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元旦決戦かく戦う。有力チーム監督コメント後編:トヨタ自動車、黒崎播磨、GMOインターネットグループ、富士通【ニューイヤー駅伝展望コラム】

 大迫傑(Nike・31)が3区に登場するGMOインターネットグループは、どんなレースプランで臨むのだろうか?
 23年最初の全国一決定戦であるニューイヤー駅伝は、前回優勝のHonda、2年前優勝の富士通、戦力充実が著しいトヨタ自動車、九州大会優勝の黒崎播磨が4強と言われている。そこに大迫が“参画”するGMOインターネットも加わる勢いだ。
 前回5位のトヨタ自動車は3区に太田智樹(25)、4区に西山雄介(28)と信頼感がある2人が入った。5区に新加入の丸山竜也(28)が、アンカーの7区に東京五輪マラソン代表だった服部勇馬(29)が起用された。
 前回6位の黒崎播磨は3区に田村友佑(24)、4区に前回区間賞の細谷恭平(27)、5区に土井大輔(26)と、前編の三菱重工同様主要3区間は前回と同じメンバーに。6区の田村友伸(21)の走り次第では優勝に手が届く。
 大迫が“参画”したGMOインターネットグループは、3区に大迫、4区に吉田祐也(25)、5区に今江勇人(24)というメンバーで、5区ではトップに立つプランだという。
 そして前々回優勝の富士通は東京五輪5000m代表だった松枝博輝(29)は股関節の故障の影響で外れたが、3区に坂東悠汰(26)、5区に塩尻和也(26)とトラック種目の五輪代表経験選手が入り、4区には好調の横手健(29)が起用された。やはり好調の6区・浦野雄平(25)で抜け出す布陣だ。
 上記4チーム監督のコメントを大会直前の取材から、想定しているレース展開を中心に紹介する。

前回5位・トヨタ自動車
熊本剛監督
「懸念材料は2区ですが、20~30秒差で抑えてくれたらまずまず。3区以降でしっかり詰めて、優勝戦線にもどしていきたい

(コーチから監督に昇格して1年目だが)大きく変えたことはありません。佐藤さん(佐藤敏信前監督、現総監督)のやられてきたことを引き継いでやっていくことが、僕の使命です。ずっと優勝争いを続けているチームなので、覚悟を持ってやっていかないといけない、という気持ちが強いですね。
(1区の)田中秀幸(32)は中部予選の後に脚が痛くなることが多いのですが、今年はそれがなく、順調です。経験値が高いことも信頼できます。
 懸念材料は2区のインターナショナル区間ですが、20~30秒差で抑えてくれたらまずまずです。3区以降でしっかり詰めて、優勝戦線にもどしていきたい。
(3区の)太田は去年は故障もあって年間を通じて活躍できませんでした。今年は年間を通して高いレベルで走れています。
(4区の)西山雄介は中部予選では羽生拓矢(トヨタ紡織・25)選手に詰められましたが、今の羽生選手は本当に強いので、西山だからしのぐことができたと思っています。ニューイヤー駅伝に向けては気持ちが入ってきて、練習を引っ張ると申し出てきてくれました。
(5区の)丸山は中部予選は1区でしたが、自信を持って起用しました。向かい風も大丈夫な選手です。
(6区の)西山和弥は中部予選では29秒詰められましたが、そのあとの八王子ロングディスタンスに向けて立て直しました。練習は順調で悪くありません。
(7区の)服部は10月中旬から練習を再開しました。佐藤さんと低酸素室で気合いを入れてやっていましたね。中部予選の前くらいからチーム全体の流れに加わりました。

前回6位・黒崎播磨
澁谷明憲監督
「2区、3区で順位を上げて4区の細谷でトップに立つ。その展開しか勝ちパターンはありません」

 田村友伸は1区も考えましたが、6区起用は勝負どころで(チームの)力を出し切りたいと考えたからです。“田村の血”ではありませんが(笑)、友伸の成長を考えても、今回の6区は重要になるんじゃないですか。
 友伸を6区に持って行けたのは、1区の小田部真也(23)の状態が上がってきたからです。シトニック・キプロノ(21)が加入して2区も強くなったので、前回より上の位置で3区の田村友佑にタスキを渡すことができます。2区、3区で順位を上げて4区の細谷でトップに立つ。ウチはその展開しか勝ちパターンはないでしょうね。
 5区の土井は攻めの走りができれば、先頭を走ることができます。練習はできているのでエース区間を走る力も、マラソンでもっと走る力もある選手です。気持ちの変化があれば、きっと覚醒してくれます。
 7区の中村優吾(22)は九州予選もアンカーで、格上の選手ばかりのプレッシャーのなか、よく走ってくれました。九州予選はニューイヤー駅伝を想定した区間配置をしましたが、トップを堂堂と独走してくれた。良いシミュレーションになったと思います。
 前回は4区の細谷で2位まで上がることができました。そこが分岐点になったと思います。次は優勝したい。その思いが選手たちに生じたことで、意識改革というか、選手たちの目線がさらに高くなりました。それが九州予選の初優勝になり、九州予選で独走したことがニューイヤー駅伝にもつながります。
 プレッシャーはあって当たり前。それを感じて走り、それを楽しめたら浮き足立つことはありません。いつも通りに体調を仕上げてパフォーマンスを出すだけです。

前回9位・GMOインターネットグループ
亀鷹律良監督
「3区の大迫君は、ベストの8~9割くらいまで戻してきています。4区の吉田、5区の今江でトップに立つことができる」

 最低でも3位以内、という目標で走ります。
(レースプランは)5区の今江ではトップに立ちたい。ベストオーダーが組めているチームが少ないなか、ウチはほぼベストで組めています。そのメンバーでスタートラインに立てるのは強みです。それを考えたとき4区の吉田、5区の今江でトップに立つことができるかな、と思っています。
 3区の大迫君は練習を見ていると、ベストの8~9割くらいまで戻してきています。高橋尚子さんとの対談では前を追った方が楽だと話していましたが、前を追うスピードは確かに戻っています。(5km通過が13分30秒くらいでも)十分対応できそうです。しかし単独走になっても、どういう状況でも走れる準備はしていますね。
 4区の吉田は予定していたシカゴ・マラソンには出られませんでしたが、大迫君から1本マラソンを走った方が良いとアドバイスされて、2時間11分28秒で米国でのトレーニング成果を確認しました。それなりに自信になって、帰国後の駅伝に向けて長めの距離の練習もできています。本人が細谷(恭平・黒崎播磨・27)君と戦いたいと、4区を志願してきました。
 5区の今江は冷静なものの見方ができる選手です。駅伝の全国大会は初めてですが、どういう状況でもどういう走りをしたらいいか、判断できます。ルーキーですが心配ありません。
 6区の一色恭志(28)も駅伝は強いですし、7区の渡邉利典(29)も2年前に3区でトップに立ったように、駅伝への思いが強く、アンカーでもしっかり走れる選手です。
 ベストメンバーが組めたのは、大迫君が米国式の調整を提案してくれた結果です。日本では調子を上げるために叩いて、叩いて、という練習を行いますが、叩く練習は2週間前までにして、その後は良いコンディションにするために練習を落として来ました。スタートラインに着いたときにピークアウトしていた、ということにならないためです。そこを徹底させてきたので、走るべき選手がスタートラインに立てるのです。
(優勝も)行けるんじゃないか、という思いもちょっとありますよ。

前回12位・富士通
高橋健一監督
「4、5、6区で上がって行って、欲を言えば6区終了時に最低でも20秒引き離してくれたら」

 4区は横手に適性があると判断しました。過去に走った経験もある。東日本予選4区で区間賞を取るなど好調ですし、その後も故障なく、いつになく順調にここまで練習をしてきました。マラソンを目指し始めて、(練習を含めて)駅伝の距離くらいしっかり走れて当然、という意識になれた。トータルで練習ができるようになりました。
 5区の塩尻は最長区間を遠慮していましたし、5区なら経験もあって安心感がある。
 6区の浦野は、そこで勝負をつけてくれ、という起用です。区間賞を取るとかして、とにかくトップに立って後続と差をつけてほしいですね。
 7区の潰滝大記(29)は走りのタイプを考えたらスピードの出る前半区間向きですが、7人のメンバーから外す理由がなかった。本番にしっかり持ってきてくれました。
 3区の坂東でトップに立ちたいですけど、そこまで甘くないでしょう。4、5、6区で上がって行って、欲を言えば6区終了時に後ろを最低でも20秒引き離してくれたら。
 中村匠吾(30)と鈴木健吾(27)のマラソン・コンビを駅伝で使わないことは、4月くらいの段階で決めていました。その2人も、トラック・駅伝を目指すメンバーも、混乱なく取り組んで東日本予選も優勝できた。早く伝えてよかったと思っています。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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