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あくまで、いちいち、傷つく。

そんな些細なことでいちいち傷ついてたら、命がいくつあっても足りないよ

命を可算名詞扱いする態度を脇に置いても、この手の言葉にも、私はいちいち傷つく。

大きさの目立つ声と顔のせいか、南方系の屈強に見える体躯のせいか、豪放磊落に見える立ち振る舞いのせいか、みな私のメンタルタフネスを買いかぶる。

しかし与える印象とは裏腹に、私はいたってfragileで、その生湯葉並みのメンタルは、先の丸い箸のひと突きで、あっけなくホロホロと破れる。

高校と大学で2度頭皮にツルツルのミステリーサークルができたり、留学先でパニック発作が起きて感覚としては死にかけたり、心理的負荷がかかるとテキメン身体が悲鳴を上げる私。

「いちいち些細なことで傷つかないこと」が「メンタルタフネス」という「ビジネススキル」として称揚される絶望的な時代を僕らは生きている。

だが私は、あくまで、いちいち、傷つく。

命の話にあえて戻るなら、傷つかないほどに感受性を鈍麻させた命を生きることを私は望んでないし、よせばいいのにいちいち些細なことで傷ついては取り乱し不安定に崩れかける私をあなたを、私は心から愛している。

そして私は、心の痛覚を失うことを恐れている。だから傷を、それに伴う痛みの存在を認める。心許ない私という存在に依存した傷と痛みを確かめる。

傷つかない人が羨ましいけど怖い。いや本当は少しも羨ましくなんてない。

傷つく人が愛しい。面倒で厄介だけど愛しい。

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