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2020年11月1日「風をよむ~核兵器禁止条約発効へ」

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アメリカとロシアの核戦争。これはプリンストン大学の研究チームがシミュレーションしたものです。1発の核兵器の使用が引き金となって核戦争が起きた場合、最初の数時間で3,410万人が死亡し、5,740万人が負傷すると予測したのです。

この核兵器を巡って先日、大きな動きがありました。

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24日、「核兵器禁止条約」を批准した国と地域が50に達し、来年1月の発効に至ったのです。

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核兵器の開発、保有、使用などを全面的に禁じたこの条約は2017年、国連で採択され、3年の歳月を経て、ようやくここまでこぎつけました。

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長崎原爆被災者協議会・田中重光会長
「感激です。やっと(被爆から)75年経ってこの条約ができたということ、道半ばで亡くなっていかれた先輩たちにありがとうと言いたい」

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しかし、この条約に参加していないアメリカ、ロシア、中国などの核保有国には条約の効力は及びません。またアメリカの「核の傘」に依存する、被爆国・日本もまた参加していません。

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加藤官房長官「わが国のアプローチとは異なるものであることから、署名は行わないという考え方をこれまでお示ししましたが、その考え方は変わりはない」

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またAP通信は21日、アメリカが複数の条約批准国に、批准撤回を求める書簡を送り、条約の発効を遅らせるため、水面下で圧力を加えていたと報じています。

長崎大学・核兵器廃絶研究センター長の吉田さんは、日本の役割について・・・

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吉田文彦・長崎大核兵器廃絶研究センター長 
「この条約のグラウンドゼロといいますか、原点は広島・長崎にあるわけで、『広島・長崎条約』と名付けてもいいぐらい日本と深い関係がある条約。発効一年以内に締約国会議を開くことになっている。オブザーバー参加国として、日本がアイデアを出していくのも1つの方法」

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75年前の1945年、アメリカが広島と長崎に原爆を投下して以来、冷戦の激化に伴って始まった核軍拡競争。1962年のキューバ危機では、アメリカとソ連が核戦争直前にまで至りました。

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そして現在、核保有国5か国に、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮を加えた9か国の核弾頭の数は、合計1万3410発ともいわれています。

こうした核兵器が誤って使用されてしまうことは、本当にないのでしょうか?

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クリントン政権下で国防長官を務めたウィリアム・ペリー氏の著書「核のボタン」。ここで核戦争のリスクをこう語っています。

「トランプ大統領にとって、核戦争を始めることは、ツイートを1つ送信するのと同じくらい簡単だ」

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本の中では、付き添いの軍人が持ち運ぶ黒カバンにおさめられた「核のボタン」を、誤った情報などで、大統領がいかに簡単に押せるか、その危険性を指摘しています。

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さらに目前に迫った大統領選挙についても、ペリー氏は、「核のボタン」を持つにふさわしい指導者が、本当に正しく選ばれるのかどうか、強い懸念を示しています。

こうした核保有国のリーダーを巡る不安に加え、核戦争のリスクを高める、もう一つの不安材料があったのです―

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7月、イラン中部ナタンズにある核関連施設で発生した火災。ロイター通信は、複数のイラン当局者の話として、「サイバー攻撃があった」と伝えました。

火災があった核関連施設を巡っては、過去にも、イスラエルがサイバー攻撃を仕掛けたと指摘されています。

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これは、世界中でサイバー攻撃が今どれくらい起きているかをリアルタイムで表示したものです。まるでミサイル攻撃のように、国境をまたいだサイバー攻撃が常に飛び交っています。

核施設を管理するコンピュータに侵入し、そのコントロールを奪うなどする「サイバー攻撃」。その結果、核物質が拡散したり、実際に核兵器が発射される事態が生じたら…

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吉田文彦・長崎大核兵器廃絶研究センター長 
「核システムが複雑化して、巨大化すればするほど、どこかに隙が出て、核兵器そのものをテロリストが使うというよりも、核システムをテロ集団が攻撃するようなことが以前よりも起きやすくなる。場合によっては平和利用の原子力を攻撃する恐れだってないわけじゃない」

現実の問題として考えなければならない核戦争の脅威。広島で被爆し、長年その悲惨さを世界に訴えてきたサーロー節子さんは、声明でこう語っています。

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サーロー節子さんの声明「今は祝うべき時ですが、安心していい訳ではありません。世界は今までになく危険となっています。完全な核廃絶という目標に達するには、まだまだ長い道のりがあるのです―」

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