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2020年8月9日「風をよむ ~“コロナ禍の原爆の日”~」

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カボチャのようなずんぐりとした形の物体。こんなモノが、突然、空から降ってきたら・・・。そんなことが実際、75年前に起きていたのです。

通称「パンプキン」と呼ばれるこれ、実は、原子爆弾の模擬爆弾。長崎に投下された原爆とほぼ同形で、中には通常火薬が入っていました。

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春日井の戦争を記録する会・金子力代表
「(原爆は)どういう弾道特性があるのか、まだ米国にとっても未知というか。落とすときのシミュレーションとしての爆弾ですね」

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広島・長崎に原爆が落とされる前から米軍は模擬原爆を投下していて、その数は18都府県で49発。これにより、400人以上が死亡したとされます。

原爆にまつわる、75年前の事実。それは、アメリカ西部でも・・・

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アメリカ・ニューメキシコ州の「トリニティ・サイト」。広島、長崎への原爆投下直前の、1945年7月16日、ここで、人類最初の核実験が行われました。

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爆発で大量のプルトニウムが放出され、周辺地域の水や食物が汚染。その後、がんを患い、死亡する人が相次いだと周辺住民は証言しています。

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実験から75年の節目に、町の博物館がオンライン展覧会を開催。

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そこには、広島県出身で米国在住の芸術家、川野ゆきよさんの作品も。

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広島で使われた「リトルボーイ」には、祖母の着物を、長崎の「ファットマン」には、終戦当時の現地の新聞を素材にしています。

被爆3世の川野さんにとって、地域の人々にとって、「原爆」とはどういう存在なのでしょう?

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芸術家・川野ゆきよさん(広島出身)
「彼らの誇りでアイデンティティなんですね。同時に、大変多くの人が被爆している。その被爆の話を聞いたときにすごい理解をするんですよ、彼らの苦しみじゃなくて私の苦しみなんですね」  

様々な立場の人が、様々な思いを持って迎えた、原爆75年の節目。

この木曜日、「原爆の日」を迎えた広島での、平和記念式典。新型コロナウイルスの影響で、 一般の参列が見送られるなど、例年よりも、大幅に規模が縮小されました。

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松井一実広島市長
「今、私たちは、新型コロナウイルスという人類に対する新たな脅威に立ち向かい、もがいていますが、この脅威は、悲惨な過去の経験を、反面教師にすることで、乗り越えられるのではないでしょうか」

新型コロナの脅威を乗り越えるためにも、75年前の原爆の経験を忘れてはならない、と訴えた、広島の松井市長。しかし・・・

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ロシア・プーチン大統領(7月)
「世界に類を見ない最先端技術や極超音速兵器を広く導入する」

アメリカ・中国・ロシアは、競うように、音速の数倍という猛スピードで飛翔する、極超音速兵器の開発に邁進。

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一方、アメリカとロシアの間で結ばれていたINF=中距離核戦力全廃条約は去年失効。
  
さらに、核兵器禁止条約も発効に必要な50の国と地域の批准も得られておらず、国際協調の足取りは重いようです。

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そうした状況を反映するように、去年、世界で支出された軍事費は総額206兆円にものぼり、その4割ほどが、アメリカです。

軍備に投入される莫大な額の軍事費。そこから浮かび上がるのが、今世界が直面する大きな困難です。

 
アメリカの莫大な軍事費。

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核廃絶キャンペーン組織「ICAN」は、アメリカの巨額な核軍備支出を、新型コロナの対策に使えばどうなるかを試算しました。

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その結果、このお金で、集中治療室30万床、人工呼吸器3万5千台、さらに、医師7万5千人と 看護師15万人が確保できることが、わかったと言います。

世界の大国が足並みをそろえて、核開発に使う費用をコロナ対策に振り向けるようなことになれば、世界の状況が大きく変わるかもしれません。
              
100年前、第一次世界大戦による対立で、各国が連帯できない中、スペイン風邪のパンデミックという悲劇を招いた世界は、戦後75年を経て、さまざまな分断・対立の溝を深めながら、今また、新型コロナの脅威にさらされています。
  
松井市長は、広島平和宣言の中で、こう訴えかけました。

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松井一実市長・平和宣言
「こうした過去の苦い経験を、決して繰り返してはなりません。そのためには、私たち市民社会は、自国第一主義によることなく、<連帯>して、脅威に立ち向かわなければなりません」

きょう8月9日。被爆から75年を迎える長崎でも、世界の平和を祈念する式典が行われます。

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