見出し画像

2018年8月の音楽(とか)のこと

1ヶ月ごとの更新に切り替えて2回目。今回もネタいっぱいだけど、いつかキツくなるであろうときにも、こういうのは細々とでも続けるのが大事というのを常に胸に刻みつけてやっていきたい。今月はサマソニ始め、ライブをいっぱい観ました。しかもどれも本当に素晴らしくて、こんな短期間でことごとく大当たりを引くことはそんなに多くないので、自分のチョイスを褒めてやりたい。もう1つの今月のトピックは「あまちゃん」。そう、あの「あまちゃん」。NHKの連続テレビ小説のあれ。お盆の時期は基本休みのようなものだけど、毎日研究室で数時間の作業があって、自宅を遠く離れられない状況だったので、ならば!と今更も今更、39時間15分に渡る2013年の名作中の名作に初めて挑んだのです。怖くなるほど面白すぎて約2週間でほぼ2周してしまった。前半でじっくりと張り巡らせた無数のプロットのおかげで、後半はそれに則って、重ねて展開していくだけでもう何をしても面白い状態になってて無敵。これをリアルタイムで観れず、5年も放ぽって置いてしまったことに悔しくなるなどする。2013年とかそこら辺はなかなかハードな生活を送っていたので、取りこぼしている名作が色んなカテゴリであるのです。


アルバム

JIL「Emtional Heat 4A Cold Generation」

Okay Kaya「Both」

Tirzah「Devotion」

Twitterでいつも参考にさせてもらっている方が、そういえばおすすめしてたなーとちょっと経ってから聴いたJILのデビュー作が素晴らしい。アブストラクトなエレクトロトラックの上に乗るのは、最近のR&Bらしいファルセット。3曲目「Freak feat. Salomon Faye」は僕の「ベスト・オブ・途中で入るラップが気持ちいい曲」の1つと言っていいほど。Okay KayaとTirzahは音楽性のコアは違うけど、その優しく繊細なボーカルにこの1月強く元気づけられたという点では同じだ。その小さな囁きこそ彼女たちのシャウトなのである。Okay KayaはThe xxを彷彿とさせるエレクトロトラックにフォークシンガーらしい歌が乗るバランスが珍しい。ボイスエフェクトの使いどこも最高に気持ちいいんだけど、そういう曲に限ってビデオ無いので、一番The xxっぽいやつを上に載せときました。Tirzahはトラックはよりミニマルにアンビエント寄りに、曲の骨組みや歌メロはソウル由来といった趣だ。ミニマルなピアノトラックが究極に美しい「Affection」がベストトラック。ぜひ上のビデオを再生してみて。

Conner Youngblood「Cheyenne」

Mitski「Be the Cowboy」

George Clanton「Slide」

先行曲で非常に美しいインディーフォーク・ロックをやっていたConner Youngbloodも期待通り。ボーカルエフェクトの塩梅とか、モロにBon Iverとかそこらなんだけど、アンビエントR&Bとかそっちの方にも目配せするようなトラックもあるところが気に入っている。前作はちょっと無骨すぎる嫌いがあって全くアンテナに引っかからなかったMitsukiが今作はいい。派手で、チープ気味なシンセシーケンスを思い切ってバシッと鳴らすと、彼女の歌とバランスいいんだなー面白い。基本歌メロとかソングライティングが僕には無骨過ぎるように感じたところをアレンジで上手く補ってきたということだ、まとめると。話題沸騰のGeorge Clantonも超面白い。エレポップ、シューゲイザー、ドリームポップ、ヴェイパーウェイブ…ポップミュージックの歴史を華麗に横断するような、混沌としていながら、同時にすっきり洗練されている不思議な作品だと思った。なにより歌がいいし、聴いていて楽しい。僕の中ではThe Avalanchesみたいなものという解釈がしっくりきている。

Blood Orange「Negro Swan」

Devon Welsh「Dream Songs」

Ariana Grande「Sweetener」

Big Red Machine「Big Red Machine」

今月後半はBlood Orange2年振りの新作のそのスウィートっぷりにやられる。全体的にこれまでの作より今っぽい音になって、これが一番好きな気がする。全パート音が最高で無限に聴ける。まだあんまり聞き込めてないけどDevon Welshも引きつけられるファーストインプレッションがあった。歌にがっつりフォーカスしたストリングスの響きが美しいカントリーミュージック。Pharellのナイスプロデュースが楽しめるとのことで聴いたAriana Grandeも想像を超えていく良さ。音数の絞り具合がちょうどよくて、歌がよく映えるナイスアレンジであった。Justin Vernon(Bon Iver)×Aaron Dessner(The National)という夢としか言いようのないコラボ作品もリリースされたばかり。想像通り最高なのだけど、あまりに想像通りの方向性過ぎることでインパクトのなさからあまり回数聴かなそうな未来も想像できて少し複雑だ。

Analogfish「Still Life」

Perfume「Future Pop」

クラムボン「モメント e.p. 3」

先月邦楽大充実といっておきながら何か忘れている気がしていると思ったらAnalogfishだった。前作「Almost A Rainbow」も「No Rain(No Rainbow)」を始め好評だったけど、サビで無駄に音圧の上がる邦楽ロックアレンジをぎりぎり抜け出せてないきらいがあって、今回完全にそういうのが無くなってるのがポイントだ。なんでもないBPM110の8ビートにこそ宿る魔法ってもんがあるのです。これからも疲れた時はことあるごとに再生するんだろう。Perfumeは祝ストリーミング配信開始ということで、spotifyのリンクを貼っておいた。しかし発売前後は今のPerfumeの現状が上手く見れていない、なかなか見当違いな物言いを沢山見た気がして気が滅入るなどする(何か声の大きい人が言ったことの受け売りで物申した気になってるようなのがやけに多かった気する)。「Future Pop」というタイトルに妙に期待したりして「Perfumeがストリーミング配信しないのは勿体ない云々」みたいなののことですね。今のPerfumeがこの流れでアルバム1枚ぽっと出して「Future Pop」なるものを確立できるわけないし、そもそも、もうこれ以上海外展開なり拡大路線を採る体力もないのが現実だろう。日本でストリーミング配信しようがしまいが変わらんて、「手軽に聴けてハッピー!」なだけだって、と思う。現状維持、次の活動への繋ぎ、国内内向き路線、それだけで、このクオリティーを続けていくだけで素晴らしいことだし、充分ではないか。そんなことを改めて思う作品になったのでしたー。「FUSION」はちょっとためたようなリズムのおかげで黒っぽさが出てきていてとてもかっこいい。「声」の抜き差し、使いどころも絶妙に気持ちいい。クラムボンのニューEPが年間ベストに入ってくるくらい最高に素晴らしい。近年のライブ会場&販売希望店限定「モメント」シリーズでも図抜けクオリティーではなかろうか。ジャジーなピアノロック、室内楽寄りなポストロック、弾き語りフォークスタイルといったこれまでのらしい路線の曲のここにきての瑞々しさはもちろん、音数を絞った超格好いいエレクトロトラックもあって全部載せの5曲1枚だ。こんなに譜割に挑戦的なバンド日本にそうそういないと思うんですが。活動23年、ここにきてこれが日本のポップミュージックの先端を行くバンドとしての狼煙を上げた1枚、になればいいなー。

Moses Sumney「Rank & File」

Sweet Williamと青葉市子「からかひ」

Lisa Hannigan, Aaron Dessner, Enda Walsh「Swan」

ROTH BART BARON「HOMECOMING」

曲はなんといってもMoses Sumneyのシングルでしょう。もう1曲「Call-to-Arms」もこの「Rank & File」もとにかくひたすらにヤバイ。Dirty ProjectorsやRadioheadなんかを彷彿とさせるインディーR&Bとインディーロックの美しき交錯点だ。アフロっぽいものやインダストリアルみたいなものをエッセンスとしたR&B、ソウル作品というのがゴロゴロ出てきていてどれも面白いんだよなー。serpentwithfeetやVicktor Taiwoはもちろん、無意識にそこと共振してしまったのがcero「POLY LIFE MULTI SOUL」、というのはさすがに無理があるか。あとはSweet Williamと青葉市子もよかった。しかし「点描的な譜割」、「アンビエントなトラック」みたいなポイントはクラムボンがずっとやってたでしょうが、とも思う。1曲上げるとしたらアルバム「Musical」収録の「tayu-tau」。このアルバム2007年リリースとか当時のシーンを思うとにわかに信じがたい素晴らしい作品だ。

その他The Nationalのアーロン・デスナーが名義に入ってきているLisa Hanniganの新曲もとてもよかった。彼女2年前のアルバムも確かアーロンプロデュースでとてもよかったんだよなー。ROTH BART BARONの先行曲は去年のThe Nationalのアルバム発売前と被るようなウキウキ感で聴いている。さながら「HEX」は「The System~」だし、「HOMECOMING」は「Day I Die」だ。きっと「Sleep Well Beast」のような大切な1枚になる。

ライブ

8/12 cero presents "Traffic" @新木場STUDIO COAST

8/18 蓮沼執太フルフィル @すみだトリフォニーホール

8/19 SUMMER SONIC'18 @幕張メッセ

8/22 クラムボン @TSUTAYA O-EAST

いっぱい行って全部大当たり、とても素晴らしいライブばかり観た贅沢な月だった。今のceroは何回でも見るべきだ本当に。しかし、新木場スタジオコーストって、僕相性悪いのか全然快適に過ごせないんですが、皆さんどうなんでしょう。後方だと特に見づらい(階段降りれないとかなりの確率で見えない)、スマホの電波相性悪くてほぼ圏外、空調暑い、バーの列の導線が不明瞭、音別によくないし大抵苦手等々、1回も文句なく快適に過ごせたことない気がする。まだZEPPやなんなら豊洲PITの方がマシで、できればマジで行きたくないのです。ずっと楽しみにしていた貴重な蓮沼執太フルフィルのコンサートは2列目の特等席で堪能した。

その翌日はサマソニ東京へ。Knox Fortune→Sen Morimoto→七尾旅人→Rex Orange County→Jorja Smith→Chance the rapper→St. Vincent(途中から)→paramoreを見た。これまでのフェスの1日でも上位に食い込むくらい何見ても全部最高、言うことなしだったけど、すっかりフジロックの魅力に取りつかれてしまった身としては、コンクリートジャングルでのその快適さにむしろ、得も言われぬ物足りなさを感じてしまったのも確かだ。

サマソニから中2日、畳みかけるようにクラムボンのツアー東京公演へ。散々いいライブを見まくって非日常的な感動みたいなのを得にくい状態だと思いきや、8月の思い出を全てさらっていくような素晴らしいライブだった。EPの新曲以外は珍しい曲目も無い至って普通のセットリスト、たくさんあるツアー中盤のただの1公演だったのにも関わらずだ。クラムボンには、いつまでも僕の理想を具現化したようなそのライブをどうか続けていって欲しいと願うのでした。

その他雑記

Sufjan Stevens「The Age of Adz」

Kurt Rosenwinkel「Caipi」

旧譜はSufjan Stevensのカタログが何枚かストリーミングに追加されていたのでそれをよく聴いたりした。スフィアンはなんせこれまで出した曲数がやけに多いので、まだ聴けてないのもけっこうある。「The Age of Adz」がとにかくすごくてびっくりしました。2010年の時点で、フォークミュージックをあらゆる角度から拡張していくような、ここまでのものを完成させてしまってたのだなー。あとはTLにふと流れてきたのが目に留まったジャズギタリストKurt Rosenwinkelの去年の作品もお気に入り。全然知らなかったのだけど、検索してみたりするとけっこう有名そう。歌モノとしての構成を邪魔しないほどよいジャズみがグッドです。リズム隊のミックスのバランスとか「POLY LIFE MULTI SOUL」に近い気がする。ceroのメンバーが去年のベストに挙げていたという情報もチラ見した気がするのですが、ソースはどこなんでしょう。

それから、ついこの前公開されたserpentwithfeetの大オーケストラ編成でのライブ映像がもう尋常じゃなく素晴らしくて何回も見ている。画面を通して見るだけで泣いてしまった。フジロックでのほぼカラオケライブはよかったけど物足りなかったのは、やはり究極ここまで期待していたからで、実際本国ではやってるし、できるんだというのを確認できただけですごく嬉しくなった。たくさんの好例があるレッド・マーキーでの初出演を経てからのステップアップ、待望の帰還というストーリーを彼も辿ってくれることを祈ろう。


おまけ程度に、映画は「レディバード」、「カメラを止めるな!」、「ペンギンハイウェイ」あたりを見れてとてもよかった。「カメラを止めるな!」の見終わった後のスタッフT欲しくなる度、財布のひも緩みまくる度は異常なので、もっとあの場でガッツリ売りにきてくれとすら思う。2回見に行ったのだけど、結局トートバックしかなくて買わずじまい。

テレビ東京「恋のツキ」を毎週見ている。Netflixが制作に絡んできていて徳永えり、渡辺大知出演というと「火花」だし、ラブコメで同じく出演の渡辺大知のキャラ的には「勝手にふるえてろ」だし、ちょっとそのかけ合わせのような雰囲気をもっている。徳永えりはエロいし、渡辺大知はどの作品でも、ちょっと私とは相性悪そうな性格の人間を演じている。序盤で重要な役割を果たしていて画面によく収められるニューバランスの派手め配色のスニーカー。ロングスカートとの相性がとてもよくて見とれてしまう。反面、男がすっきり履くのはまあ難しいということも神尾楓珠君が実演してくれている。


楽しかった夏(フジロック、サマーソニック)も終わり、9月からは研究により打ち込むことで、卒業旅行の資金を貯めたいという計画がある。なぜか最後に何書いたらいいのか、締め方がわからなくなってしまった。来月もよろしくお願いします。




どうぞお気軽にコメント等くださいね。