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2021年9月12日放送「風をよむ~総裁選の行方」

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相次ぐ出馬表明で、本格化する自民党総裁選。現職・菅総理の不出馬によって、にわかに盛り上がりを見せています。

街の声は―
「国がどうあるべきかっていうことを皆さん主張してもらいたい」
「甲乙つけがたい…やっぱり1番はコロナ対策」
「リーダーシップとれる人がいいんじゃないですか」

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往々にして、次の総理大臣を決めることにもなる自民党総裁選。そのイスを巡る争いでは、党内の「派閥の力」が大きく左右してきました。

ところが今回の総裁選では、派閥内で候補がまとまらず、若手が自主投票を呼びかけるなど、変化が見られます。

かつては、派閥同士の激しい権力闘争が大きな政治的混乱をもたらしたこともありました。その最たる例が…

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1979年のいわゆる「40日抗争」。この年の総選挙の敗北を受けて、責任を問う福田派、三木派、中曾根派らに対し、田中派の支援をうけた大平総理が徹底抗戦。党内は未曾有の混乱に陥ります。

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浜田幸一議員(1979年)「断っておくけどな、かわいい子どもたちの時代のために自民党があるということを忘れるな。おまえらのためにだけ自民党があるんじゃないぞ」

仁義なき戦いとも称された、激しい党内抗争が繰り広げられたのです。

日本の政治を大きく動かしてきた自民党内の派閥の存在。背景には、かつての中選挙区制のもと、同じ選挙区で自民党議員同士が票を争い、多額の政治資金が必要だったことがありました。

派閥はそうした資金を配り、領袖が権力を握るため、所属する議員らが一致して活動する、いわゆる「派閥政治」が横行したのです。

こうした派閥政治の功罪について、一橋大学大学院の中北教授は…

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一橋大学大学院:中北浩爾教授(日本政治史)「政党間の政権交代ではなく自民党内の疑似的な政権交代がなされた。それによって競争が起き、その活力が時代に変化する対応力を自民党に与えるという役割があった。その一方で、派閥の合従連衡の過程で、お金という要素が介在し、金権腐敗体質というものを自民党にもたらした」

この「政治とカネ」の問題が大きく表面化したのが1988年のリクルート事件です。その後、選挙制度改革が行われ、派閥のメリットが少ない小選挙区制に移行。さらに、派閥政治にとって転機となったのが…

2001年、総裁選に勝利し誕生した小泉政権。派閥や族議員を、既得権を持つ「抵抗勢力」と厳しく非難しました。

小泉純一郎首相(当時)「この自民党の派閥論理こそ、ぶっ壊さなければならない」
 
2005年の総選挙では、郵政民営化に反対する勢力に公認を与えない といった、トップダウンの政治が、派閥弱体化の一因となったのです。

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さらに2009年の総選挙で、民主党政権が誕生し、自民党が下野すると、無派閥の議員が増加。一時その割合は36%にも達しました。

その後、自民党が政権復帰すると、再び派閥に属する議員が増えます。しかしそこに新たな問題が浮上してきたのです…。

2014年、安倍政権のもと、中央省庁の幹部人事を一元的に管理する「内閣人事局」が発足。官邸主導で人事が行われ、官邸への権力集中が進みます。

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またかつては「派閥均衡」「派閥順送り」などといわれた内閣の人事も、総理が一本釣りするといったように、官邸の力が増し、派閥の力を弱めることになったのです。さらに…

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一橋大学大学院:中北浩爾教授(日本政治史)「政治資金制度改革が行われたことによって派閥が企業団体献金を受け取れなくなる。派閥の集金力は著しく減退した。それに対し、党の方は 巨額の政党交付金を受け取れる。政治資金を巡るパワーバランスが、『派閥』から、『党を運営する執行部』に移った」

その顕著な例が、おととしの参院選を巡り、公職選挙法違反で有罪が確定した、河井案里元参院議員の陣営に、党本部から1億5千万円という巨額の資金が渡ったケースだといいます。

そして、安倍政権を引き継ぐ形で誕生したのが菅政権でしたが、その菅総理は、総裁選出馬を断念します。

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菅首相「私は派閥ありませんので、そういう意味で、(立候補すれば)自ら、いろんな行動をしなきゃならない」9日(木)

今回の総裁選は、自民党政治の今後を占うものだと、中北教授は言います。

一橋大学大学院:中北浩爾教授(日本政治史)「やっぱり派閥の力が弱くなって、とにかく主流派になりたい、勝ち馬に乗りたいという風に行動する。しかし自民党全体で見れば、頭でっかちの官邸主導というのは極めて脆いんです。忖度、萎縮という感じになって党の機能が弱くなった。そんなに党の機能が弱くなって大丈夫かと」

今月29日に迫った自民党総裁選。どんな力学が働き、新たな総裁が選ばれるのでしょうか―。

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