているのでしょうか?
 
鹿島 これまではDX推進部や広報部など、クリエイティブ領域に関わりがある部署を対象に受講希望者を募っていました。ですが、次第に他部署の中でも社外研修への関心が高まっていると感じるようになりました。

そこで、今期(第4回 2022 1st)の参加者は、部署の制限を設けずに、全社から募集することにしました。するとすぐに定員を超えてしまい、早々に募集を締め切ることになりました。改めて、TCAへの需要の高さを感じましたね。

すべての企業人に有益なビジネスの“型”

——社内の事務局として携わりながら、お二人自身も、実際に何期にもわたってTCAの講義を受講されているとうかがいました。受講生として、講義にはどんな印象がありますか?
 
鹿島 クリエイティブディレクターの方って、各々独自の“思考の型”みたいなものを持っている気がしました。第一線で活躍されている皆さまが、たくさんの経験を経てたどり着いた秘訣や思考法を聞くことができるので、いつも新鮮で、多くの学びがありました。
 
小西 個人的には、第1回の古川裕也さん(株式会社古川裕也事務所。電通でエグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターとして九州新幹線全線開業「祝九州」、大塚製薬/ポカリスエット、GINZA Sixなどを担当)や、第3回(2021 1st)の国見昭仁さん(株式会社2100。電通時代、「未来創造グループ」を立ち上げ、多様な業界の企業の経営変革、事業変革などのプロジェクトを150件以上実施。役員待遇となるエグゼクティブ・プロフェッショナルに最年少で就任)の回が印象に残っています。

小西恵理子。DX推進部/エプソン販売労働組合執行部(非専従)。会社の業務を兼務しながら労働組合の活動を行う。初期TCA受講者であり、第2期の講座からは継続して労働組合執行部内のTCA事務局として推進。本業では新規ビジネスモデル開発を担当している。

お二人ともビックプロジェクトや事業に関することなど、スケールの大きな事例を話されていました。広告代理店でのプロジェクトマネジメント、リーダーとしてどう旗振りをしたのか、パートナーと共に事業を推進するためにどんなコミュニケーションを取ったかなど、事業やプロダクトが生まれていくストーリーが聞けて、すごく興味深かったです。
 
——なるほど。主催する側としてありがたく感じる一方で、そうした話はお二人の実際の業務とは少し離れているようにも思えます。その点に物足りなさを感じることはありませんでしたか?
 
小西 それはなかったですね。たしかに私たちの日々の業務は、広告を作ることではないですし、営業に関わる仕事も多いです。それでも、「これは自分の仕事と重なる!」と共感する瞬間はたくさんありました。「お客様と向き合うならこういう姿勢が大事だよね」とか、「後輩にはこう働きかけてみよう」とか。
 
きっとそれは、講師の皆さまが一流のクリエイティブディレクターであると同時に、一流の“プロジェクトリーダー”でもあるからだと思います。

社会人であれば、誰もがなんらかの形でリーダーシップを発揮する機会がありますよね。マネジメント職の方はもちろんのこと、例えば営業担当も自分の担当するエリアや領域に対してどのようなことが足りていなくてそのギャップを埋めるべく行動するかを主体的に考えて推進することが求められます。そう考えると、仕事の内容や今の役職にかかわらず、誰でも、普段の仕事に活かせる気づきが得られる講義なのではないかと思います。
 
鹿島 私もそう思います。私自身、受講する前は「自分の業務とはかけ離れているのでは」と少し不安でした。でも受講してみると、広告業界のお話を軸にしながらも、ビジネスを動かしていく上での方法論などがかなり盛り込まれていて、どんなビジネスパーソンが聞いても、必ず参考になる講義だと思いました。
 
また、講師の皆さまはとにかくプレゼンテーションがお上手でした。グラフィカルで端的なスライドを背に、巧みにお話される。うちの社員は全員、内容より先に講義のスタイルに衝撃を受けていました。特に営業担当者にとっては、プレゼンテーションの方法、メッセージの伝え方といった部分でもすごく勉強になったのではないかと感じました。

学びを活かすためのアウトプット「メールレポート」

——参考になる部分が多くあったと言っていただきましたが、そうした気付きを社内で振り返ったり、共有したりするような取り組みはありましたか?
 
鹿島 参加した社員には、講義を受けるたびに、自分が所属している部署の社員に宛ててメールで講義のレポートを発信してもらいました。受講者自身への知識の定着を図ることと、受講していないメンバーにも学びを波及させることが目的です。この取り組みによって、講義で得た知識が、“共通言語”として社内に広がっている気がします。
 
小西 レポートの作成は、個々人のクリエイティビティを発揮できる場でもありますよね。講義をしっかり自己消化した上で、受講していない人に情報をわかりやすく伝える工夫が必要ですから。レポート作成は、個人でアウトプットを生み出すという意味で、非常にいい訓練になっていたのではないかと思います。

チーム内で、レポートに対して相互評価を「Good」「Motto」形式で実施(画像提供:エプソン販売株式会社)

——なるほど。講義後すぐに「実践の場」があるようなイメージですね。
 
鹿島 そうですね。ですから、レポートでは講義の内容をただ羅列するのではなく、その学びを実際の業務にどう応用するかなど、想像力を広げて、発展的なアウトプットをしてほしいと思っています。
 
また、次回はメールレポートだけでなく、直接的に学びを共有する場を設けたいと考えています。講義を受けた後に受講者同士で集まって、感想を話し合える“振り返り会”のような場です。お互いの反応や意見を直接交換することで、もっと講義への理解を深め、さらに業務への活用を促すことができればと思っています。

(取材=GO・勝田彩子、文=水沢環、編集=ツドイ)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?