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【GGP2022プレビュー④男子400m&男子400mハードル&女子100mハードル】

世界記録保持者のハリソン、世界歴代4位のノーマン、歴代2位のベンジャミン
東京五輪で敗れた3人が、同じ国立競技場できっかけをつかむか

世界トップレベルの選手も多数参加する陸上競技コンチネンタルツアーの1つ、ゴールデングランプリ(GGP)が5月8日、東京・国立競技場で行われる。外国勢では前日会見に男子400mのマイケル・ノーマン(米国・24)、同400mハードルのライ・ベンジャミン(米国・24)、女子100mハードルのケンドラ・ハリソン(米国・29)の3選手が出席。「おそらく世界で一番良いスタジアム」(ノーマン)と高速トラックへの期待に言及したが、「シーズン最初なので、無理はしないように」(ベンジャミン)と目標を話した。東京五輪でヒーロー、ヒロインになりきれなかった3人が、今後の活躍につなげていく再スタートとしてどんな走りをするかに注目したい。

●ベンジャミンの課題はハードル間のピッチ

東京五輪のベンジャミンは46秒17と従来の世界記録(46秒70)を上回ったが、人類初の45秒台(45秒94)をマークしたカルステン・ワルホルム(ノルウェー・26)に敗れて2位だった。
「明日のレースは、今季初戦ということで、手堅いレースをしていきたいと思っています。今までやったことをテストするようなレースにしたい」
 いきなり世界記録に挑戦することはないが、それでも「47秒を切れたら」と、かなりハイレベルの記録を目標とした。
 ワルホルムには前半で差を開けられるパターンで敗れている。東京五輪は中盤から後半で差をじりじり詰めたが、最後でまたリードを広げられてしまった。2人ともハードル間を13歩で走るが、190cm台のベンジャミンは前半のインターバルを窮屈そうに走っている印象があった。世界記録を狙うために12歩に変更するプランを持っているか、を質問してみた。
「加速しすぎて詰まってしまう経験はありますが、(偶数歩では2台に一度は使うことになる)逆脚踏み切りがしっくりこないので、利き脚にこだわって最後まで13歩で行く。そこは変えることはありません。前半200 mをどのくらいで走れるかは、だいたいわかっています。踏み切り脚は変えないで後半を(洗練させて)良い走りをすれば(世界記録も)行けるでしょう」
 前述のようにGGPではまだ全開の走りにはならないが、前半のハードル間をしっかり刻むレースを試すことはできる。東京五輪代表で、5月1日の木南記念で世界陸上標準記録を破った黒川和樹(法大・20)が外側のレーンなら、前半型の黒川を見て速いピッチを刻むことができる。

●ノーマンは「やるべきこと」に集中

東京五輪は5位だったノーマンは、世界歴代4位の43秒45を持つ。「日本でのパフォーマンスはそれほど良くなかった」と、本人も納得していない。
「自分のレースリズムを取り戻すために、いろいろな取り組みをやってきました。やるべきことをしっかりと、レースでやっていくことが目標です。44秒を切るタイムで走ることができればいいなと思っています」
 記録を意識するよりも、動きなど技術に集中して走るということだろう。世界記録を出すために200 mを何秒で通過したいか、という質問にも次のように答えた。
「パフォーマンスをしていく上で、日々取り組むべきことに取り組めば、記録は後からついてきますし、記録を出すためにはさまざまな要素が関係してきます。理想として20秒8という数字が考えられますが、400mには色々なタイプの選手がいるので、他の人に当てはまるとは限らない」
 記録はあくまでも、選手がやることをやった結果にすぎない。ノーマンのスタンスは徹底しているが、20秒8が結果的に目安にはなる。目標も控えめにしていることを考えれば、GGPはそれよりも遅いタイムの通過になるだろう。風も影響するので実際の数字には幅が生じる。
 ただ、他の選手と比較する根拠にはなる。
 日本記録は高野進が91年にマークした44秒78だが、その後44秒台を出した日本人選手はいない。東京五輪では4×400mリレーで日本タイ記録を出すなど、400m勢も充実してきた。GGPでは東京五輪4×400mリレー代表だった川端魁人(中京大クラブ・23)と佐藤拳太郎(富士通・27)、木南記念に45秒84で優勝した佐藤風雅(那須環境・25)らが、ノーマンにどこまで食い下がるかが注目される。
 日本勢にも自己記録を出すための200 m通過タイムをどう考えているか、4月24日の出雲陸上と5月1日の木南記念で質問した。佐藤拳は「44秒台を出すには20秒8から9で、後半が23秒9」と言う。川端は45秒5前後の記録が目標で、「最低でも21秒6~8くらいで」と考えている。佐藤風は「過去21秒4で通過したことがありますが、44秒台を出すためには21秒0に近づけたい」と話す。
 現時点ではノーマンと力の差は大きいが、前半型の佐藤拳はノーマンに果敢に挑むレースになるのではないか。日本人同士の対決でいえば、佐藤風は前半で離されても後半で逆転する可能性がある。川端は佐藤風以上に前半で後れるかもしれないが、最後まで注目し続けるべきだろう。

●ハリソンは1台目までのスピードに注目

女子100mハードルのハリソンは16年7月に12秒20の世界新を出したが、同年6月の全米選手権は6位と敗れリオ五輪代表を逃してしまった。昨年は全米に勝ち東京五輪でも優勝候補に挙げられたが、五輪本番は銀メダルと敗れた。悔しくないはずがないが「去年、このスタジアムで銀メダルを取ったので、明日もきっと良いレースができると思います」と、東京五輪の2位をあまり否定的にとらえていない。
 GGPの目標タイムについては「(今出せる)ベストなタイムを出す、ということしか言えません」と明言を避けた。だが、自身の世界記録を更新するために必要なことは? という質問には「スタートだと言い切れます」と答えた。
「もっと忍耐強くなることです。頭を低くして1台目に向かう姿勢をもう少しきちんとやっていけば、タイムは縮められると思っています」
 ママさんハードラーとして知られる寺田明日香(ジャパンクリエイト・32)は、昨年の東京五輪準決勝進出者で、12秒87の前日本記録保持者。その寺田がハリソンの動きを参考にしているし、1台目までを速く入ることも課題としている。
 この種目でもハリソンとの力の差は大きいが、2人の1台目の通過を比較しながら見るのも面白いのではないか。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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