手乗りスズメの話

サトシ:9月12日

僕がその光景を目撃したわけではなく、両親から聞いた話なのだけど、実家にイブというオスの猫(クリスマスイブの日に親が家の前で捨てられているのを拾って飼い始めたからそう名づけられた)がいるのだけど、数年前にイブが外の見回りから口に何かを咥えて帰ってきた。玄関にぽいっと捨てられたのはスズメの子供だった。スズメはまだ生きていた。イブは驚く母親に向かって「やってやったぜ」という顔をしていた。やってやったぜ、じゃねえだろうと思った母親はスズメをそっと掌に載せて父親のところに持って行く。「もうだめか」と母は父に言ったが父は「いや、まだ大丈夫だ」と言う。父は昔から色々な動植物を飼った経験があり、僕が小さい頃飼い初めて一年も立たないうちに室内で放しているときにキッチンで熱い蒸気にあててしまって死なせてしまったインコなども看病してくれていた。

父が骨折した翼に添え木を作ったり練り餌を与えたりして、スズメは回復していった。籠に入れて数日保護して、時々室内に放して運動をさせた。イブに見つかるとまた襲われてしまうので外にパトロールに出ている隙を窺ってスズメを放し、玄関をあけろというイブの鳴き声が聞こえたら慌てて籠に戻してイブを中に入れた。普段はイブが入れない部屋に隠して。

両親が伊勢に車で旅行に行った際スズメは籠に入れて運ばれ、伊勢神宮では籠から出して一緒にお参りしたという。籠から出しても逃げずに肩やら腕やらに止まっているスズメをみた清掃員のおばちゃんが

「まあ!手乗りスズメなんて珍しいですね!」

と驚いていた。

その後スズメはしばらくイブの目に入らないように家で飼われ、「あまり長く飼ってしまうと野生で生きられなくなってしまうから」ということで数週間で外に放された。無事に生きているといいのだけど。

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