『恥ずかしがり屋の立方体』
いつもは購買の菓子パン2つだが、お肉の賞味期限が近いからと、珍しく母が弁当を作ってくれた。
「母さん、弁当ありがと。でも…高校生にもなって、この弁当は恥ずかしかったよ」
「あら、サイコロステーキに文句言うの?昼から豪勢じゃない、むしろ自慢するでしょ?」
母は心外という表情をしている。
そこじゃないんだ。
「なんでおにぎりが全部サイコロなの?」
きっと安易にサイコロステーキに似せただけだろう。ご丁寧に、見えない裏の面にも、しっかりと海苔で目がつけられていた。
「あんた、三つ星レストランで、なぜこのおにぎりは立方体なんですか?って聞く人?そんな風に育てた覚えはないけど」
三つ星レストランに行ったことはないので、この例えはまったく響かない。
「そうだ…三角形だと、隙間ができてもったいないでしょ?たくさん食べて大きくなってほしいのよ」
成長期が終わった後に言われても、という言葉を飲み込み、顔を赤め恥ずかしがる母さんの姿が可笑しかった。
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