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【別大マラソン2022プレビュー③】

大六野、市山、細森、藤曲の自己記録上位4人が前日に会見
トップタイム(2時間07分12秒)を持つ大六野が世界陸上に意欲

 7月開催の世界陸上オレゴン代表選考会を兼ねた第70回記念別府大分毎日マラソン大会(以下別大マラソン)が2月6日行われる。レース前日には大六野秀畝(旭化成・29)、市山翼(小森コーポレーション・25)、細森大輔(YKK・27)、藤曲寛人(トヨタ自動車九州・24)の自己記録上位4選手が大分市内のホテルでの記者会見に出席。参加選手中トップの自己記録(2時間07分12秒)を持つ大六野は、「2時間07分53秒の派遣設定記録が目標」と、世界陸上選考対象入りを目標に掲げた。

●3回目のマラソンで一気に記録を伸ばした大六野

 大六野に期待できる理由は、マラソンのタイムだけではない。10000m自己記録の27分46秒55は参加選手中2番目で、同種目の18年日本選手権では優勝した。トラックの実績は今大会参加選手中、同僚の鎧坂哲哉(旭化成・31)と双璧をなす。ニューイヤー駅伝は区間賞こそないが、必ず区間上位で走りチームの優勝に貢献してきた。

 だがマラソンは簡単ではなかった。初マラソンの19年別大では足にマメができ33km付近で立ち止まった。完走はしたが2時間21分47秒の37位に終わっている。大六野はテレビの取材に対し「初マラソンの失敗があったからこそ、マラソン練習の仕方を考えさせられました」と話している。

 2度目の20年東京マラソンも2時間11分19秒で30位。終盤でペースダウンしたが、5km毎15分00秒を切るハイペースで30kmまでレースを進められた。大六野の中では成長が感じられたレースだったのではないか。

 そして3回目の21年びわ湖で2時間07分12秒と、一気に記録を伸ばしてきた。旭化成の川嶋伸次コーチによれば、ポイント練習(1週間に2~3回行う負荷の高い練習)以外の部分で、自主的に工夫を凝らして取り組んでいたという。旭化成の大先輩である宗茂さん(78年別大マラソンで当時の世界歴代2位)の著書「マラソンの心」を読み、基本を再確認したことも大きかったようだ。

 昨年は12月の福岡国際マラソンにも出場。2時間13分45秒の18位に終わったが、近年提唱されている水分をコントロールする調整法を試し、それに合わない体質だったことが原因だった。レース中盤から脱水症状が出てしまった。

 マラソンに向けたトレーニング自体は、びわ湖のときよりも「かなり安定して、それも高いレベルでできていた」(川嶋コーチ)という。そして今回は、その福岡前よりも状態が良いと大六野も川嶋コーチも認めている

 12月頭の福岡国際マラソン、元旦のニューイヤー駅伝(7区区間4位)、そして別大マラソンと、1カ月毎に大きな試合を続けることになるが、そこも自身の成長に結びつけられると大六野は考えている。

「12月に福岡を走り、短いスパンでどこまで走ることができるか、をテーマにしてやってきました。短期間の仕上げ方、調整の仕方を今回確認できれば、今後マラソンをやっていく上で、これでいける、という方法を確立できます」

 3カ月連続の試合になるが、川嶋コーチも「タメはある」と手応えを持っている。大六野は当初は福岡ではなく、10月の東京マラソン(今年3月に延期)に出場する予定だった。「ずっと走り込んできたので、大崩れはしない」と川嶋コーチ。

 スケジュールは一見、タイトになっているが、マラソン出場を3月まで延ばすと、今度は気持ちが持たなくなる可能性があったという。「ニューイヤー駅伝の疲れでしっくり来ない時期もありましたが、1月中旬以降はスッキリして、体がよく動くようになりました」(川嶋コーチ)

 大六野自身も「疲労は1週間前と比べかなり抜けてきて、ほどよく張っている感があるくらいです。調子は悪くありません」と、この1週間の体調には手応えがある。

「この大会は優勝を目指しています。その優勝が次のどのマラソンにつながるかはわかりませんが、そこに向けての良い経験になればいいと思っています」

 大六野が「オレゴン世界陸上」という言葉を飲み込んでいたのは間違いない。


●「大六野選手の背中に付いていきたい」(市山)

 会見に臨んだ選手たちは、別大マラソンに向けてそれぞれの思いを話していた。

◇市山翼

「MGC出場権(3位以内なら2時間10分00秒以内、4~6位なら2時間09分00秒以内)を取ることが目標です。東日本実業団駅伝のあと故障もあって、急ピッチで仕上げてきました。風が吹くことが多い大会なので、体幹トレーニングや起伏のあるコースで練習してきました。ブレない走りを試合でもしたい。大六野選手は陸上を(本格的に)やる前から憧れの選手でした。背中を借りて、その背中に付いていきたい」

◇細森大輔

「2時間7分台を出してMGC出場権を取ることが目標です。風が強ければ集団の人数が多くなるので、接触にも気をつけます。昨年のびわ湖で自己新を出せたのは、集団の中での走り方、給水の取り方、粘りどころでの我慢の仕方など、びわ湖が9回目のフルマラソンでしたが、経験を生かせたからです。明日は藤曲選手を意識して走ります。10000mの27分台を出したレースやニューイヤー駅伝4区などでよく顔を合わせましたが、どのレースも負けているからです」

◇藤曲寛人

「タイムにはこだわりませんが、勝負にはこだわりたい。優勝できたら、と思っています。(風が強く大人数の集団になっても)勝負にこだわるので周りを見て、周りの動きに対応していきます。明日は同じ福岡県のチームの古賀淳紫選手(安川電機)を一番意識して走ります」

 勝負へのこだわりを見せていた藤曲は、トヨタ自動車九州の選手。同チームの森下広一監督は91年別大に初マラソンで優勝し、翌年のバルセロナ五輪で銀メダリストとなった。現役時代の勝負への集中力はすさまじいものがあったし、トヨタ自動車九州はニューイヤー駅伝でもトラックの記録以上の強さを毎年見せている

 その勝負強さを受け継ぐ藤曲も、優勝候補の1人に挙げてしかるべき選手だろう。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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