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【世界陸上オレゴン2022フィールド種目期待のコンビ】

戸邉直人&北口榛花、JAL日本記録保持者対談
第3回 海外にも拠点を持つ2人が感じる世界と日本

男子走高跳の戸邉直人(JAL・30)と女子やり投の北口榛花(JAL・24)。フィールド種目の日本記録保持者同士の対談の第3回。2人の共通点として世界的に見ても遜色ない体型であることと、早い段階から海外に活動拠点を持ったことが挙げられる。世界をどう意識し、海外経験をどう生かして成長してきたか。深い内容のトークが展開した。

●世界と日本、両方の技術を学んで成長

――2人とも体格が大きく、世界のトップ選手の中に入っても引けを取りません。その点をどう生かしてきましたか。
戸邉 日本代表レベルに僕のような体型の選手はほとんどいませんでした。低い身長の人に合った技術で世界と戦ってきたんだと思います。しかし世界を見ると、違うなと思うところも多かったので、当初は世界に出て行ってトレーニングを教えてもらうことを重視していました。考え方も理解できて記録も伸びましたが、あるところで頭打ち状態になり、ケガも繰り返すようになった。そこで日本人的な技術をモデルに考え直したら、もう一度記録を伸ばすことができたんです。
北口 私はバドミントンや水泳をやっていた頃から、小さい人と同じスピードで動くのが難しいと感じていて、親も体格の大きい外国人の動きを見るようにアドバイスしてくれたんです。やり投は始めた頃から海外に行きたいと思っていて、日本の技術が合う、合わないと感じる前から、毎年フィンランドなど海外に行く機会に恵まれました。

●世界から直接学ぶ姿勢

――北口選手はチェコ人コーチの指導を19年から受けています。戸邉選手は高校卒業後は特定のコーチを付けていませんが、学生時代から積極的に海外で学び、卒業後はエージェントのいるエストニアもトレーニングと遠征の拠点にするようになりました。成長にどういう形でプラスになったと考えていますか。
戸邉 僕がヨーロッパに行くようになってすごく感じたのは、競技もトレーニングも極めて合理的にとらえていることです。まずトレーニングは、走高跳につながるのかどうかを徹底的に考え抜かれています。技術面も同じで、日本では泥くさいことをやって強くなろう、という考え方があります。それには良い面も必要なこともあると感じていますが、そういったことを絶対にやらないのがヨーロッパです。
北口 とにかく練習時間が短いですよね。日本では5時間くらい練習することも多いと思いますが、ヨーロッパでは午前中2時間半、午後2時間半と分けて、集中が持続する時間で練習します。日本との違いでいえば、競技人口が少ないので世代トップの選手を徹底的に育成するシステムになっています。私のチームメイトにチェコで世代トップの子がいて、一時期やる気をなくしてしまったんですが、その世代にはその子しかいない、という感じで周りがサポートして立ち直らせました。
戸邉 僕は外国遠征も長い期間で行いますし、トレーニングも外国で行いますが、外国人コーチは付けていません。北口からチェコのコーチの考える練習を聞くのは新鮮ですし、学ぶことが多々あります。出社して話をするたびにインスピレーションがあります。
北口 私の周りで海外に一番積極的に行っているのが戸邉さんです。そいう人が同じ会社に所属しているのは本当に幸運で、相談したり意見交換をさせていただいたりしています。
戸邉 自分とは別のやり方で世界の流れに身を置いている。そういう選手が同じチームにいてくれたおかげで、世界との距離をまた、近く感じられるようになりました。
北口 世界との距離といえば、ずっと言いたかったことがあるんです。今はSNSやYouTubeで外国人選手の練習も見ることができますが、スマートフォンの画面に映っていることが全てではない、ということ。コロナになって今はチェコのコーチからオンラインで指導を受けていますが、実際に合って話をしないと理解できないことばかりです。SNSの動画も注釈まで載せてくれませんから。どこに注意してその動きをすべきなのか、とか、手の動きがこうなっているけど本当は別の部位を意識していたり、とか。短期間の海外合宿でやったトレーニングをSNSに上げると、“変わったことをやっている”と、そこだけが広まってしまうんです。海外に行った人の話を聞くことも1つの方法ですが、その人の感じたことが入ってくるので、現地でやっているものとは変わって届いてしまう。SNSを見て満足するのでなく、ホンモノを確かめることが必要だと思っています。(体格や考え方など)北口は普通じゃないからできるけど、普通の人は真似しない方がいい、という見方もあるようです。しかし同じ人間がやっていることなんですから、世界で活躍している人の投げ方、考え方を学ばないのはもったいないと思います。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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