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2021年3月28日放送「風をよむ~ 走り始めた聖火」

式典アナウンス「今トーチに聖火が点火されました!」

木曜日、1年延期された東京オリンピック・パラリンピックの 聖火リレーが、福島県をスタート。今後、およそ1万人のランナーが参加し、121日間かけて47都道府県を回る予定です。

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今回、「復興五輪」を掲げたオリンピックの聖火。それを見守る人々の声も様々です。

観覧者「やっぱり盛り上がってほしいと思います」「しっかり復興している所を見てもらえたらいいんじゃないかな」

片や、双葉町で被災し、今も県外で避難を続ける人からは…、

「誰の目線で『復興五輪』とうたい、聖火ランナーをここで走らせるのかっていうのは、パフォーマンスじゃないかなっていう感じ」

一方で、新型コロナの感染拡大が続く中、沿道では厳しい観覧規制が敷かれ、著名人ランナーの辞退も相次いでいます。

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また今大会最大の放映権を持つアメリカのNBCが、「新型コロナの恐怖のさなか、聖火は消されるべきだ」と批判する専門家の意見を紹介するなど、海外にもその波紋は広がっています

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今月20、21日に共同通信が行った世論調査では、東京オリンピックについて、この夏に「開催するべき」が23.2%。一方で「中止するべき」は39.8%と4割近く、「再延期するべき」(33.8%)と 合わせると7割以上が、開催に後ろ向きです。

街録「まぁいろいろ経済のこととかを考えると、やった方がいいのか、どうなのか…」「何が何でも進めようとしている、東京都とか政府に対しては、ちょっと疑問を感じています」

今回の大会は、2013年の開催決定以降、相次ぐトラブルに見舞われました。

安倍晋三首相(当時)「現在の計画を白紙に戻し、ゼロベースで計画を見直す」

2015年、メイン会場となる新国立競技場案の総工費を巡って批判が集中し、白紙撤回に。大会エンブレムのデザインも、盗作疑惑が浮上し、こちらも撤回。

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また2019年、当時のJOC=日本オリンピック委員会の竹田会長が、招致を巡る贈賄容疑で、フランス当局から聴取を受けていたことが判明。

さらに去年、新型コロナ感染拡大によって開催の延期が決定。そして今年に入っても…

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森会長(当時)「私はそういう意図で、ものを言ったわけではないんだが“女性蔑視”なんて事を言われまして…」

女性蔑視発言を発端に大会組織委員会の森会長が辞任。さらに今月、開会式の演出統括者が、女性タレントの容姿を侮辱する演出を提案していたことを認め、辞任する事態も起きました。

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「世界一コンパクトなオリンピック」を目指した、大会の経費を巡っても、招致段階で7340億円とされたたものが、延期もあって膨れ上がり、既に1兆6千億円を超えています。

大会組織委・武藤敏郎事務総長
「これを高いとみるか、どうみるか、いろんな見方があるかと思う」

開幕まで4か月をきった今でさえ、その是非が問われている東京オリンピック。専門家は…

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石坂友司准教授(奈良女子大学・歴史社会学) 「ラグビーとか、サッカーのワールドカップと違って、やはり五輪は、『何のために五輪をやるのか』、理念的な意義っていうのを考えなければいけない。東京大会は、掲げるべき理念とか意義というのが余り明確になっていなくて、向かっている方向が分からなくなっているのが現状」

では、そもそも「東京オリンピックの意義」とは何なんでしょうか…。

スポーツを通した国際平和を理想に掲げ始まった近代オリンピック。しかし、1984年のロサンゼルス大会以降、その肥大化とともに、商業主義が批判されます。

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その結果、2003年、IOC=国際オリンピック委員会が提案したのが、オリンピック再生のための「レガシー戦略」でした。

開催する都市にとって新たな価値を創出し、「レガシー」=「遺産」として残すことを、オリンピック開催の意義としたのです。

実際、2012年のロンドン大会は、経済的・社会的停滞が目立っていた 首都ロンドンの活性化に大きく寄与したと言われます。

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そして今回の東京大会で、その意義としてしばしば掲げられたのは、「復興五輪」「コロナに打ち勝った証」といったスローガンでした。しかし、いまだ被災地の復興は道半ば。コロナとの戦いも続いています。

石坂友司准教授(奈良女子大学・歴史社会学)
「『五輪を開催すること自体が意義』になっていたんだろうと思う。引くに引けないというようなことが起きてるんだと思います。残り4か月しかないという言い方もありますが、4か月もあります。どういうものを目指すのか、我々が得られるものをもう一度考え、議論を積み重ねていくことで、多少なりとも意義っていうのは獲得できるんじゃないかと」

東京オリンピック開幕に向けたカウントダウンは続いています…。

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