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女子100mハードルは福部、青木の世界陸上オレゴン準決勝進出コンビが激突。ともに来年の世界陸上標準記録突破に意欲【全日本実業団陸上2022プレビュー⑥】

男女ハードル種目も全日本実業団陸上(9月23~25日・岐阜メモリアルセンター長良川競技場)で好記録が期待できる。女子100mハードルは日本記録(12秒82)保持者の福部真子(日本建設工業・26)と、前日本記録(12秒86)保持者の青木益未(七十七銀行・28)の世界陸上オレゴン準決勝進出者同士が対決。日本記録更新と、来年の世界陸上ブダペスト参加標準記録の12秒78突破の期待が持てる。
 男子110mハードルは8月に13秒10の日本歴代2位を出したばかりの髙山峻野(ゼンリン・28)と、世界陸上オレゴンで準決勝まで進んだ石川周平(富士通・27)が対決する。前半からスピードに乗る髙山を、後半に強い石川が追い上げる展開だろう。20、21、22年と3シーズン連続13秒3台をマークしている石川にも、13秒28のブダペスト標準記録突破の可能性がある。

●オレゴンの準決勝とは異なる感覚で12秒7台を

女子100mハードルはともに世界陸上オレゴンの準決勝まで進んだ福部と青木の、日本記録レベルでの攻防が予想されている。
 オレゴンで花を咲かせたのが福部だ。準決勝は突破できなかったが12秒82(+0.9)と、青木が今年4月に出した12秒86(-0.2)の日本記録を更新。この種目の日本記録が五輪&世界陸上で更新されたのは史上初めてだった。
 だが、福部は自身のオレゴンでの走りに納得していない。帰国後第1戦となったAthlete Night Games in FUKUI(8月20日)のレース後に、次のようにコメントしていた。
「何回準決勝の走りを見ても、海外選手と比べてしまっているからかもしれませんが、全然動けていなかった感覚があるんです。(1位が12秒12の世界新で福部は8位と)ハイレベルなレースだったためか、イメージしていた12秒82のリズム感がまったくありませんでした。国内のレースで落ち着いて、スタートからしっかりレースを展開できれば、12秒7台は見えてくるのかな、と思っています」
 Athlete Night Games in FUKUIでは青木に、12秒92(-0.1)の同タイムで負けている。青木も新しい試みに取り組んでいる最中で万全で臨んだわけではなかったが、福部もオレゴンから帰国後に新型コロナに感染し、「8月7日まで自宅療養していた」後のレースだった。当初の予定では8月6日の実業団・学生対抗、Athlete Night Games in FUKUIと試合に出て、その後に強化期間を設けて全日本実業団陸上で12秒78の標準記録突破に挑む予定だった。
 予定変更を余儀なくされたが、「速いリズムを体に染み込ませる作業というか、リズムを覚えているときに試合に出ることはすごく重要」ということで、翌週の富士北麓ワールドトライアル(8月27日)にも出場し、12秒88(±0)の自身セカンド記録と好走した。12秒7台への準備は着実に進んでいる。
「世界陸上で12秒78を出しても準決勝止まりです。そこは最低限出して、(さらに記録を伸ばして)世界に挑んでいかないといけないと思っています」
 標準記録の12秒78は、今の福部にとって通過点である。

●青木はスプリント強化が着々と進行

一方の青木は、オレゴン世界陸上では準決勝2組6位、13秒04(-0.1)という結果だった。自身が4月に出した日本記録(12秒86)も福部に更新された。
 しかしAthlete Night Games in FUKUIでは12秒92(-0.1)の同タイムで福部に競り勝っている。
「福部さんには抜群の安定感があります。私には安定感はあまりないですけど、今日しっかり勝てたことはプラスかな、と思っています。(12秒台の争いとなったことも)すごくうれしい。寺田(明日香・ジャパンクリエイト・32。12秒87の元日本記録保持者)さんもそうですが、そういう存在の選手がいると緊張感が持てます。自分が先頭を走っていたら出せないような力が出せますね」
 12秒78の標準記録についても、「突破できない記録ではない」とスタッフと話し合っている。
 オレゴンから帰国後は上体の捻りを少なくして、「ハードルに正対する。腕をしっかり曲げて上体をコンパクトに動かす」ことを意識してきた。主に技術的な部分の変更だが、記録を伸ばして行くために基本となるスプリントの強化も、しっかり行っていく。
 オレゴンでは4×100 mリレーの1走として日本記録更新に貢献した。青木はもともと、高校1年時にインターハイ100 mに優勝した選手で、今年の日本選手権100mでも4位に食い込んでいる。それでも世界陸上のリレーを走ったことには驚かされた。
「継続してスプリントを上げていって、そこに(ハードリングやインターバルの走りの)技術をすり合わせていきます。スプリントが上がれば上がるほど、動きをコンパクトにしないと踏み切り位置がどんどんハードルに近くなってしまうんです。先ほど言ったハードルに正対するコンパクトな動作が必要になりますね」
 1週間後の富士北麓ワールドトライアルで青木は100mに出場。11秒48(+0.4)と自己記録を0.03秒更新した。青木のスプリント強化は確実に進んでいる。スプリント力に合わせた技術が全日本実業団陸上までに身につけていれば、12秒78の標準記録突破が実現する。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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