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前日区間エントリー。富士通vs.Hondaの2強対決が濃厚。5区でコニカミノルタ、6区でGMOインターネットグループが浮上する可能性も【東日本実業団駅伝プレビュー④】

最長区間の3区は塩尻和也(富士通・25)と青木涼真(Honda・25)の3000m障害代表経験選手対決に――東日本実業団駅伝(11月3日、埼玉県庁をスタートし熊谷スポーツ文化公園陸上競技場にフィニッシュする7区間76.9km)の最終オーダーが2日の監督会議後に発表された。前回優勝の富士通は1区に坂東悠汰(25)、3区に塩尻、5区に松枝博輝(29)とトラックの代表経験選手を投入。4区にも好調の横手健(29)を起用し、3~5区で勝負に出る区間配置をした。
 22年元旦のニューイヤー駅伝優勝のHondaは、3区に青木、4区に伊藤達彦(24)と世界陸上オレゴントラック種目代表コンビを起用。仮に3~4区でリードできなくても、7区には前回3区区間賞の小山直城(26)を配し、アンカー勝負にも備える。
 コニカミノルタは最長区間の3区に世界陸上マラソン代表だった星岳(24)、最短区間の5区にスピードランナーの砂岡拓磨(22)を起用。「5位以内」(酒井勝充監督)を狙うが、レース展開次第では優勝争いも可能だろう。
 上位12チームが、23年元旦のニューイヤー駅伝出場資格を得る。


●1区は富士通、2区はSUBARUがリードか。そして3区の攻防が前半のヤマ場に

1区は富士通の坂東、GMOインターネットグループの村山紘太(29)、Hondaの小袖英人(24)らが区間賞候補だろう。
 坂東が昨年の東京五輪5000m代表で、今季も10月に13分21秒94の好記録を出した。近年の実績ではナンバーワンだ。村山も10000mの前日本記録保持者(27分29秒69)で、リオ五輪トラック種目代表だった。亀鷹律良監督も「村山が得意とする区間」と期待する。Hondaは「2区に少し不安がある」(小川智監督)ので、小袖が区間賞と小差でつなぎたい。
 2区ではSUBARUのキプンラガット・ベンソン(19)が、ニューイヤー駅伝のように区間賞でトップに立つシーンが再現されるか。
 そして最長区間の3区では富士通の塩尻とHondaの青木の対決が注目される。ともに3000m障害で日本代表歴があり、塩尻はリオ五輪と、故障で欠場したが19年世界陸上ドーハ代表だった。青木は昨年の東京五輪、今年7月の世界陸上オレゴンと連続代表だ。
 塩尻は昨年後半から5000m、10000mへの出場を中心にしている。青木も例年、夏の国際大会後は5000mに出場して駅伝シーズンに入る。5000mの自己記録は塩尻13分16秒53(日本歴代7位)、青木13分21秒81(日本歴代14位)で、どちらも日本トップレベルである。
 10000mは塩尻27分45秒18に対し、青木はほとんど走っていない。だが小川監督は「青木も他と比べて見劣りしません」と自信を見せる。「特に向かい風を含めて強いので、自信を持って起用しています」
 甲乙付けがたい2人だが、実際に走れば20秒、30秒と差がつく。3区の攻防が2強の流れに差をつける。
 2強以外ではカネボウから、チーム名を変更して出場する花王にも注目したい。1区の長谷川柊(24)は故障していた時期もあったが、高岡寿成監督も期待するスピードランナー。3区の池田耀平(24)は2年前の箱根駅伝2区日本人1位選手で、昨年の東日本大会は4区で区間2位の実績を持つ。
 新たなスタートを切る花王にも注目だ。

●4区は伊藤、5区は松枝とトラック代表選手がトップ浮上を狙う

4区はHondaが東京五輪、世界陸上オレゴンと2年連続10000m代表の伊藤を起用した。Hondaは3区の青木でリードするか、トップと小差で4区につなげば、4区の伊藤でそれなりのリードを奪うだろう。
 しかし富士通の4区・横手健(29)も今季は好調で、伊藤といえど大きく引き離せないかもしれない。そうなれば富士通は、距離は短いが5区に東京五輪5000m代表の松枝博輝(29)を起用している。
 富士通・高橋健一駅伝監督は「4区までは負けている可能性がある。5区と6区で『なんとかしろよ』と2人には言っている」という。
 一方、Hondaの小川監督は「5区の森(凪也・23)には胸を借りるつもりで走ってほしい。前後に強い先輩がいるので、プレッシャーを感じることないよ、と伝えました」と明かす。
 5区の五輪代表vs.ルーキーの対決は、中盤の見どころの1つだ。
 そして5区で2強に迫るとすれば、コニカミノルタの砂岡だろうか。
 コニカミノルタは3区の、マラソンで世界陸上オレゴンに出場した星岳(24)が、駅伝でも安定した力を発揮する。1区の名取燎太(24)、4区の米満怜(24)と、学生駅伝で活躍した2人が力を発揮すれば、上位で5区につなぐことができる。そして5区の7.8kmなら、5000m13分19秒92(日本歴代12位)の砂岡のスピードが生きる。
 コニカミノルタは5位が目標だが「5区までに5位以内を固めて、6、7区でチャンスがあれば、さらに積極的に行きます」と酒井監督。ニューイヤー駅伝優勝8回のコニカミノルタの、復活へのプロセスが見られそうだ。

●6区はスピードランナーvs.吉田、7区の市民ランナー細谷にも注目

6区も富士通とHondaの2強対決が展開すると思われるが、前述のコニカミノルタと、さらにはGMOインターネットグループも、優勝争いに絡んでいるかもしれない。
 GMOインターネットグループは3区に、千葉大大学院卒業のルーキー今江勇人(24)を起用した。今季は10000mで28分13秒44まで自己記録を伸ばしてきた。「今江が3区を走れれば、ニューイヤー駅伝ではどこの区間でも起用できる。このあと10000mで27分45秒も狙うレベルに来ている」と亀鷹律良監督。
 4区・下田裕太(26)、5区・一色恭志(28)、6区・吉田祐也(25)、7区・橋本崚(29)と、マラソンで実績のある選手が並ぶ。
「目標は3位通過ですが、下田が元気なので今江で少し後れても下田で盛り返せる」(亀鷹監督)
 箱根駅伝で4区区間新を出したことがある6区の吉田で、GMOインターネットグループがトップ争いに加わる可能性はある。塩澤稀夕(24)、川瀬翔矢(Honda・24)、清水歓太(SUBARU・26)ら、スピードランナーたちと吉田の対決も6区で注目される。
 2強の争いだが、富士通は高橋駅伝監督が言うように、6区の塩澤で決着を付けたいだろう。それに対しHondaは、前回3区区間賞の小山をアンカーの7区に置いている。今季の小山は東京マラソン、北海道マラソンと走っている。どこまで駅伝仕様になっているか、あるいはマラソンの持久力を活用した走りができるようになっているか、が勝敗に影響しそうだ。
 優勝争いとは別のところになるが、7区には市民ランナーとして活動している細谷翔馬(K-project・22)が出場する。箱根駅伝で2年連続山登りの5区で区間賞。3月の東京マラソンで2時間09分18秒の学生歴代3位と好走した。実業団駅伝に舞台を移してどんな走りをするか、注目したい選手だ。
 日本代表レベルの選手にもトラックのスピードランナーもいれば、駅伝より長いマラソンで活躍する選手もいる。世界大会のメダルも狙える外国人選手もいれば、市民ランナーもいる。埼玉県を横断する東日本実業団駅伝は今年も見どころが満載である。

TEXT by 寺田辰朗

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