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2021年4月25日放送 風をよむ「憎しみのウイルス」

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緊張した表情で時間を確認する母親。その手を握りながら周囲を警戒する娘…。

今月の雑誌「ニューヨーカー」の表紙イラストです。ニューヨークの地下鉄のプラットホームで、アジア系と見られる母と娘が電車の到着を待っています。

この絵からは、今、アメリカで、アジア系住民が抱える、深刻な暴力への不安が伝わってきます。

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「有罪!」

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去年、アメリカで人種差別への抗議活動が広がるきっかけになった、黒人のジョージ・フロイドさん死亡事件。

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20日、フロイドさんを死亡させた罪に問われた元警察官に、ミネソタ州の裁判所が有罪の評決を下しました。

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黒人女性「転換点と言えると思います。私たちは成し遂げることができると知ったのです」

評決をうけて会見した黒人初の副大統領・ハリス氏は…

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ハリス副大統領「評決は平等な司法に近づく一歩となりましたが、私たちにはまだやるべきことがあります」

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テニスの大坂なおみ選手も、ツイッターで、「お祝いのツイートをしようと思いました。でもこんな当たり前の評決を祝うことに悲しくなりました」と書き込みました。

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黒人への差別に、ようやく司法も厳しい姿勢を見せたアメリカ。ところが、その一方で今、深刻化しつつあるのが、アジア系住民を標的とした「ヘイトクライム=憎悪犯罪」です。

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先月29日、インターネット上に投稿された映像。ニューヨークの地下鉄で、繰り返し殴られているのはアジア系の男性。さらに男は男性を殴ったあと、首を圧迫します。

他の乗客音「ストップ、ストップ…」

そして、男性が意識を失うと、そのまま立ち去ったのです。

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駅構内で次々と襲われるアジア系住民。地下鉄だけではありません。

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空手・アメリカ代表 國米 櫻(こくまい・さくら)選手「男が口頭で嫌がらせをし始めました。ショックでその瞬間は何が起こっているのか理解できませんでした」

今月1日には、ロサンゼルス近郊の公園で、東京オリンピックの空手にアメリカ代表として出場が決まっている國米選手が、見知らぬ男から「負け犬、帰れ」と暴言を吐かれました。

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男「こっち見るな、近づくな。チャイニーズ!サシミ!」

その後、男は同じ公園で韓国系の夫婦を殴ったとして逮捕されたのです。こうした状況に、アジア系住民からは抗議の声も上がっています。

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先月、オハイオ州の町議会で、アジア系の理事であるリー・ウォン氏がこう訴えました。

ウェスト・チェスター区理事会 リー・ウォン会長「アメリカ人に見えないからと私の愛国心に疑問を持つ人がいます。彼らはこの顔しか見てないのです。見せたいものがあります」

先月、オハイオ州の町議会で、アジア系の理事が、陸軍時代に負ったという傷跡をあらわにし、アメリカで広がるアジア系住民への暴力に、抗議の意を示したのです。

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リー氏「これは陸軍で従軍中にできた傷です」

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一方で、差別に対抗する動きも。アジア系の高齢者などの外出に付き添うボランティア活動が始まったり、犯罪に備えた護身術講座が開かれたりしています。

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深刻化する差別の背景には、中国から新型コロナの感染が拡大した点や、ここ最近の米中対立などによる対中感情の悪化が影響しているとの指摘もあります。

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そして、アジア系の人々への差別は、アメリカにとどまらず、イギリス、スペイン、オーストラリアなど世界各地に拡大。それを助長しているとされるのが、インターネットのSNSです。

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実際、フランスでは、コロナによるロックダウンが発表された去年10月28日、SNS上に「道で出会った全ての中国人を襲え」「アジア人を狩れ」などと書かれた投稿が拡散。

翌日、公園で卓球をしていたアジア系の学生が「汚い中国人」などとののしられ、殴る蹴るの暴行を受ける事件が起きています。

国際社会に広がるヘイトクライムについて、国連のグテーレス事務総長は

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グテーレス国連事務総長「異なる人々への反感がオンライン上で渦巻いています。憎しみのウイルスに対する社会の免疫を強化しなければならない」

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アジア系ヘイトという「憎しみのウイルス」…。

その拡大を私たちは止めることができるのでしょうか…


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