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転職活動の前に認識齟齬をチェック。スカウトは入社確約ではない ~ 改めて整理するスカウト・面談・選考・オファーまでの意味

スカウトをもらったとき、受け手の印象は様々です。例えばこんな印象を持つ方もおられるかもしれません。

「あなたは素晴らしい経験・スキルをお持ちだと思うのでぜひ入社してほしいです」

実際のところ、スカウトする企業目線だと以下のような温度感が標準的かと思います。

「あなたは私達が求める人かもしれない。私達もあなたが求める会社かもしれない。それを確かめるためにまずはお話しませんか?」

これはカジュアル面談のお誘いをする場合です。初手から選考参加を期待する場合は、最後の「まずはお話しませんか」の部分が「もし興味を持っていただけたら選考に参加いただけませんか?」になります。

前者だと思っている候補者さんと後者だと思っている採用企業には大きな隔たりがあります。こういった認識齟齬が発生すると、この候補者の方から企業に向けた印象は

「自分で誘ってきたのに不採用にするなんて意味がわからない」

となります。しかし、よくよく自身が採用する立場にたってみて考えてみると、まだお会いしていない候補者の方が採用媒体や公開プロフィールに出している情報のみで本当に入社してほしい方か判別することは困難です。よほど事前に深い交流があり、相手がカルチャーマッチするか、実力面で十分か確認するまでもない、という確信を持てる状況になっていないと声がけ時点で入社前提でお声がけすることはほとんどないのではないでしょうか。

もちろん、齟齬が発生した際に、候補者さんが悪いわけではありません。候補者さんは採用のプロではありませんし、転職活動の機会は人生においてさほど多くありません。スカウト、面談、選考、オファーなどの正確な意味合いを知らなくても仕方ない面もあります。そこで、この記事では改めてスカウト・面談・選考・オファーなど、採用に関わる概念が持つ意味を整理して、転職活動をする方と企業の採用担当との認識齟齬を減らしたいと思います。

スカウト

スカウトは、組織のカルチャーへのマッチや求人枠が求めるスキル要件に一致する可能性があると考えられる方へのお声がけです。
ファーストステップはカジュアル面談の場合もありますし、書類選考の場合もありますし、一次選考の場合もあります。共通するのは、スカウトは入社や選考通過を確約したお声がけではない、ということです。
一般的に、入社を前提にしたお声がけはヘッドハンティングの場合に発生します。また、ヘッドハンティングだから常に選考がなく、入社確約かというとそうでもありません。他の選考と同様に選考が実施されることも多くあります。ここでややこしいのは、ヘッドハンティングとは名ばかりで普通のスカウトとなんら変わらないが、お誘いの言葉にはヘッドハンティングと添えられているケースもあることです。

面談

合否を伴わない、情報交換の場です。最近よくあるカジュアル面談が一番よくある面談でしょう。次に、合否を伴わない場だが、候補者さんが会いたい人に会っていただく場合や、企業がぜひ会ってもらいたい魅力的な人を引き合わせるための「魅力付けのための面談」があります。例えばエース技術者や役員と会っていただいたり、ご本人がキャリア上大切にしていることを実例として説明できる方の参加です。目的としては入社意向を高めたい方への魅力付け(採用領域ではアトラクトと呼ぶ)です。

選考

合否を伴う場です。ほぼ同義で面接と呼ばれることもありますが、面接はあくまで選考の手段です。面接の他にスキル判定の選考などもありえます。
ここでは候補者さんがカルチャーマッチするか、スキルマッチするかなどを確認することになります。

バックグラウンドチェック

経歴に詐称がないかなどをチェックするのがバックグラウンドチェックです。

リファレンスチェック

カルチャー、スキル面で活躍を期待できる方なのかを確認したい。もしくは入社後の育成・立ち上げ支援のためのどんなところに留意すればいいか前提情報が欲しい。
そのような理由のために、前職やそれ以前に一緒に働いた複数の方に複数の項目からなるアンケートを実施し、欲しい情報を収集する手法です。2名指名していただくことが多いようです。
基本的に、候補者さん本人にリファレンスをとりたい相手を指名していただき、候補者さん本人と指名相手双方の承諾を得てからアンケートを実施することになります。逆に、無許可で聞き込みをしているケースは違法です。

オファー

選考を経てぜひ入社いただきたい、という方に年収をはじめとした労働に関わる諸条件とともに内定を伝えます。多くの場合、この場面で最後の魅力付けを実施することになります。強く口説く会社もあれば、あっさりした会社もあるでしょう。是が非でも入社いただきたい場合で、選考競合がいる場合はキーマンとの追加面談が設定されることもあります。

ちなみにもともと記事タイトルにあった入社確約については、通常このオファー段階になってようやく得られるものです。年収も選考を通して候補者さんへの評価が定まり、オファーをする段階ではじめて正式なものが提示されます。採用枠への大枠の期待年収範囲が求人票に記載されているかと思いますが、その範囲のどの金額になるのかは選考評価次第です。場合によっては採用枠に収まらない高評価で、記載されている以上の金額になる可能性もあるでしょう。

ここでもらったオファー条件を元に入社有無を判断することになります。

まとめ

以上が選考の各フェーズに関わる概念の意味です。この記事で認識齟齬が少しでも減り、よりよい転職活動をできる方が増えれば嬉しいです。

補足

ここにまとめた情報は一般的にお行儀よく採用活動をしている企業を基準にしています。

例えば、

・カジュアル面談なのに選考をする
・スカウトなのにヘッドハントであるかのように過剰に期待をもたせるお声がけをする

などのケースは考慮外としています。それらは普通に残念なケースですね。

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