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【日本選手権クロスカントリー2022プレビュー①男子展望】

三浦、松枝ら五輪代表経験選手4人と田村の優勝争いか

高校生・佐藤の参戦でシニアも負けられないレースに

 日本選手権クロスカントリーは2月26日、福岡市の海の中道海浜公園で以下の4部門が行われる。

U20女子・6km

U20男子・8km

シニア女子・8km

シニア男子・10km

 男子には東京五輪代表3人が出場する。3000m障害でこの種目初の五輪入賞を達成した三浦龍司(順大2年)、5000m代表だった松枝博輝(富士通・28)と坂東悠汰(富士通・25)で、三浦と松枝は今大会でも前回1、2位だった。そこにリオ五輪3000m障害代表だった塩尻和也(富士通・25)、トラック、駅伝、ハーフマラソンで安定した戦績を残している田村友佑(黒崎播磨)も加わる。

 学生駅伝で2大会連続区間賞を獲得した石田洸介(東洋大1年)、1500m・3000m・5000mで高校新をマークした佐藤圭汰(洛南高3年)、マラソンの東京五輪補欠だった大塚祥平(九電工・27)ら注目選手も多数出場する。

 クロスカントリーは起伏があり、路面も土や芝生で、トラックや道路のように一定の反発ではない。誰が強さを見せるのか興味深い。

●前回1、2位の三浦と松枝が再対決

 昨年は三浦と松枝が、同タイムでフィニッシュするデッドヒートを展開した。三浦が順大の後輩であり、ラスト勝負に強さを発揮してきた松枝を破った。三浦はその後のトラックシーズンで3000m障害の日本新を連発し、東京五輪7位入賞するまでに成長した。

 当時の三浦は3000m障害では前年に日本歴代2位を出していたが、ロードレースやクロスカントリーには苦手意識も持っていた。3000m障害以外の種目では初の全国大会の優勝で、大きな自信を得て本職でのステップアップにつなげた大会だった。

 敗れた松枝は17年と19年に日本選手権5000mを制した選手。松枝も順大出身で三浦の先輩に当たる。順大の長門俊介駅伝監督は「松枝は学生時代からラストが強かった。クロスカントリーの練習で強い選手はだいたい、ラストの強さがあります」と説明する。

 順大はクロスカントリーを練習で多く行っているのが特徴だ。

「クロスカントリーは脚力の強化とスピード養成が主な狙いです。順大ではクロスカントリーコースでジョグやロング走をやるだけでなく、スピード練習も行っています。上りが終わって平坦に入ったところでスピードを上げるなど、練習のノウハウが確立されています」

 そして現役学生の三浦もクロスカントリーの練習で強さを見せている。昨年に続き、三浦&松枝が最後まで優勝争いを展開するかもしれない。

●好調の塩尻と田村も優勝候補

 2人の優勝争いに割って入るとすれば、坂東と塩尻の富士通同学年コンビと田村だろう。

 坂東は東京五輪5000m代表で、昨年1500mでも3分37秒99をマークしたスピードが武器。駅伝では単独走になっても、終盤までペースを維持できる強さがある。塩尻は16年リオ五輪3000m障害代表だった。3000m障害では東京五輪代表を逃したが、トラックシーズン終盤に5000m13分16秒53、10000m27分45秒18の自己新をマークした。

 塩尻も順大出身でクロスカントリーの練習をして鍛えてきた。松枝・三浦と比べるとラストのスピードはないが、中盤をハイスピードで引っ張る走りができるのは大きな武器だ。3年前には箱根駅伝2区の日本人最高記録(当時)で走っている。

 そして代表経験4選手に劣らない期待があるのが田村である。11月の八王子ロングディスタンス10000mで27分48秒42の自己新、元旦のニューイヤー駅伝3区(13.6km)では区間新で区間4位、2週間前の全日本実業団ハーフマラソンでも日本歴代8位タイの好タイムで3位。安定した強さが身につき始めた。

 この大会では19年3位、20年3位、21年6位とつねに上位で走っている。と同時に、勝てない悔しさも味わっている。優勝への思いが強い選手だ。


●ともに今大会U20優勝経験者。高校生の佐藤と学生ルーキー石田が参戦

 学生では三浦以外にも注目選手が多数出場する。

 昨年のこの大会では藤本珠輝(日体大3年)が7位と、学生勢では三浦に次いで2番目の好成績を残した。箱根駅伝の戦績では3区(21.4km)区間賞の丹所健(東京国際大3年)が一番だ。唐沢拓海(駒大2年)は10000mで28分02秒52と昨年の学生リスト4位。今大会出場学生選手の中では最も良いタイムを持つ。そして菖蒲敦司(早大2年)は昨年の関東インカレ1部3000m障害優勝者だ。

 学生ではルーキーの石田洸介(東洋大1年)に期待する声も多い。箱根駅伝は欠場したものの、10月の出雲全日本大学選抜駅伝5区(6.4km)と11月の全日本大学駅伝4区(11.8km)で連続区間賞。20年に5000mで13分34秒74の高校記録(当時)を出し、高校2年生だった2年前の今大会U20部門で優勝している(そのレースで三浦は8位)。注目したい選手だ。

 そして高校生の佐藤がU20ではなくシニアにエントリーしてきた。昨年5000mで石田が持っていた高校記録を13分31秒19と更新し、1500mと3000mも合わせて3種目の高校記録保持者となった。「世界陸上オレゴンを見据えたとき、シニアと勝負していかないといけない」(洛南高・奥村隆太郎監督)

 三浦も洛南高OB。三浦が3年生のときに佐藤は1年生だった。「当時は力の差があったので同じレースを走っても対決になっていませんが、今回は三浦も意識してシニアにエントリーした」(同監督)という。

 トップ選手の多くが勝負よりも、トラックシーズンにつなげることを目的としているが、高校生が先頭集団で走っていたら負けるわけにはいかない。佐藤の走りが今年の日本選手権クロスカントリーを熱くする。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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