見出し画像

日本在宅救急医学会の道のり④

2017年設立、日本在宅救急研究会の初期活動 ー第1回日本在宅救急研究会ー

日本在宅救急研究会の活動をお話しさせていただきたいと思います。2017年4月8日に発足しました。学会発足の趣意は、野中博先生の追悼文にありましたが、もう一度、明記させていただきます。

日本在宅救急研究会は、在宅患者が急性増悪したときに生じる問題を在宅医療に関わるスタッフと救急医療に関わるスタッフとが同じテーブルについて検討することで、在宅患者にとって“本当の良き医療”の構築を目的とする。

2017年7月22日、照沼秀也先生を会長として、日本在宅救急研究会の第一回学術集会を東京で行いました。
 この研究会前の第2回世話人会の時に、嬉しいことがありました。第1回世話人会で、在宅医と救急医が、全く話がかみ合わずに、野中博先生のお言葉で、やっと相手を認めながら話すことができたとお話ししました。この第2回世話人会では、在宅医と救急医がそれぞれ入り混じって着席し、みんなが「本当の良き医療」を考えようという一つの目標のもと、積極的な討論をしていただきました。私が、「普段の高齢者の救急医療を行っている救急医としては・・・」と話を始めた時です。救急医療の先輩医師から、「小豆畑先生、高齢者の救急医療を行っているのは救急医だけじゃないよ。在宅医療の先生や、慢性期病院の先生だって、自分のできる範囲のなかで、救急医療を行っている。まずは、先生の、救急医療は救急医みたいな先入観を取り除いて下さい。」とお叱りをいただきました。私は、大いに反省したと同時に、研究会世話人の意識が変わったことを知ったのです。在宅医とか救急医とか、そういう枠を超えていこうという、この研究会が持つ素晴らしさが、すでに、皆さんに浸透していることを知って、叱られたのに、嬉しくてしょうがありませんでした。

そして、第1回学術集会が、東京都の発明会館地下ホールにて、スタートしました。設立からたった3か月の研究会の学術集会に、なんと、全国から200名も集まってくださったのです。会場は、いっぱいでした。皆さんに着席してもらうために、運営スタッフは立ち見の状態でした。この時、私は、この研究会に期待してくださる方々がいかにたくさんいるのかを知り、身が引き締まる思いを持ちました。その中で、圧巻だったのが、照沼秀也先生が司会のお一人として行われた「日本在宅救急研究会が果たす役割はなにか」というテーマで行われた自由討論のセッションです。壇上には数人の医師が上がって討論の核となっていただきましたが、照沼先生は、どんどんフロアーで聴講している人たちにコメントを求めていきます。そうすると、次から次へと手が上がるのです。医学系の学術集会では、あまり見られない光景です。普通は、司会者が指名しなければフロアーから質問がでることはあまりありません。それが、何人もの手が挙がっている。また、それがさまざまな職種の方なのにも驚きでした。医師はもちろんですが、看護師の方、施設の責任者の方、MSWの方、どんどん、発言してくださいました。「私たちはこの研究会にこういうことを考えて欲しい」「こういう問題があることをご存じですか?」「なんで、今まで、こういう会がなかったのですか」という具合に。私たちは、お答えするのに精一杯でした。というよりも、きちんとお答えできなくて、「これから、この研究会で一緒に考えてください」とお願いするばかりでした。熊本県から東京まで来てくださった看護師さんは、こんなことをおっしゃいました。「この研究会に参加して、私たち、地域医療に関わる看護師が何をすべきかがわかった気がしました。こんなに真剣に考えている人たちがいるのに、私はいままで何をしていたんだろうと思いました。この研究会で、たくさん、勉強させてほしいです。今日、本当にここに来て良かったです。」彼女の目には涙があふれていました。照沼先生と一緒に司会をされていた太田祥一先生(私たち救急医の大先輩で、救急医でありながら在宅医療を始めたパイオニアの先生です)がおっしゃいました。「そんなこと言われたら、小豆畑先生が泣いちゃうよ(笑)」と。こんな風にこの自由討論は進み、100分の時間を過ぎても、あまりの熱気に終えることができない状態でした。20分ほど超過して、やっと照沼先生が、この自由討論を終了することができたのです(図)。

スライド2

最後に横田裕行代表世話人のごあいさつで会を終了しました。その時の言葉も覚えています。
「日本の社会が我々医療者に求めるものは、この数年で大きく変化してきているように感じます。私たちは、それに答えられているのでしょうか?それに対応するためには、今までの診療科別の枠組みでは、限界に達しているのではないのか、という懸念もあります。この研究会は始まったばかりです。しかし、今日の学術集会を終えてみて、この研究会がいかに必要とされ、何をすべきかの輪郭がおぼろげながらも見えてまいりました。在宅医とか、救急医とか、または、それぞれの職種や立場の垣根を超えて、この研究会の目標である“本当の良き医療”の確立のために、皆さんとともに進んで行きたいと思います。どうぞ、お力添えをお願いいたします。」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?