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2020年2月16日「風をよむ~感染症から見えた中国~」

・武漢の実情を発信し続けた市民ジャーナリストが行方不明に

・情報統制に走る中国 初期に警告した医師を訓戒処分に

・武漢市トップ、湖北省トップも更迭に…

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“市民ジャーナリスト” 陳秋実氏
「私の前にはウイルスがあり、後ろには中国の法と行政が控えている。
 でも頑張ります。私は報道を続けます。中国共産党は怖くない!」

市民ジャーナリストを名乗り、武漢の実情を伝える動画を撮影し、SNSで発信を続けてきた男性。

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“市民ジャーナリスト” 陳秋実氏
「今、私は武漢漢口の駅前にいます」「100人くらいの人が並んで点滴と治療を待っているのが見えます」

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当局の規制をかいくぐり、感染患者で溢れかえる病院内部の様子などを伝えてきましたが、6日から行方不明となりました。

男性は当局に拘束されたか、強制的に隔離されたと伝えられています。

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感染拡大を続ける新型コロナウィルス。こうした事態に、中国政府は当初から厳しい「情報統制」を行ってきました。

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早くから新型肺炎の発生に警鐘を鳴らし、自らも感染して7日亡くなった武漢市の李文亮医師。彼は12月末、SNSの投稿で「デマの情報を流した」として、警察から訓戒処分を受けていました。

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情報統制が強まるなか、日増しに事態は深刻化。10日、習近平国家主席はマスク姿で北京市内を視察しました。
 
中国・習近平国家主席 「みなさんこんにちは」

しかし、市民との握手は…

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中国・習近平国家主席「こういう大変な時期なので握手はやめておきましょう」

また治療を行う病院も視察し、テレビ会議で武漢市の医療関係者を激励しました。

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中国・習近平国家主席
「大きく自信を持ってこの防衛戦、総力戦、人民戦争を戦い抜きましょう。自信をもって取り組めば我々は必ず勝利できます」

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増え続ける患者への対応のため、当局は武漢市内に2つの病院を建設。1つ目の病院は着工からわずか1週間、2つ目もおよそ2週間という突貫工事で診察を行っています。

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他にも体育館などを活用し、人民解放軍の「野戦病院」方式の診療も続けています。

中国事情に詳しい興梠教授は…

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興梠一郎・神田外語大学教授
「政治的な力を見せつけるというか、これだけの施設を一挙に作れるんだと。SARSの時も北京郊外の小湯山という所にバーンと作った。国民に対して安心させるというのもあると思うし、世界的にちゃんと中国がやっているんだというのを見せたいと。実際にそれが効果があるのかどうかっていうのは、別の問題」

さらに習近平指導部は、中国社会に広がる不安の沈静化に躍起となって取り組んでいます。

10日、武漢市トップの馬国強書記は市の検査態勢は万全であると発言しました。

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武漢市党委員会 馬国強書記(10日)
「武漢市全市民の99%の検査を終了しました」

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ところが、この発言に対し、SNS上で「うちには調査は来ていないから自分は残りの1%なのか」、「信じられない」といった批判的な市民の書き込みが相次ぎます。

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すると、中央政府は13日、批判を浴びた武漢市トップの馬国強書記、さらに湖北省トップを相次いで更迭したのです。

興梠教授は、この人事に習指導部の焦りが見られると指摘します。

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興梠一郎・神田外語大学教授
「湖北省と武漢市のトップに公安のキャリアが長い人をつれてきた。習近平氏は『治安維持』の問題、『社会不安』の問題を怖がっている。失業者が大量に発生したり、民衆の抗議運動が起きたり、ウイルスの対策も先が見えない状況で社会の安定を一番優先している」

さらに感染拡大の影響は、今や世界経済のエンジンともなった中国経済に及んでいます。

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国営中央テレビによれば、習近平主席は「経済への影響を極力小さくしなければならない」と危機感を示し、「大規模なリストラを防ぐ必要がある」と対策に乗り出す姿勢を強調。経済の落ち込みをどうにか防ごうと苦慮しています。

こうした中国政府の対応について興梠教授は…

興梠一郎・神田外語大学教授「経済がものすごいダメージを受けますんで、とにかく生産活動は開始するという方針は打ち出している。経済の回復が先にあって、感染症の問題が二の次になってくる。そうすると経済活動と連なる形でウイルスを拡散してしまう。北京と上海で大規模感染が起きるとほんとに大変なことになる。経済とウイルスの封じ込め、これを同時にやらなきゃいけない」

4月にも習近平国家主席の来日が予定される中、今後の中国政府の対応に注目が集まっています。

中国・習近平国家主席「我々は必ず勝利できます!」

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