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体を動かすことは考えること

ペルーから一時帰国して2ヶ月半が経った。
「待機」「自粛」の名の下にすっかりと思考停止していた私だったけれど、6月に入ってから、昨年協力隊の訓練所に入るギリギリまで仕事をしていたところで再びお仕事をさせてもらえる機会をもらったり、1週間前から縁あって地元の農家さんのところへブロッコリー収穫のお手伝いに入っている。

待機の期間が長引くなら、仕事を探さなくてはと思いつつ、自分の専門領域の仕事はなかなか単発や短期でできる仕事があるわけではないから、まともな仕事についたら、再派遣になったときに職場に迷惑をかけるなと思って仕事探しすることに二の足を踏んでいた。
そんなところで北海道は農家の繁忙期に突入。単純に面白そうだと思って登録をしたら早速ブロッコリー農家さんへ行くことが決まった。

朝5時からの収穫作業へ行くために、朝4時に起きて支度をして、車で20分ほどの農家へ行く。収穫が終わるのは大体8時から9時の間。収穫量が多い日は10時になることもある。早朝から4〜5時間黙々とブロッコリーを収穫する。採って、歩いて、採って、歩いての繰り返し。

合間に農家のお父さんにブロッコリーの見分け方を聞いたり、ギリギリのサイズは今日は採るか残すかを聞いたりする。日によって、採ってと言われることもあれば、今日は迷うやつは残していいよ、と言われたりする。
翌日のお天気とか、土にどのくらい水が入ってるかとか、今日どのくらい採れそうかによって変わる。

私はその話を聞くのが面白くて、聞けば聞くほど心理臨床の世界と近く感じたりする瞬間がある。畑を歩いて、様子を見て、毎日それを繰り返していると、畑が毎日毎日変化していくのがよくわかる。学校でスクールカウンセラーをしていたとき、学校に着いたらよく校舎内を歩き回って子どもたちの顔を見ていたことを思い出す。ただ挨拶をして歩くだけでも、今日はなんだかいつもと違う、という印象をもったりすることがある。
ペルーの配属先でも、朝出勤したら、必ず施設内を歩き回って子どもたちに挨拶をして回っていた。10数年の現場での生活がすっかりと自分の中に染み込んでいるんだなと感じたし、別に心理の仕事をしていなくても、私の思考はすっかりと心理臨床のやり方に馴染んでしまっていて、それを自分の一つのものさしとして生きているんだなと思った。

畑に入っても同じであることに気付いて、この待機期間中、別に心理の仕事につかなくても、私のスタンスはきっと変わらないな、という自信になった。
今のうちに、ちょっと違うことをしても面白いのかもしれないなぁ。
こんなふうに考えられるようになったのも、畑に出て体を動かすようになったから。体と心はちゃんとつながっていて、体を動かし始めたら一時帰国のがっかりした気持ちとか、悔しい気持ちとか、うまく収まらずにモヤモヤしていたことが少しずつ解れていった。

先週から私が入っている畑で、ヒバリが巣を作って子育てをはじめた。巣にはヒナが5羽いて、農家のお父さんが周りのブロッコリーを採ってしまったら大きい動物に狙われてしまうからと巣の半径1メートル程度のところは採らないようにと囲いをつけた。元気にヒバリきょうだいたちが巣立つのを見守るのが畑に行く一つの楽しみになっている。
今日は朝からたっぷり雨が降っているので、明日のブロッコリーはたっぷり水を吸って「パキン」と元気な音を聞かせてくれそうです。


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