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【プリンセス駅伝2021見どころ② エディオン】

東京五輪5000m代表の萩谷は10km区間を走るのか?
キャプテン西田、2年目の山本の走りにも注目

 東京五輪5000m代表だった萩谷楓(21)を擁するエディオンが、V候補に名を連ねる。
 クイーンズ駅伝予選会となるプリンセス駅伝は10月24日、福岡県宗像市を発着点とする6区間42.195kmで行われ、上位20チームが本大会に出場する。資生堂、ダイハツが強力だがエディオンも、萩谷に加え移籍してきた細田あい(25)やキャプテンの西田美咲(30)、入社2年目の山本明日香(24)ら、メンバーが充実してきた。萩谷が10km区間に起用でき、そこで快走すればトップに立つ展開も十分あり得る。
 エディオンは、どんな戦い方をするチームなのだろうか。

●萩谷が10km区間出場に向かっている経緯は?

 萩谷の充実が著しい。
 8月の東京五輪は予選を通過できなかったが15分04秒95の自己新と、大舞台で力を発揮した。9月の全日本実業団陸上では1500m4分11秒34、5000m14分59秒36と2種目とも自己新&日本人トップ。高校から入社1年目の19年までは1500mが中心で、国体で優勝した実績もある。1500m&5000mタイプのスピードランナーとして成長してきた。
 その萩谷がプリンセス駅伝では、「長い区間に挑戦したい」と全日本実業団陸上レース後には話していた。10km区間(10.7kmの3区と10.4kmの5区)を初めて走る準備を進めている。
 実は昨シーズンも10km区間に挑戦するプランがあった。9月の全日本実業団陸上時点で沢栁厚志監督が明かしたが、萩谷の故障で実現しなかった(故障明けのプリンセス駅伝は6区区間賞、クイーンズ駅伝は1区区間6位)。
「長い距離への適性はあると、以前から感じていました」と沢栁監督。「25kmくらいの距離走はさらっと走っていました。しかし若いうちはあえて、5000mを中心にスピードを強化しようと考えました」
 東京五輪後の合宿も、持久系のメニューが大半でスピード系のメニューはほとんど行わなかった。それでも1500mでも自己新を出している。プリンセス駅伝に向けても「10kmでも対応できるような練習を順調にこなしてきた」(同監督)という。
 だがレースでは、10kmや10000mの距離を走ったことはない。「3分10秒ペース(10km換算31分40秒)で押して行けると思いますが、後半がどうなるかは走ってみないとわかりません」と沢栁監督。
 実際に10km区間へ出場するのかも、前日の区間エントリーまでわからない。細田の調子次第では、チーム事情で1区に回る可能性もあるからだ。
 だがプリンセス駅伝で、萩谷が10km区間を走ることの意味は大きい。成功すればパリ五輪を10000mで狙うなど、個人種目での選択肢が増える。またチームとしても、クイーンズ駅伝で他チームのエースと互角に渡り合える大黒柱が誕生することになる。萩谷の10km区間出場は、プリンセス駅伝最大の注目ポイントの1つだろう。

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●トラックで自己新を連発した細田が、故障からどこまで回復しているか

 萩原が3区に起用できるかどうかは、細田の状態も影響する。
 細田はダイハツ所属だった19年クイーンズ駅伝で、5区区間2位の実績を残した選手。19年には10000mで32分06秒34、20年にはマラソンで2時間26分34秒と好走し、スタミナ型の選手と思われた。しかし今季は5000mで15分28秒05と自己記録を24秒47も更新し、10000mも31分39秒32と自己新をマークした。
 西田が今年1月のマラソンで2時間28分51秒の自己新を出し、トラックシーズンも10000mで安定した走りを続けている。西田に5区を任せ、1区と3区を細田と萩谷の長野東高出身コンビで分担する。沢栁監督はそう構想していた。
 だが細田が7月後半に左足首を故障し、9月の全日本実業団陸上も欠場。約2カ月間、負荷の大きい練習ができなかった。
 細田が1区を任せられるまで回復すれば1区・細田、3区・萩谷、5区・西田となる。間に合わなければ萩谷が、2年前に区間賞を取った1区を走ることになるかもしれないし、西田が1区に回る可能性もある。
 エディオンの区間配置は、実に多くの要素が加味されて決定する。前日の区間エントリーまで予断は許されない。

●プリンセス駅伝で試してクイーンズ駅伝へ

 エディオンのチーム内を見ただけでも不確定要素が多く、レース展開を予想するのは簡単ではない。
 3区・萩谷となった場合、優勝候補筆頭と言われている資生堂・木村友香(26)の起用区間にもよるが、10km区間でも萩谷が力を発揮できればトップに立てる。その場合は5区選手の走りが優勝の行方を左右する。
 西田が5区なら逃げ切る可能性は高い。練習が不十分でも細田が10kmを確実に走り切れば、トップに踏みとどまる展開も期待できる。5区に入社2年目の山本や、今季前半の故障から復調した江口美咲(26)を起用した場合は、その成長に期待する区間配置となる。
 そして1区・萩谷なら、区間賞でリードを奪えるだろう。その場合は3区の西田に、他チームのエースのスピードに対応することが求められる。
 エディオンはプリンセス駅伝に優勝してクイーンズ駅伝に勢いをつけることよりも、「クイーンズエイトが目標」(沢栁監督)という本大会を見据えて、各選手を試すことの方に重きを置いている。
 一番チェックしたいのは萩谷の10km区間での力だが、細田の回復状況も確認したい。インターナショナル区間の4区で外国勢との差を最小限にとどめることや、5区に起用する選手が踏みとどまることなどをチェックし、クイーンズ駅伝への対策を立てる。
 その戦い方でも萩谷という強力なカードを持つだけに、台風の目となりそうなチームである。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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