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新型コロナウイルス 専門家会議提言~長丁場の対応を前提とした 新しい生活様式の定着が必要(5月1日)

新型コロナウイルス対策を話し合う政府の専門家会議は5月1日、新たな提言を公表しました。

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■現在の状況分析

院内感染と家庭内感染

・東京の新たな陽性者は4月9日には250人近くに上っていたが、直近(4月29日、30日など)は100人を下回っていて、減少傾向。しかし、増加する際のカーブ、立ち上がりに比べて減少するスピードはやや緩やか。

・東京では夜間の接待を伴う飲食店における感染者は激減している。一方で医療機関や福祉施設での施設内感染や家庭内での感染の割合が増えている。

・4月1日時点での直近7日間の倍加時間は2.3日。5月1日時点での直近7日間の倍加時間は3.8日と長くなっている。

・全国をみると、減少が東京に比べてにぶい。理由は、大都市圏から人が移動し、地方に感染が拡大したことだと考える。

限定的なPCR検査からなぜ感染が減少していると考えられるのか

・日本では、医師が必要と判断した場合および濃厚接触者を対象にPCR検査を実施してきている。このため、感染者のすべてを把握しているわけではなく、感染の実態の一部を把握しているに過ぎない。

しかし、検査件数が徐々に増えている環境の中で、陽性患者が全国的に減少傾向であることや、倍加時間がのびていることなどから、大きな傾向としては減少していると考える。

医療供給体制への影響について

入院2~3週間

平均的な在院期間は約2~3週間程度。

・新規感染者が減少傾向になっても入院患者による医療への負荷はこれから当分続き、医療現場のひっ迫した状況はすぐに解消するわけではない。しばらくは新規感染者を減少する取り組みをするべき。

行動変容の状況について

通勤が減らないと意味ない

・接触頻度について、東京・渋谷や大阪・難波のような地域では年齢群によって達成状況が異なり、30代以上の生産年齢人口の接触限度の減少は8割に達していない。

・10代、20代の若者は教育機関の休校の影響もあり、昼夜問わず8割以上減少した。

・都道府県をまたぐ移動をみても、3~5割の減少にとどまることが多い。通勤圏内にあると考えられる都道府県間の移動についての減少は十分でない。通勤を続ける限り、自粛の要請レベルでは難しい部分がある。


北海道の感染者数の増加について

・医療施設や福祉施設での施設内感染が多発していることもあるが、リンクが追えない孤発例も札幌市内を中心に多発している。

・緊急事態宣言後に知事が強く外出自粛を求めたが、その効果が出てくるのはちょうど今頃(5月頭)なので、データに注目。

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■今後の見通し

基本的な感染症対策

抗原をもちいた迅速な診断キットの使用など、早期診断から重症化予防までの治療法の確立に向けた明るい兆しが見えつつあるが、諸外国の感染状況やそれに対する対応等も踏まえると、国内における感染状況に応じて、持続的な対策が必要。

・流行状況の変化については。残念ながら、感染の拡大が厳しい状況から、少し落ち着けばそのまま終わりということではない。その後に北海道のように、また波が来る可能性があると考える。

・迅速診断キットや治療薬など様々な努力が実り、早期診断から治療ができれば、今の不安が解消される。そうなれば良いというのが我々の期待。

・ヨーロッパのようにオーバーシュートしていたかもしれないが、国民が不自由に耐えてくれてたおかげでオーバーシュートせずにおさえることができた。心から感謝している。

・したがって、もうしばらく基本的な感染症対策を続ける。人との距離を保つ、3密の回避、手洗い、うがい、マスクの着用など。職場や学校、様々なところで工夫をしてほしい。

▽陸上自衛隊の感染予防策を紹介した記事はこちら

地域に応じた対策について

・緊急事態宣言下での前例のない対策により、日本の新規感染者数は減少傾向になったが、当面は今行われている枠組みを維持するべき。理由は・・・

①収束のスピードが期待されたほどではない
②医療提供体制が十分に整備できていない地域がある
③知事のリーダーシップがこれからも必要

・一方で感染状況は地域で異なるため、全国的に感染者が減少するまで、感染の状況が厳しい地域と、新規感染者数が限定的になった地域の2つにわかれることになる。

徹底した行動変容の要請が求められる地域における留意事項

学校と公園

・対策の長期化に伴う、市民生活への多大なる悪影響や「自粛疲れ」
が懸念される。

・感染拡大を収束に向かわせていくためには、市民の持続可能な努力が必要。しかし、社会的に必要性が高い活動であり、かつ様々な工夫により感染リスクを十分に下げられる事業などについては、制限を一部徐々に緩和していくことも検討する必要がある。

・一例として学校や公園などの取扱いについて検討していく必要がある。

徹底した行動変容の要請を維持するか、緩和するか

・徹底した行動変容の要請を維持するか、緩和すべきかの判断基準。様々な要素を鑑み、総合的に判断する必要がある。

①感染が一定範囲に抑えられていること(疫学的な評価)
◆新規感染者数、倍化時間、色々な公衆衛生学的な指標の水準が十分に抑えられていること。
◆ 必要なPCR等検査が迅速に実施できることも非常に重要。

②医療提供体制が確保できていること(医療の状況)

◆医療機関の役割分担の明確化や患者搬送の調整機能が確立されているか。
◆病床の稼働状況を迅速に把握・共有できる体制が構築できているか。重症化対策といっても、軽症者が重症化したりするので、なかなか見えにくい。そういう部分を見える化する努力も必要。
◆軽症者等に対応する宿泊施設等が確保できているか。

感染者数が減ったり出なかったりしたとしても、医療提供体制がしっかり確保されていなければ緩和は難しい。

行動制限を緩和した地域について

・新規感染者が限定的になった地域でも再度蔓延しないためには、長丁場の対応を前提とした新しい生活様式の定着が必要になる。職場や学校などさまざまなところで工夫していきたい。

「1年以上」など、緩和の時期を明確に言えるウイルスではない。その都度、指標をもとに評価をして、必要なら対策することが大事になる。

・再度蔓延した場合には徹底した行動変容の要請をもう1度お願いする必要がでてくるかもしれない。

医療提供体制について

医療体制

・保健所の職員が本当に疲弊している。効率的な感染症対策や保健所の支援の徹底を知事を中心にお願いしたい。

・医療崩壊を防ぎ、重症者をなるべく低いレベルにおさえるのが最大の重要点。医療機関ごとの機能分担がさらに加速されることを願う。

・院内感染、施設内感染をおこさない状況をつくるのが大事。

・患者搬送コーディネーターや空床の把握など、都道府県の調整機能を知事が指名して、責任を持ってやってほしい。

・コロナウイルスのための病床確保だけでなく、ほかの疾患の治療をしっかりする必要もある。

PCR検査の体制強化もぜひお願いしたい。迅速診断キットも早期に使用可能にしていただきたい。PCR検査は現状、公的な数のみの把握で民間の数が報告されていない。民間の数も把握できればもっと正確な分母になるが、入院した人が複数回検査している場合もあり正確な数を把握することが難しい。こうした課題を解決しようと政府にお願いしているところ。

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学校の再開について

・学習機会が失われていることについて、専門家会議としても非常に憂慮している。学習機会を保証していくために、学校の感染リスクをできるだけ低くした上での、学校活動の再開についても考えていただきたい。

・生活圏の中での感染者をみた上での慎重なる再開になる。教育者とも共有できるようなプラットフォームのようなものが必要と考える。

・その対応について、早急に示す必要がある。

社会課題(差別、偏見、DV、虐待など)についての対応

虐待加害者

新型コロナウイルスの影響でつらい思いをしている人が多くいると受け止め

◆感染者、医療従事者などへの差別や偏見。家族へのいじめ。
◆長期の外出自粛によるメンタルヘルスへの問題。
◆DV問題や児童虐待の問題。
◆休業中のひとり親家庭の問題。
◆営業自粛などによる、倒産、失業、自殺。
◆1人暮らしの高齢者。
◆高齢者の健康維持、介護サービス。
◆亡くなった方に対して、尊厳を持ってのお別れや葬儀が行われるための適切な感染症予防の周知。最後のお別れをきちんとできるように。

こうした課題に対応するために必要な支援をとっていく必要がある。

▽DV、虐待、差別などで悩む人のための相談窓口をまとめた記事はこちら


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会見の中で、専門家会議の尾身副座長は

国民の多くの人が大変厳しい中、不自由な生活、仕事に耐えてくれて、ここまでオーバーシュートを避けて下方の方に、収束の方に向かうことができた。我々は本当に心から感謝しています。

と述べました。

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新型コロナウイルス特設サイト

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