🍎 https://music.apple.com/jp/album/high-winds-white-sky-bonus-track-edition/295111188

 冬を感じる音楽に心を奪われることがよくあります。その理由はきっと私が北国で生まれ育ったからなのかもしれません。グレン・グールド、ジョニ・ミッチェル、キングス・オブ・コンビニエンス、Feist、、、北国出身の彼らの音楽は、私に幼い頃の原風景を思い起こさせます。子供の頃、私は季節の中で冬が1番好きでした。だれも踏み入れていない雪の上に自分だけの足跡をつけたり、近所の友達と力を合わせて見上げるほどの大きな雪だるまを作り上げたり、足がすくんでしまうような急斜面のてっぺんから雪車で思いっきり滑り降りたり。中でも私のお気に入りは、誰もいない雪原に1人寝そべって、舞い落ちる粉雪をいつまでも飽きることなく眺める事でした。澄み切った冬の空と静かに輝く白い世界。こうして考えると、私のかけがえのない思い出の多くは雪にまつわるものばかりです。
 ブルースコバーン「雪の世界」。カナダのシンガーソングライターが、老舗インディペンデントレーベル「True North Records」(素敵なレーベル名ですね)から1971年にリリースしたセカンドアルバムです。私がこのアルバムに出会った時、季節はまさに冬でした。ある街の冬の景色を映し出したモノクロームのレコードジャケットは、まるで私が住む街の冬の1日を切り取ったかのように見えました。このアルバムの1曲めに収録されている「ハッピーグッドモーニングブルース」は、幾度と無くセレクトした思い入れのある1曲です。凛とした冬の透き通るような空気のようなシンプルに響くアコースティックギターの音色は、鼻の奥がツンとする真冬の朝を思い起こさせます。親密に語りかけるような彼のボーカルは、冬の空から差し込む柔らかな日差しのようにいつでも弾く人の心を温めてくれます。ブルースコバーンは、「Good Day To You」と歌い始めます。私は、この曲を耳にする人たちが、幸せな朝を迎えられることを願ってセレクトしました。
 10周年を迎えた「YUSEN for cafe apres midi」。これからも遠く離れた恋人に手紙を書くように、変わりゆく季節の美しさ音楽に乗せて、遠い空の下に住む皆さんにお届けできたらいいなと思っています。北海道の東の空から愛を込めて。

Apres midi Records「Haven’t We Met?」
ライナーノーツより  文 選曲  富永珠梨


https://note.com/tbg2010/m/m77dfc88482e2

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